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じっくり練習できる時に何をするか
先日のレッスンの時、生徒さんから「いつもより練習時間を長く取れる場合、どのような練習をしたら良いか」という質問をいただきましたので少しまとめてみます。
目標を持った計画的な時間配分を
長時間の練習でなくても、あらかじめ「何時間練習できるのか」を把握した上で、「何をするのか(目的)」を持ち、「どうなりたいか(目標)」を持つことが大切です。
ですので、練習時間前に計画を立てることが必要で、もし長時間練習ができるのであればそれだけ内容も多岐に渡るため、書き出しておくのが良いかもしれません。
では、長時間練習できる時のオススメの練習方法をご紹介します。
フィードバックのある緊張感を持った練習
たっぷり練習時間があるからと言って、曲を何度も通したり、無計画にあれこれ手を出してしまうのは体力的にも時間的にも大変もったいないです。大切なのは目標を達成するための計画性と体力的なバテを誘発しないようにし続けることで、そのためには1回吹いたらフィードバック(振り返る時間、次の目標を設定する時間)を必ず用意することでが大切です。
例えば何かの曲を練習しているとして、最初の8小節間をまず課題にしてみます。多くの場合、とりあえず吹き始めてしまうのですがそうではなく、まず頭の中で完成形をできるだけ具体的に描きます。音色や音程感、テンポ、リズム、タンギングやスラーなどのアーティキュレーション、アゴーギクなどを含めた全体的な雰囲気、本番で自分がバッチリ演奏しているイメージなど、聴く人に対して自分の演奏がどのように伝わるか、伝えたいかを全部含めた音楽的な完成形をしっかりと頭と心の中に植え付けます。
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その上で、本番だと思って『1回だけ』演奏します。その際、仮に上手くいかなかったとしても必ず定めた部分を最後まで演奏します。本番なので絶対に止めることはできません。
練習で何かあるとすぐ止めてしまうクセがついている方がとても多いです。精神的な側面から言えば、これはミスを成功で塗りつぶすような「なかったことにする行為」。練習をすると「なぜ失敗したのか」も「なぜ成功したのか」も理由が不明瞭になってしまい、本番につながる練習になりません。ミスをなかったことにしたい気持ちはよくわかりますが、ミスにも必ず理由がありますから、どんな演奏をしたのかをできるだけ詳細に思い出し、その理由を考えてみてください。セッティングは落ち着いて正しくできていたか、呼吸の使い方が正しかったか、ソルフェージュはできていたか、集中力はあったか、完成形を頭や心に描いていたか、など。
ミスするたびにやり直す練習は「根性練習」と僕は呼んでいます。時間も体力も精神力も消耗する非効率的な練習なので注意しましょう。
トランペット以外の練習を挟む
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完璧な演奏を目指すためにはトランペットから音を出す時間だけでなく、もっと広範囲で多角的な練習を心がけてください。
例えば、音程が取れない理由には当然「音程感」のクオリティが関係しますが、その音程感を養うための練習として、ピアノを弾いて声に出して歌う練習も効果的です。また、そもそも調性感を持っているでしょうか。演奏しているのが何調なのか理解しているかそうでないかで演奏クオリティはかなり変わります。そうなってくると調や音階の知識が必要になったり、それをピアノで弾けることも必要になるわけで、もし練習時間がたっぷり取れるのであればトランペットを吹くだけでなく楽典的な勉強やピアノや歌を織り交ぜてみることをおすすめします。
例えば、(一旦楽曲から離れて)何かひとつの調を理解し、音階を楽譜に書き出し、ピアノで弾き、それを声に出して歌い、その後トランペットで同じ音階を演奏してみる(in Bの楽譜に書き換えられるかin C(実音譜)を読み替えられる知識と技術が必要)。時間がある時だからできる練習のひとつだと思います。
他にもいろいろな演奏者(トランペット奏者以外も積極的に!)の音源や動画を見て(ぜひ世界的ソリストやオーケストラプレーヤーの演奏を聴いてください)、音楽表現や音色などを感じてください。そういった刺激も自分の演奏に影響します。
ウォームアップは怠らない
練習時間のあるなし関係なく、必ず最初に丁寧なウォームアップは行うようにしましょう。ウォームアップというのは、自分の体がいつも通り使えているか確認する作業であり、もしいつもと違う調子の悪い部分があった場合、それはどこでなぜか、どのようにすればいつも通りになるのかを知識(原理)と実践で整えていく作業です。
ウォームアップが中途半端な状態で練習を始めてしまうのは、靴紐を結ばない状態で陸上競技のトレーニングを始めるのと同じです。絶対に怠らないようにしてください。
ということは、ウォームアップとは何をどのようにすることなのかを理解している必要がありますね。
さていかがでしょうか。練習時間が長い場合のお話を書いたつもりでしたが、練習時間の長さ関係なく練習時間の効率的な使い方についての解説になってしまいました。結局のところ練習は効率的であるべきで、そのためにどのようにすれば良いかを考えなければならないわけです。ご興味がありましたらぜひ実践で方法を理解してください。
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荻原明(おぎわらあきら)
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