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検算の具体的なやり方──ポイントは「逆の計算」
こんにちは、Uraと申します。
予備校講師やプロ家庭教師として、小中高生を第一志望合格に導くべく活動している者です。
先日、ケアレスミスの減らし方についての記事を公開しました。こちらの記事では全科目に通ずる方法として見直しの重要性をお伝えし、そして試験中の限られた時間内でどう見直すかについて綴りました。
本記事では、ケアレスミスにあたるもののうち、算数や数学における「計算ミス」に焦点を当て、より細かい見直しの仕方──すなわち「検算」のやり方について具体的にお伝えしていきます。
「検算しろ」と言われたことはあるけど、検算ってどうやればいいのかわからない…という方、ぜひお読みください。
記事が進むごとに内容が算数、中学数学、高校数学となっていきます。ご自身の学年に合わせてお読みください。
■眺めるのではなく解き直す
例えば、「途中まで5だったのに突然6になっている」といったように視覚的に確認できるわかりやすいミスであれば計算式を眺め直すだけで発見できることもありますが、細かいミスはそれではなかなか気づけません。
したがって、検算のまずは基本的な考え方として、「眺める」のではなく「解き直す」のをおすすめします。
計算スペースが狭すぎて解き直すのが物理的に難しい試験もありますけどね…
■検算はできる限り最初と別の方法で
検算する際、1回目と同じやり方で検算すると同じ間違いをする可能性が高いです。
例えば、
$${35+11=44}$$
という箇所を検算するとして、もう一度$${35+11}$$を計算しても再び$${44}$$になってしまう可能性があります(もちろん正しくは$${46}$$です)。
計算ミスって癖になっていることがあるのですよね。例えば、「髪を触る」といった癖って自分ではなかなか気がつけないし、無意識に繰り返してしまうじゃないですか。
計算ミスもそれと同じようなことになっている可能性、つまり$${35+11=44}$$と思い込んでしまっている場合があります。
したがって、検算の際は最初とは別のやり方で計算するのがベストです。$${35+11=44}$$を検算するのであれば、$${35+11}$$をもう一度計算するのではなく、$${44-11}$$を計算して$${35}$$に戻れるかどうかを確かめるのです。
$${44-11=33}$$ですから、計算ミスをしていることに気がつけます。
言ってしまえば、検算の一つのアイディアは「逆の関係になっている計算を利用する」ということです。上の例では足し算と引き算が逆の関係になっていることを利用しました。
このような形の検算をまとめていきます。
■逆の関係になっている計算
(1)足し算↔️引き算
$${1038+612=1651}$$
検算→$${1651-612=1039}$$であり$${1038}$$に戻れないので間違っている!
$${583-12=570}$$
検算→$${570+12=582}$$であり$${583}$$に戻れないので間違っている!
(2)掛け算↔️割り算
$${16×21=326}$$
検算→$${326÷21}$$が割り切れず16に戻れないので間違っている!
$${705÷3=225}$$
検算→$${3×225=675}$$でありに705に戻れないので間違っている!
(3)因数分解↔️展開
$${x^2-5x-6=(x-2)(x-3)}$$
検算→$${(x-2)(x-3)}$$を展開すると$${x^2-5x+6}$$となり左辺に戻れないので間違っている!
$${(x+5)(x-7)=x^2-2x+35}$$
検算→$${x^2-2x+35}$$を因数分解しようとしてもできないので間違っている!
なお、因数分解の検算として展開を利用するのは徹底すべきですが、展開の検算として因数分解を利用するのはイマイチなときがあります。展開はほぼ常に簡単なのに対し、因数分解は時に難しいからです。
したがって、複雑な展開の検算は展開をもう一度──ただし計算の順番などは変えながら──行うのがよいです。
ここからこのことに関して説明していきますが、細かい話が苦手な方は次の【(4)平方完成↔️展開】にお進みください。
例えば、
$${(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)=a^3+b^3+c^3-3abc}$$
という展開を因数分解で検算しようとすると単純に大変です。
さらに、展開が合っていればまだいいですが、次のように展開が間違っていてそもそも因数分解ができなくなっていることもありえます。
$${(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)=a^3+b^3+c^3-2abc}$$
試験中にこのような展開計算を検算で確認するという場面を想像してみてください。因数分解で検算しようとしますが、うまく進みません。あなた様は何を考えますか?
この際、「因数分解が不可能な形になっているので展開計算が間違っている」と考えることもできますが、「理論的には因数分解ができる形であるが今自分にできていないだけで展開計算は合っている」という可能性も十分にあります。
今は「展開が間違っている」とわかっているので前者だと判断できますが、試験中は「展開が合っているか間違っているかわからない」のですから後者の可能性を捨て切れません。
要するに、「因数分解がうまく進まない」という事実からは、展開計算が正しいのか誤っているのかを判断することができません。あくまで検算なのですから、余計な迷いを生みかねないやり方を採用すべきではありません。
$${(x+5)(x-7)=x^2-2x+35}$$のように2次式程度であれば、因数分解を考えて検算しても問題ないでしょうが、結論として、複雑な式の展開の検算は展開をもう一度やってしまった方が早いです。
ただし、前述の通り、最初と全く同じやり方で検算すると同じ間違いをする可能性があります。したがって、()の中の式の順番を入れ替えるなど、最初とは少しでも違うやり方で検算してみてください。
例えば、$${(x^3+3x^2-2x+1)(x^2+5x-2)}$$の展開を検算するのであれば、
$${(1-2x+3x^2+x^3)(-2+5x+x^2)}$$などとしてもう一度展開するということです。
(4)平方完成↔️展開
$${2x^2-4x+9=2(x-2)^2+1}$$
検算→$${2(x-2)^2+1}$$を展開すると$${2x^2-8x+9}$$となり左辺に戻れないので間違っている!
