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京都のにしんは蕎麦にも茄子にも。
今回は前回の千枚漬けに続いて、帰省中に食べた懐かしいご当地グルメのお話です。
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バリエーションのある料理って、その中にいわゆる定番ってありますよね。
🍜うどんならきつね、そばなら
たとえばうどんなら、きつねうどんに月見うどん、丼なら牛丼、親子丼、カツ丼。スパゲティならミートソースにナポリタン、そしてお蕎麦ならざるそば、天ぷらそば。
そんなお蕎麦には、地元に帰るとこれだという、ご当地カラーのある定番があります。それがこちらをメインのトッピングにしたひと品。
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味付けにしんは京都では定番の素材。甘露煮といって、もともとはカチカチに干した身欠きにしんを何日かかけてもどしてから、甘辛く炊いたけっこうな手間ものですが、今では画像のようなレトルトも一般的になって手軽に食べることができます。
🍜京の定番にしんそば
ところでなぜ京都でにしんそばが定番化したのか。
京都とひと口にいっても、現在の京都府全体をさすときと、京都市内ではその環境はぜんぜん別。京都府には日本海沿岸の地域もあって、そちらは海産物も豊富です。
ただし京都市内は四方を山に囲まれた地形で、新鮮な海の幸とは縁が薄くなります。今のようにスピーディな流通がかなわなかった時代は〆さばや干物が主役で、身欠きにしんもそんな時代から親しまれてきた海の幸なのです。
それをおそばに仕立てたのが、京都の街中、南座のところにあるこちらのお店。
にしんそばは、江戸時代創業の伝統あるお蕎麦屋さんで、明治時代に生み出された歴史あるメニューなのです。
🍜にしんそば作ります
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具はシンプル。にしんの甘露煮とおねぎ。地元では九条ねぎをたっぷり使うところですが、今回は手に入らなかったので、ふつうのおねぎです。
実家にいた頃は薬味やトッピングのねぎって青いものだと思ってましたが、あれは“肉”といえば牛肉なのが当たり前なのと同様に関西の食文化なんですよね。
万能ねぎなら手に入るのですが、やわらかい麺類のトッピングとしてはねぎの食感もほしいので、あえて白ねぎを使うことが多いです。彩りに緑の葉のところも使います。
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お蕎麦を茹でます。
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つゆも地元では薄口醤油でもっと色薄いのですが、今回は一般的なもので。
いよいよメインのにしん。
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立派すぎて水平に浮かべられませんでした。つき刺したみたいになってしまったのでちょっと対応検討中。
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というわけで半分にカット。斜めに切ったのは見映えに対するせめてもの可能性を求めてあがいた結果です。が、小さくなってちょっと寂しい感じもしますね…。でもおさまりはよくなりました。こうなってくれてないと、このあと困ります。
🍜にしんに架ける
というのも盛り付けの仕上げがあるからです。
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これ、これが盛り付けのポイント。
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にしんの真ん中に上からおそばを渡して、完成です。にしんという河にそばの橋を架けたみたいな盛り付け。このルックスが味わい深いです。
食べるときはたっぷり七味唐辛子を。京都は七味も有名なので、ここはやっぱり一味より七味がおすすめです。
🐟定番のおばんざいをもうひと品
さて、にしんといえばもう一品。おばんざい屋さんの定番があります。
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“にしんなす”とか“にしんとなすの炊いたん”と呼ぶ、炊き合わせです。
🍆にしんなすの材料(1皿分)
・にしんの甘露煮…1本
・なす…1本
・しょうが…2~3片
・水…1.5カップ
・醤油…1/4カップ
・みりん…1/4カップ
・砂糖…大さじ1
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なすは縦半分に切って、格子状の切り込みを入れておきます。
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にしんはひと口大にカット、しょうがはおろしておきます。
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なすとにしんを鍋に入れて、水、醤油、みりん、砂糖を入れて火にかけます。
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あとはなすが柔らかくなるまで煮るだけ。
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炊けたらいったん冷まして味をなじませます。
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食べるときは温めなおしても、冷たいままでもOK。冷蔵庫でひと晩冷やしたものも、よく味が染みて美味しいです。仕上げはたっぷりのおろししょうがを載せていただきます。
🐟にしんとともに浮かぶシーン
にしんを使ったふた品いずれも、子どもの頃から当たり前のように食べていた料理ですが、故郷を離れると、日常で食べる機会がまったくといっていいほどなくなりました。
忘れてしまったわけではないのですが、ふだんはお蕎麦屋さんに入ってもにしんそばというメニューはないし、にしんの甘露煮もあまり売っていないので、ついつい…なんですよね。でも地元に帰って食卓にのぼると懐かしさがこみ上げてきます。
特ににしんそばは、実家の年越しそばでもあるので、年末年始の帰省のときは必ず一度は食べる機会があります。
お正月明け、帰省から戻って日常がはじまり、来年また元気に年越しを迎えられるようにと考えるとき、頭に浮かぶ光景はみんなでにしんそばを食べるシーンだったりします。
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