なぜ雑多なことが気になるのか?禅思考に学ぶ「自分の振り返り方」とは
「あの人の性格ってどーなんだろ…?」
人と会話していると相手の価値観や考え方が気になる時があります。相手は変えられませんし、そんなことを考えても仕方がありません。ですが、いろいろ考えてしまう。そんなことをしていると気疲れして、一日を終わるころにはへとへとになっていたり。
なるべくなら人に振り回されずに、どしっと自分の土台を持って生きて行きたいものです。人に振り回されずに生きるコツについて考えてみます。
禅思考という考え方
先日、良書に出会いました。「傷つきやすい人のための 図太くなれる禅思考」。「禅」って日本人なら知っていたい所ですが、いまいちわからない世界ではないでしょうか。ちょっととっつきにくいこの禅の考え方を、人間関係の中でうまく活かす工夫を教えてくれるのがこの本です。
禅僧である著者の枡野さんは冒頭で「禅僧はみな図太い」と語ります。細かいことを心配し神経をすり減らすのではなく、たくましい心、やわらかい心、しなやかな心、おおらかな心を持つことで「図太さ」は得られます。図太いとは生きていく上でココロを強く持っていられることだと説きます。
人間関係に悩んだり、些細なことで不安になったり、人の意見を優先しがちな人は必見の一冊です。とても分かりやすい語り口で心にスッと入って来るのでおすすめです。
「七走一坐」
この禅思考の中に「七走一坐」という言葉が出てきます。この意味は「七回走ったら一回は止まって座り、自分自身を見つめなさい」ということ。
仕事でよく「PDCAを回す」という言葉を耳にします。PLAN→DO→CHECK→ACTION→PLAN・・・
この一連の流れの事です。ここで大切なのが「CHECK」です。やりっぱなしで終わっている仕事、多くないでしょうか。私も自分の仕事を振り返ると反省しきりです。実はこの「CHECK」という振り返りこそが、経験を知恵に変えるプロセスです。
計画したことと、実際にやってみたことには少なからずギャップが生まれます。そのギャップはある意味「想定外」のこと。それを、「ここが想定外だった」と自覚することで、その先の行動では「想定内」になっていく。そうして想定内のことを増やしていくことが「経験を積む」ということだと思います。
さらに、この振り返りは「軌道修正」の機会にもなります。生産性を上げるには目の前のことに集中するのが理想ですが、そればかり繰り返していると、視野が狭く、目標とは違う方向に走りかねません。だからこそ、時に立ち止まり、目標の旗印と自分の現在地を確認しながら「軌道修正」することが目標達成には必要です。
そのためにはどんなギャップがあったのか、目標とのズレが無いか、という振り返りが必要です。しかし、我々は目まぐるしく変わる日々の中でこの「振り返り」をおろそかにしがちです。「経験値」として貯まるはずのものを見逃している、非常にもったいないことだと言えます。
そういう意味でも、「七走一坐」の心で、動いた後は止まる、という習慣を身に着けることで、自分をアップデートしていくことができるのだと思います。
考えるためには止まるしかない
マラソンやトライアスロンなど持久系のスポーツをされている方はよくわかると思いますが、例えば走りながら複雑なことを考えることは非常に困難です。人間の脳はそこまでよくできていません。
「振り返る」「自分を見つめなおす」という行動は、走りながらできるものではないということ。止まらなければできません。
そう考えると、自分を見つめなおすための必須条件は「一人の静かな時間を持つこと」です。「一人だけの時間」、案外持ててないのではないでしょうか。仕事、プライベート共にやることがあふれている人にとっては、誰からも束縛されない時間は意識しなければ確保できません。
鍵を握るのは時間の管理です。「一坐」する時間を週のどこかに確保する。できれば「〇曜日の〇時~〇時」という固定の時間をセットするのが良いです。習慣にすれば、わざわざ「時間を確保しなければ」というストレスもありません。
私は土曜の午前中をその時間に当てています。その1週間を振り返ります。ウィークデーの月から金を振り返り、学びと反省と感謝を一通りまとめ、区切りをつけてから週末のリフレッシュタイムを持つようにしています。そうすることで、次の月曜日からの仕事を軽いフットワークで臨めているように思います。
まとめ
「七走一坐」は仕事もプライベートも、日々忙しく過ごしている人にとっては心に留めておきたい言葉です。「一坐」のない「七走」は、時に結果をもたらすかもしれませんが、そこに成長は少なく、効率の低下と疲弊、遅れなどのリスクがはらんでいます。
人生を長い目でとらえると、立ち止まる価値は大きいです。自分を振り返る時間、考えを再確認する時間、次の行動を考える時間、未来を見据える時間、こうした自分と対話する時間を確保することが、人生の豊かさを高めることにつながるのではないでしょうか。
そうして自分を見つめる習慣を持つことで、些細な人間関係の悩みからも解放され、図太く自分が信じる道を歩んでいけるのだと思います。
「一度」「止まる」と書いて「正」。
「一坐」して、自分の人生を豊かなものにしていきたいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。