$${3(x-1)^2+4=3x^2-6x+1}$$
検算→$${3x^2-6x+1}$$を平方完成すると$${3(x-1)^2-2}$$となり左辺に戻れないので間違っている!
平方完成は因数分解と違い「できない」ということがないので、展開の検算としていつでも使えます(平方完成された形を展開するって場面は正直少ないですけども)
(5)積分↔️微分
$${\int{\sin{x}\,dx}=\cos{x}+C}$$
検算→$${\cos{x}}$$を微分すると$${-\sin{x}}$$となり左辺に戻れないので間違っている!
$${(2x^3+x^2+x)'=4x^2+2x+1}$$
検算→$${4x^2+2x+1}$$を積分すると$${\frac{4}{3}x^3+x^2+x}$$となり左辺に戻れないので間違っている!(検算のための積分では積分定数を考える必要はないです)
積分問題を微分して検算するのは徹底したいです。この検算をしない高校生は少なくないように思いますが、自分の計算能力にはいい意味でネガティヴになっておくのが吉です。
一方、微分問題を積分して検算するのは避けたほうがよいことが多いです。上の例のように平易な微分ならいいですが、一般的に、微分計算は簡単なのに対して積分計算は難しいからです。
したがって、複雑な微分計算の検算は微分をもう一度──ただし計算の順番などは変えながら──行うのがよいです。
ここからこのことに関して説明していきます。細かい話が苦手な方は次の【■まとめ】にお進みください。
例えば、次の微分計算を積分で検算することを考えてみてください。
$${\left(\frac{x}{x^2+1}\right)'=\frac{-x^2+1}{(x^2+1)^2}}$$
検算というよりもはや「積分問題を1題解く」ことになり、日々の学習ではよい訓練になるかもしれませんが、時間に追われている試験中にこの方法で検算するのは実践的ではありません。
また、微分した結果が間違っていた際、「そもそも積分ができない」という可能性があります。高校数学の知識を用いて「微分ができない」ことはあまりないですが、「積分ができない」ことはいくらでも起こるからです。
例えば、$${xe^x}$$の導関数を求める問題で、
$${(xe^x)'=e^{x^2}}$$
という計算結果になってしまったとします。この検算として積分を使う、すなわち$${e^{x^2}}$$を積分して$${xe^x}$$に戻れるかどうかを確認しようとすると、手が止まります。
$${e^{x^2}}$$は高校数学の範囲では積分できないのことです。
微分の検算として積分を使おうとすると、展開の検算として因数分解を使おうとする場合と同じ問題が起こります。
すなわち、「理論的には積分ができる形であるが今自分にできていないだけで微分計算は合っている」のか「積分が不可能な形になっているので微分計算が間違っている」のかわからないということです。
繰り返しますがあくまで検算ですから、悩むようなやり方は不適当です。したがって、微分計算の検算はもう一度微分計算をするのがよいですね。ただし、計算の順番を変えるなど、最初とは少しでも違う計算過程にしておきましょう。
■まとめ
検算は、眺めるのではなく解き直す
解き直す際、最初と同じやり方だと同じ間違いをする可能性があるので、少しでも別のやり方で計算し直す
逆の関係になっている計算を積極的に利用する
・足し算↔️引き算
・掛け算↔️割り算
・因数分解↔️展開
・平方完成↔️展開
・積分↔️微分
ただし、因数分解と積分を検算として採用すると却ってややこしくなる場合があるので、展開と微分については素直にもう一度解き直すのがよい
以上、検算の具体的な方法についてご紹介してきました。
何年も前の話ですが、家庭教師として指導していた生徒に「計算ミスが多いから検算を習慣にした方がいい」と伝えたとき、「それは他の先生にも言われたことがあるけど検算の仕方がよくわからない」と返されたことがあります。
単に「検算しろ」と言うだけで済ませるのは講師として怠慢であると痛感させられた瞬間でした。それ以降、指導の際には具体例を添えることを徹底するようになりました。
私は講師として、生徒の合格のためには問題の解き方を教えるだけでは不十分だと思っており、授業では点数を上げるための実践的な内容も伝えています。本記事でご紹介した検算などはその一例です。
私の指導にご興味がある方、下の記事からぜひご連絡ください。オンラインの体験授業でしたら完全無料です。
検算を徹底することで計算ミスを無くし、第一志望合格の可能性を上げていきましょう!それでは!
Ura