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Don’t cry,my hero.
幼なじみのナナちゃんは、小さい頃から「女の子らしさ」とは無縁の子だった。髪はいつもショートカット。おままごとは嫌い、サッカーが大好き。スカートは絶対履かない。
お遊戯会で「アンパンマン体操」を踊った時は、他の女の子がみんなメロンパンナやドキンちゃんのお面を作る中、一人だけアンパンマンのお面を作った。お絵かきが下手なナナちゃんのアンパンマンは、紫色の顔に黄色のほっぺをして、まるでナスのおばけみた
エンドレス(ちくま800字文学賞応募作品)
「PDCAって、ご存じですか」
男は僕に尋ねた。
「ええ、まあ」
それは、サラリーマンの僕には馴染み深い言葉だった。
PLAN(計画)、DO(実行)、CHECK(評価)、ACTION(改善)。
日々の業務においてこれを実践し、円滑に遂行する。ビジネスの基本だ。
しかし、目の前の男の言う「PDCA」は、ちょっと違うらしい。
「簡単にご説明しますね。まず、PROMISE(契約)。貴方と私
犬泥棒(ちくま800字文学賞応募作品)
犬は防犯に役立つ。そう思う者は多いだろう。犬の使命とは、飼い主を守ることだ。怪しい者には吠え、勇敢に飛びかかる。
俺は泥棒だ。普通、泥棒は犬のいる家を避ける。だが、俺は違う。俺は、どんな犬でも手懐けることができるのだ。
その夜、俺はとある豪邸の前に立っていた。立派な門柱の隅に、小さな逆三角の印がある。仲間がつけた「犬がいる」というサインだ。玄関の防犯カメラは、明らかにダミー。俺は、屋敷を
密着取材(ちくま800字文学賞応募作品)
アカデミー賞受賞監督・西園寺怜子に密着し、ドキュメンタリー番組を作る。その企画は、怜子が新作映画の制作を発表した日から始まった。
私は番組のプロデューサーとして、当初から怜子と接していた。
怜子は、世間のイメージそのままの、気難しい職人のような女だった。
自分にも他人にも厳しく、演技の指導には一切手を抜かない。スタッフや俳優と口論になることも珍しくなかった。
「私は悪役なのよ。人間、追い詰めら
山手線の守護者たち(ちくま800字文学賞応募作品)
「狛犬ポジション」――電車のドアの両脇の「あの場所」のことだ。
毎日満員電車で通勤する僕は、この場所の快適さをよく知っていた。
しかし、この場所がネットで話題となり、名前が付き、そこを他人に譲る行為が賞賛されるようになった時、僕は決意した。
僕は、このポジションを守る。そして、ここを真に必要とする人に使ってもらうのだ。それは確かな偉業に違いない。
僕は毎日、できる限りポジションを確保し、必要な