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2020年10月の記事一覧
千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ (17)
よく寝てた。
夜ごはんを探してさまよって、代々木のあたり、奈津美は本当に手ぎわよくホテルを見つけて、入って、いつのまにか部屋までわたしをつれてきた。ラブホテルだった。シャワーをあびて、奈津美は寝た。細い手足をいっぱいにのばして、ベッドをひとりじめした。
鬼のパンツは いいパンツ
つよいぞ つよいぞ
トラの毛皮で できている
奈津美のパンツは、黒かった。むらさきがかった、レ
千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ (16)
「死んだほうがいいのかな」
ちがうな。
小学六年生がそんなこと言うか。
夏が過ぎ 風あざみ
の、カゼアザミを探しにきた。なかった。オニアザミはあった。
キク科アザミ属の多年草。茎の高さは一メートル程度であり、葉は深く裂け、縁にあるとげはするどい。花期は六〜九月で、下むきに数個の花をつける。頭状花序は筒状花のみで構成されており、花の色はむらさき色である。総苞はねばる。花期にも根
千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ (15)
ひまわり畑、本当にうなだれた人たち、卒業式の練習で、みんな、退屈してるみたい。きつい角度の夕焼けの赤い照明をうけて、どす黒い影がひまわりの顔に落ちて、なんだか深刻そう。苦悩してる感じで、生きるべきか、死ぬべきか、なんて思いつめてる。どうせ、無視されたとか、浮気されたとか、先生と、上司とあわない、彼氏と別れる勇気がない、親がいじわる、とか、そんなのをなやんでるだけ。鶏頭、泣きすぎて青むらさきになっ
もっとみる千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ (14)
また、雨がふって、ぬれた。夜ごはんを探してさまよって、代々木のあたり、奈津美は本当に手ぎわよくホテルを見つけて、入って、いつのまにか部屋までわたしをつれてきた。ラブホテルだった。シャワーをあびて、奈津美は寝た。細い手足をいっぱいにのばして、ベッドをひとりじめした。わたしと奈津美、どっちのほうがつかれてるのかちゃんと相談したり、一番風呂じゃないといやだとか、そういう特異体質を尊重しあったっていいの
もっとみる千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ (13)
「そうなの」
「安いJポップを聞きすぎなんだよ」
ひまわりみたいになりたい、とか。
いつも、上をむいて、光にほほえむあなたが好き、とか。
和名の由来は、太陽の動きにつれてその方向を追うように花がまわると言われたことから。ただしこの動きは生長にともなうものであるため、実際に太陽を追って動くのは生長がさかんな若い時期だけである。若いひまわりの茎の上部の葉は太陽に正対になるように動き、朝には東を
千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ (12)
清瀬ひまわりフェスティバルは、都内最大級のひまわり畑が楽しめるイベントです。
約二・四〇〇〇平方メートルもの広大な農地に約一〇万本のひまわりが大きな花を咲かせます。
期間中、写真コンテスト等のイベントや、近隣の畑で採れた新鮮野菜やひまわりの切り花の販売、また商工会等による模擬店の出店があります。
これ。
まだ、あった。
六年だと思うけど、遠足で行ったとき、はじめてフルコーラスで歌った
千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ (11)
それから、おぼえてない。
あいまいな、押入れのなかみたいな、ぼんやりした夢のなか。時間も飛んで、わたしは、階段の踊り場、まだ外の光は雲にさえぎられてて、おばけみたいな黄ばんだまるい電球の下、次のまがり角の踊り場に影を落として、チョコレートのかたちと色のドアの前で、前衛的なせんぬきみたいに腰に手をあててた、奈津美を見あげてた。
スカートをパラシュートにして、たしかに、その瞬間、浮かんでた。二秒
千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ (10)
分からない。
どうでもいい。
でも、こたえもなんにもいらなくて、水玉の人が男なのか女なのか、坂のどのあたりに用事があったのか、アイスティーの氷も全部、とけて、それをすすって、
「いまごろ、なにしてんだろ」
なんて、別に興味もないことをなんとなく言えたのは、あの、奈津美とむかいあって窓際にすわってた、あのカフェの一時間だけで。もう永遠にどうでもいいこんな話を、どうでもいい話として話せることは
千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ (9)
「なんだっけ。そう、それで、栄橋、伏見橋、末広橋まで来て、でも、おまえ、けっこう十分前とか二十分前くらいには来てるやん。それで、ふつうに時間どおり来ただけのわたしを、
「なにやってんの」
みたいな目で見るでしょ」
「見てないけど」
「今日は、わたしのほうがぜんぜん早かった」
「えらい」
「新宿で、って言ったんだから、中野にいるとは思わないでしょ。え、そうだよ。橋のこっちが中野で、あっちが新宿。
千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ (8)
口は一で、へのかたちじゃなくて、それよりは(で、アメリカの顔文字みたいな顔してた。首に黒いリボン、腰にもひとまわり大きな、やっぱり黒いリボン、肩とか腕とか手首とか、いろんなところをしぼって、しぼってたるませたスカートは、中一のわたしにはカーテンみたいな、ってたとえしか思いつかなかった。カーテンみたいなスカートをはいた、黒いカエルだった。満員の大ホールの席にすわって、ビロードの緞帳があがるのを待っ
もっとみる千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ (7)
「迷った」
「は」
「迷った」
「馬鹿じゃないの」
「自分の家に帰るのにね」
「ねえ」
なんて、また、笑いながら、ちゃんともとの道にもどれた。馬鹿ではないから。一本道だし、川に近づけば水のにおいがするし、迷ったままでいるほうがむずかしい。それでも迷えるのは、本当に、中学生って家と学校をむすんだ最短距離の線の上しかとおらなくて、そこからはずれるとなんにもできないんだなって、てゆうか、なんにもするこ
千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ (6)
「ハ、レ、ル、ヤ」
「ハレルヤ」
「って、どういう意味」
「知らないの」
「知ってんの」
「知らない」
「いい天気、みたいなこと」
「じゃあ、それでいい」
「ハ、レ、ル、ヤ」
ハレルヤとは、ユダヤ教において「神をほめたたえよ」を意味する讃美のことばである。旧約聖書の詩篇の文頭や文末、新約聖書のヨハネの黙示録の中で見られる語である。
ハレルヤという語はヘブライ語に由来し、「ほめたたえよ」を意味
千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ (5)
わたしと奈津美は、二階をうろうろしてた。プールに入って、汗を流したことにした。塩素とかで消毒される。ふたりきりだった。前の年までは先輩に男子がいて、トランペットにふたり、トロンボーンにふたり、チューバにひとり、パーカッションにひとり、六人いて、みんな、合宿の入浴はプールだった。わたしもやってみたかったけど、それでいいやって思ってたけど、女の子は家に帰った。わたしだけプールってわけにはいかなかった
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雨がふった。
七月二二日にフィリピンの東海上で発生し、二六日には中型で、並の強さで奄美大島を通過、二七日に勢力をたもちながら九州の西の海上を北寄りにすすんだ。その後、勢力を弱めながらチェジュ島の東側をとおって朝鮮半島南部の黄海沿岸へすすみ、弱い熱帯低気圧となった。負傷者三人、全壊一棟、半壊一棟、一部損壊二一棟、床上浸水一六棟、床下浸水一九一棟。
たぶん、この台風だった。関東でも、少しは