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サクラサク。

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吾輩は猫である。名前は朔(さく)。ご主人様がいる家の帰り道を忘れて、ニンゲン・サクラと出会う。ニンゲンとネコは、生きるスピードが違うのだ。それでも、神様に飼われるその日まで、相手…
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サクラサク。ep14

サクラサク。ep14

『銀河鉄道の夜』みたいだ。
--黒猫である吾輩・朔(さく)は、生まれて初めて乗る電車を見てそう思った。何しろ、人生(ネコだから猫生だろうか?)の大半を、ご主人様の家で過ごしてきたのだ。
ご主人様が語ってくれる電車なんて乗り物は、小説の中でしか存在しない空想上のものだと思っていた。
それなのに、吾輩は人間•サクラと電車に揺られている。ご主人様の知らないところで。

「電車の中に入ったら、大人しくして

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サクラサク。ep13

サクラサク。ep13

「クロ、起きてる?出かけよう」

吾輩は猫である。そんな毎度お決まりの挨拶をする暇もなく、サクラは空が明るくなる前に、吾輩をカバンの中に押し込んだ。

思い返せば、サクラは昨晩から様子が不自然だった。
「ただいま」
いつものように玄関まで迎えに行ったが、サクラはしゃがみ込んでしばらく動かなかった。
顔を隠して、何も言葉を発しない。
お腹でも痛いのだろうか。ミャーと鳴いて声をかけてみる。サクラはやっ

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サクラサク。ep12

サクラサク。ep12

吾輩は猫である。名前は朔(さく)。ご主人様と離れて人間・サクラと暮らし始めた。なお、サクラと一緒にいる間はクロと呼ばれている。

お互いが、お互いのいる生活に慣れ始めた。
「ただいま、クロ」
玄関まで迎えに行くと、靴をきれいに揃えるサクラが、吾輩の頭に触れる。吾輩は甘んじて受け止める。

一緒に暮らし始めた当初、サクラは慌てたように帰って来ていた。吾輩のことが心配だったらしい。サクラは今まで猫を飼

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サクラサク。ep11

サクラサク。ep11

吾輩は猫である。名前は朔(さく)。ご主人様が行方不明の今は、サクラというニンゲンにクロと呼ばれている。

「クロ、ごはんだよ!」

朝、サクラの凛とした声が響く。
ご主人様は朝、ぼんやりとしていたことが多かったけれど、サクラはとても元気だ。

美味しそうなスープとパンの焼ける匂いがする。吾輩はカリカリで充分だが、パンにジャムを塗るサクラは幸せそうだ。

“お前は可愛いから、いつか飼ってくれるヤツが

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サクラサク。ep10

サクラサク。ep10

吾輩は猫である。名前は朔(さく)。ご主人様を見失った矢先、ニンゲン・サクラと再会した。
そして、サクラの部屋にいる。

「ほら、クロ。まずは足を綺麗にしようね」

さっき「朔」って呼ばれた気がした。
だけど、サクラは相変わらず「クロ」と呼んでいる。
あれは空耳だったのだろうか。
吾輩がそう呼んでほしくて、聴こえてしまったのだろうか。

サクラの部屋は、花の良い匂いがした。
ご主人様と部屋のサイズは

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サクラサク。ep9

サクラサク。ep9

吾輩は猫である。名前は朔(さく)、のはずだった。ご主人様がくれたと思っていた名前も、呼んでくれる者がいなければ、何の価値もない。

この家は本当にご主人様と吾輩の家だったのだろうか。 

もうあきらめよう。
いくら待っても、ご主人様とは会えないのだ。

ご主人様に捨てられたなんて認めない。

ご主人様と吾輩は、この家に見捨てられたのだ。そして、知らないオジサンの家になった。

だから、ご主人様はこ

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サクラサク。ep8

サクラサク。ep8

「人間とネコではね。生きるスピードが違うんだ」
また始まった。ご主人様の独り言タイム。
可哀想なので、吾輩が話し相手になってあげることにした。

「猫は、人間なんかよりずっと賢くて良いヤツだ」
そんなの、当たり前だろう。
吾輩は胡乱な目で、酒の匂いがする缶を持つご主人様を見つめる。
「だから、神様は人間よりも先に猫を連れて行ってしまう。神様は良い子が好きだからね」

