サクラサク。ep6
吾輩は猫である。名前は朔(さく)。ニンゲン・サクラを捜しに、ご主人様の元へ帰る前に寄り道することを決めた。
しかし、困った。吾輩はただ小川のほとりで待っているだけで、サクラに会えていたのだから、全く手がかりがない。
そういえばこの前、“病院"とか言っていたような。
この近くに病院があるのだろうか。
吾輩は、グルグルと歩いた。
知らない路地や、車道や、庭を歩いた。
何時間も、何日も歩いた。
そして、見知った街並みが戻ってきた。
もしかして、もしかして。
吾輩は走った。ロメスかメゴスか、よく分からないニンゲンの男なみに。
知っている!この青いマーク!ヒョウシキというやつだ。
知っている!赤い四角の箱。この箱に手紙を入れると、想い人に気持ちが届くのだとか。
知っている!そして、この角を曲がれば。
そこは、吾輩がずっと帰りたかったご主人様のいる家だった。
サクラを捜しに出たはずなのに、元いた場所にたどり着いた。
何も変わらないはずなのに、全く違う景色に見えた。
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