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千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ (12)

 清瀬ひまわりフェスティバルは、都内最大級のひまわり畑が楽しめるイベントです。
 約二・四〇〇〇平方メートルもの広大な農地に約一〇万本のひまわりが大きな花を咲かせます。
 期間中、写真コンテスト等のイベントや、近隣の畑で採れた新鮮野菜やひまわりの切り花の販売、また商工会等による模擬店の出店があります。

 これ。
 まだ、あった。
 六年だと思うけど、遠足で行ったとき、はじめてフルコーラスで歌った。それが、最初で最後だった気がする。

 例年は開催しているひまわり畑も休止する場合がございます。
 また、現在は開催予定としているひまわり畑も、これから急遽変更になる場合がございます。
 あらかじめご了承ください。

 とも、書いてある。
 
期間 開催期間 毎年七月中旬〜八月下旬 予定

規模 二・四〇〇〇平方メートル

本数 約一〇万本

入園料 無料

駐車場 専用駐車場はございませんので、公共交通機関をご利用ください。

道のり
一 路線バス

一 西武池袋線清瀬駅北口西武バス二番乗り場(清六一系統)グリーンタウン清戸経由「志木駅南口」行き「グリーンタウン清戸」バス停下車、徒歩約六分

二 東武東上線志木駅南口西武バス二番乗り場(清六一系統)「清瀬駅北口」行き「下宿入口」バス停下車、徒歩約三分

三 JR武蔵野線新座駅南口西武バス二番乗り場(清六一系統)「清瀬駅北口」行き「下宿入口」バス停下車、徒歩約三分

二 無料シャトルバス

「清瀬駅北口」アミュー前臨時バス停から「下清戸」臨時バス停間を運行。「下清戸」下車(徒歩七分)

 なんだよ。
 駅からバスで行くような距離をだらだら歩いたら、四〇分かかった。暑かった。そのときもいつもの位置関係で歩いてたけど、前にもうしろにも同級生がいたから、奈津美は歌わなかった。歌ったのは、ふたりきりになってからで、
「しょんぼりしてるね」
「もう、夜だし」
「ひまわりは、夜になるとしおれるんですか。アサガオなの」
「アサガオじゃないな」
 とか、話しながら。
 トの字に細い道にわかれてて、歩道が歩行者と自転車にわけられてる、ジョナサンだかバーミヤンだか忘れたけど、とおりすぎて、駐車場の上の空中庭園みたいな、二階が一階の焼肉屋もあった、はるかかなたにコンビニも見える、わりと大きな国道から、路地へ、その路地の入場券売場って感じで、あたりまえみたいに、そこで立ちどまらなければならない、アサガオのグリーンカーテンにおおわれた産婦人科があった。赤むらさきの花をつけてた。つめたい日陰のにおいが、迷宮の入口みたいな、迫害された異教徒がかくれてる洞窟のような、窓も郵便受けも、あるか知らないけど井戸のポンプも、全部、飲みこまれて、そこだけ食い残されて切れてる、ずっと奥にひっこんだ、うす暗い玄関あたりにたまってて、アサガオの葉っぱがちらちらするから、風は吹いてるらしかった、その風にのって、ただよって、まだ、ここだけしつこく雨あがりをつづけてるみたいで。
 こんな産婦人科、吸血鬼が先生のふりしてるに決まってて、妊婦の腹を裂いては、胎児をひきずり出して、庭に埋める。
 あの赤むらさきは、泣いてる赤ちゃんの舌と歯ぐきの色で、天国へ案内する天使のラッパ。お母さんのおっぱいを探して、手をにぎにぎする、だから、葉っぱもざわつく。
 そんなことを話してた。突然、あんな巨大な花とくらべられたら、となりに立たされたアサガオもびっくりしただろうけど、駅からの道の途中のあのシーン、思い出したのか、どうなのか、分からない。
「アサガオじゃないんだから」
「太陽が出てないと、そっちを見ない」
「ひまわりは、太陽のほうをむいて立ってない」

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