カミサマの話、好きだな。また言

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サクラサク。ep6

サクラサク。ep6

吾輩は猫である。名前は朔(さく)。ニンゲン・サクラを捜しに、ご主人様の元へ帰る前に寄り道することを決めた。

しかし、困った。吾輩はただ小川のほとりで待っているだけで、サクラに会えていたのだから、全く手がかりがない。

そういえばこの前、“病院"とか言っていたような。
この近くに病院があるのだろうか。

吾輩は、グルグルと歩いた。
知らない路地や、車道や、庭を歩いた。

何時間も、何日も歩いた。

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サクラサク。ep5

サクラサク。ep5

吾輩、黒猫・朔(さく)にはたくさんの兄弟がいた。
「なぁ、頼むよ。一匹もらってくれないか」
生まれたばかりで、目がまだぼんやりとしか見えていないころ、二人の男の声が聴こえた気がする(定かではない)。

「え、でも俺は独り身だし、動物を育てたことはないよ」
「でも、可愛いだろう?うちはもう手一杯なんだ。頼む。どの子でも良いから」
こうして、吾輩はご主人様に選ばれた。

「いいかい。お前は“預かる”だ

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サクラサク。ep4

サクラサク。ep4

吾輩は猫である。名前は朔(さく)。好き勝手にクロと呼ぶニンゲン・サクラをこの小川で待っている。ご主人様の家への帰り道は、未だ思い出せない。
ある日、サクラはいつもよりたくさんのカリカリを袋ごと渡してきた。
何事かと、吾輩は訝しそうな目つきでサクラを見る。

「しばらく、病院へ行くのはお休みするね」

ビョウインって、あれだろう。
知らないニンゲンに尖った針で、刺されるところだろう。
ご主人様もよく

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サクラサク。ep3

サクラサク。ep3

吾輩は猫である。名前は朔(さく)。それなのに最近、サクラというニンゲンに「クロ」という不本意な名前を付けられた。吾輩、未だ納得していない。

しかし、このニンゲン、知恵をつけて誘惑してくるようになった。
「ほら、クロ。ごはんだよ」
カリカリだ。ご主人様がよくくれた味。

ネコはネズミを食べるなんて聞くが、吾輩は生まれたときから家ネコだ。
動物を狩る勇気は持ち合わせていない。
ネコジャラシには目がな

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サクラサク。ep2

サクラサク。ep2

吾輩は猫である。名前は朔(サク)。先日、小川のほとりで、サクラに出会った。桃色の雪の正体を教えてくれたニンゲンだ。
桜と同じ色を着ていたから、彼女をサクラと命名した。吾輩、ニンゲンに名を与えるとは、偉い猫である。

桜が舞う季節は終わってしまったようだが、彼女は相変わらず、桜と同じ色を着ていた。

「こんにちは、クロ」
サクラは吾輩をクロと呼ぶようになった。吾輩、誠に遺憾である。
ご主人様がくれた

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サクラサク。ep1

サクラサク。ep1

吾輩は猫である。名前は朔(さく)。漆黒の艶やかな毛並みが、月の出ない夜を思わせると、ご主人様に名付けてもらった。
しかし吾輩、ご主人様の家への帰り道を忘れてしまった。質の良いネコジャラシを探すのに夢中だったのだ。かれこれ一ヶ月になる。

何とか記憶を辿って帰ろうとは試みるも、頭上からヒラヒラと桃色の雪みたいな何かが降ってくる。吾輩、すぐに我を忘れて、追いかけたくなる衝動に駆られる。追いかけても、追

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