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エッセイ

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主に昔語りと創作。 つまらなそうだ? そうでもないぜ。
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2024年12月の記事一覧

年の瀬雑感の2

年の瀬雑感の2

大晦日に今年を振り返る記事を書こうなどと意気込んで、600字くらい書いてみたのだが、どうにも愚痴っぽくなっていけない。
一旦全部消して書き直すことにした。

言いたいことは、だいぶ世の中は不穏で、何年も前から誰の目にも予兆はあったのだけれども、わたしの中では、今年決定的にデットゾーンを超えてしまったというのがひとつ。
なので、多分これからしばらく良いことは起こらなくて、下手すると私の世代の「弱者」

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年の瀬雑感

年の瀬雑感

思いついて、手帳を新しくすることにした。
といっても昔からずっと使っている銘柄があって、それを4月始まりから、1月始まりにしようというのだ。

4月始まりを使っていたのは、長らく学校を中心に生活していたからで、これはもう学生時代から、就職して高校教員、退職後多少のブランクを経て専門学校講師、と続いた私のキャリア上仕方がないことだ。
私にとって新しい年というのは新年度のことだったのである。

しかし

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完走ドラマの感想など。

完走ドラマの感想など。

今期はあまりドラマを見なかったのだが、「海に眠るダイヤモンド」は大変良かった。
まずは往年の端島の再現が素晴らしく、映像に緩みがない。
セットと合成映像なのだろうが、全く不自然さを感じなかったのは特筆すべきだと思う。
さらに、謎解きのストーリーもなかなかよく作られていて、毎回適度な発見とどんでん返しで飽きさせなかった。
もちろん最後に話をまとめる段で、だいぶ都合の良い設定も出て来たし、朝子は玲央た

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結局悪口

結局悪口

年賀状は還暦の年にやめた、2年前だ。

やめるにあたっては特に案内など出さないで、いただいた賀状に対して寒中見舞いを返し、その中に年賀状仕舞いをした経緯を書くことにした。
枚数はちゃんと数えていないが、2年で1/10くらいの量になっただろうか。
元々が大量のハガキを出していたわけではないが、それでも年末の大仕事が一つ減ったわけだ。

もともと粗忽な性格だから、喪中の案内をもらったところに能天気な賀

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聖夜

聖夜

幼稚園はミッション系だった。
ある時、先生がひまわり組の子達を集めて、手を繋がせて輪にした。

先生は厳かに言った。
「これでみんなの中の神様が一つになりました」

幼いタグチは問うた。
「先生! 神様はたくさんいるの?」

先生は動じなかった。
「いいえ、神様は1人です」

そう、キリスト教は一神教である。

幼いタグチは考えた。
きっと神様がみんなの中に少しずついるのだと。
僕の中には神様の小

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思わぬ感情爆発で2119文字

思わぬ感情爆発で2119文字

大学の時、学生劇団の先輩が、当時いわゆる「カルチャー」路線で勢いのあった某流通系企業に就活を仕掛けていて、その一環で件の会社のカードを作ってくれと頼まれた。

なんでも最初に企業訪問する時に、これこれの数の新規顧客を集めてきました、みたいなところから会話が始まるらしくて、その人数が以後の選考でものをいうらしいのだ。

世間知らずであった自分は、へぇそんなものかとも思ったが、今考えると随分あこぎな話

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父親がサンタクロース

父親がサンタクロース

子供がいない夫婦なので、毎年この時期に軽くモヤモヤすることがある。

つまり「サンタさんいくつまで信じるのか」問題だ。
あるいは「信じさせるのか」問題と言ってもよい。

1962年生まれのわたしは、自分の子供の頃を思い出してみても、サンタクロースの実在を信じている子供などどこにもいなかった。

理由は明快で、そもそも、60年代のクリスマスは、お父さんたちが変な三角帽子をかぶってキャバレー(キャバク

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モチーフ

モチーフ

二つやっている教室の片方が、年内の予定を終了、「良いお年を」という挨拶を今年初めて発声する。
うむ、今年もいよいよ押し迫ってきた。

生徒さんの作品も今日は締めくくりにふさわしく、どなたもレベル高く仕上げていただけた。
わたしの教えることがなくなってしまうので、あまり上手になられるのも良し悪しであるが、贅沢な悩みというものだろう。

さてここは水彩画教室で、毎回果物だとか花だとか、ちょっとしたモチ

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はいポーズ

はいポーズ

結婚以来、年に一度、連れ合いと、わりとちゃんとした記念撮影をしている。

当初は結婚記念日ということで、10月に撮っていた。
始めの何年かは日付にまでこだわっていた様に思う。

その後、新鮮味というか、意気込みみたいなものが薄れてくると、わたしに何かの都合があるとか、連れ合いが美容院に行ってからにしたいとか、たいてい記念日には間に合わず後回しになることも多くなった。

それで11月に入ると、今度は

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初日

初日

母親が亡くなるまでうちは二世帯住宅であった。
今でも建物はそのままだが、住んでいるのはわたしと連れ合いだけである。

二世帯住宅にもいろいろあるが、うちは入り口もトイレも台所も二つあるタイプだ。
もちろん光熱費も別々のメーターがあり、ポストも別々なら、表札も二枚。
どちらかから他方への金銭的な援助関係もなかった。

建築時に補助金が出るというので、一応一箇所だけ内扉で繋げてあったのだが、これも鍵を

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まあまあ楽しかった話

まあまあ楽しかった話

今日は、まあまあ楽しかった話と、そこそこやらかした話があるのだが、どっちを書こうかとしばし思案。
でもまぁやらかした話はどこまでいっても救いがないので、楽しかった話を書こうと思う。

本日は知り合いからご紹介いただいて、某市の子供美術展の協賛行事として、小学生低学年くらいに向けたワークショップをやらせていただいた。
展覧会を見に来た子供に参加してもらおうという企画だから、誰でもウェルカム、入場無料

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痛い話

痛い話

人類にとって一番の痛みは、出産に伴うものなのだそうだが、残念ながら、と言うか別に残念でもないが、男性のわたしに経験することは叶わない。

ならば男性に限定すると何かと言えば、尿管結石の痛みだという。
これならわたしも経験がある。

30になってすぐの頃だったが、夜中に猛烈な腹痛に襲われて、顔面蒼白、冷や汗が出てくるような状態に陥ったのだ。
わりと痛みには強いと言う自負があったわたしだが、この時ばか

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戒厳令前夜

戒厳令前夜

隣国のゴタゴタを見るにつけ、マズい人間に権力を持たせちゃいかんなぁと思うわけだけれど、権力を目指す人間が(要するに政治家がだが)、マズい人間かどうか見極めるのはなかなか難しい。

相手を知るには「直に会うこと」が一番だと思いがちだが、これもじっくり時間をかけて、あるいは一緒に仕事をして、という前提があっての話で、実際には、この手の人に会うこと自体が難しい。
それどころか、たとえ対面する機会を得たと

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