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こんなひといたよ

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私テリーがマンガで出会った人たちの物語
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記事一覧

こんなひといたよ 第21話「人の不幸に同情できるおじさんたち」

奥田英朗の「我が家のヒミツ 手紙に乗せて」から「人の不幸に同情できるおじさんたち」を紹介する。 若林亨は父母と妹の4人家族だった。突然の母の死によって家族の状況は大きく変わった。とりわけまだ50代前半で伴侶に旅立たれた父の落胆ぶりは顕著だった。食事はできない、睡眠もとれていない…心身ともに不調をきたしている。亨と妹その父の状況を毎日心配しながら生活をしていた。亨は、共に仕事をする若い同僚たちと、中高年の上司たちでは、自分に対する接し方が随分と違うことに気づく。 ***

こんなひといたよ 第20話「UFOと交信していると言う夫を持つ妻」

第18話に続き奥田英朗の「家族」を扱った物語。文庫「我が家の問題」から「夫とUFO」というお話を紹介する。 夫がこんなことを言い始めたらあなたはどうしますか? 「実はさ、UFOがね、おれを見守ってくれているんだよね。最近は彼らと交信もできるようになってさ。なんか、いい感じなわけ」 妻である美奈子は、なぜ夫がこんなことを言い始めたのか…気が付けば本棚はUFOの本ばかり、休みの日にはあやしい集会に出かける夫。夫を守るため、家族をまもるため美奈子は立ちあがった。 *** そ

こんなひといたよ 第19話「小規模な絶望を抱え生きる男」

福満しげゆきのマンガがたまらなく好きだ。主に「妻」をネタにした「僕の小規模な生活」や「うちの妻ってどうでしょう」などで有名な人気漫画家である。基本すべての著作に自身が出てきているので、その人柄を感じることができる。 その人柄はなかなかやばい人である。特に初期の作品で、高校時代~マンガ家になる前の自身の生活を描いた「ぼくの小規模な失敗」の中では、なかなかヒドイ自虐的で、世の中のレールにのれなかった自分を責めている心情をつづっている。 今回は、この作品の中から福満氏が人生に絶

こんなひといたよ 第17話「3人でくらしている」

今日は「特別なできごとが起こるわけでもく、とくだん物語的な筋もなく、登場人物さもあやふや」なお話。青野春秋の短編集「五反田物語」に収録されている「くらし」から。 この記事は、私が出会った出会ったマンガの登場人物の物語を紹介するマガジン「こんなひといたよ」に収録。 *** 3人でくらしている 時間はまだ夜7時前、2人の男が6畳ほどのせまい部屋に布団を並べて寝ている。一人は青野と言い、もう一人の寝ているのにサングラスをかけているのはウーちゃんと言う。 二人が寝ている部屋

こんなひといたよ 第16話「内定先を弊社と呼ぶ大学生」

私の読んだマンガで出会った人たちの物語を紹介するシリーズ「こんなひといたよ」。 今週のSPAに掲載されていた「全員くたばれ!大学生」がおもしろすぎたので紹介する。 *** ファミレスにリクルートスーツを着た学生が4人なにやら談笑している。女子はロングの女とメガネの女と、男は坊主頭と天パメガネ。 この時期にリクルートスーツを着ていると言えば、就職活動中…それもちらほら明暗が分かれているころだ。内定もらったやつ、まだもらえないやつなかなか切ないコントラストが明確になる。

こんなひといたよ 第15話「人生という化け物と戦う男」

私の読んだマンガで出会った人たちの物語を紹介するシリーズ「こんなひといたよ」。 最近すっかり古谷実にはまっている。今回は「サルチネス」というマンガから…。あたまのおかしい男とお巡りさんのやりとりを紹介する。 *** 道端でお巡りさんの股間をいきなり握った男が交番へ連行された。男は、伸び放題に伸びた髪の毛に整っていないあごひげと汚らしい身なりだ。 股間を握られたお巡りさんは「お兄さん名前を聞かせてくれるかな?」と聞いた。彼まだ30歳くらいだろうか若くて誠実そうな男だ。

こんなひといたよ 第14話「人のもの盗んで夢を叶える男」

私の読んだマンガで出会った人たちの物語を紹介するシリーズ「こんなひといたよ」。 今回も、古谷実の「わにとかげぎす」から4人目。富岡が夜警している施設のグラウンドに夜侵入してきてサッカーをはじめた若者たち。富岡は、びびって黙認をしている。 *** 若者たち4人は、地べたに座り込んでスーパーで買ってきたパックの鮨を食べながらしゃべり始めた。何やら物騒な話だ。 「もっちゃん、今日やったそのアウディはさぁ…ちゃんと調べて前々から狙ってたの?」 「いや超偶然だよな」 「うん…オ

こんなひといたよ 第13話「人生のキャンパスに何も描かない男」

私の読んだマンガで出会った人たちの物語を紹介するシリーズ「こんなひといたよ」。 今回も、古谷実の「わにとかげぎす」から。「人生のキャンパスに何も描かない男」をお送りする。スーパーの夜警を辞めた富岡。新しい仕事を探していたが、見つかったのはまた夜警の仕事だった。そこで出会ったのは自分に似た男だった。 *** 斉藤は、富岡の新しい職場の先輩だ。歳は30代頭くらいの若い男だ。坊主頭で柄のないチノパンにシャツ。目に力がなく表情に乏しい。この日は、2人の顔合わせの日。一通り施設内

こんなひといたよ 第10話「大人びた幼児とスナックの客」

私の読んだマンガで出会った人たちの物語を紹介するシリーズ「こんなひといたよ」。 今回は、今回は東村アキコの「テンパリスト☆ベイビーズ」から、まりこちゃんというスナックで働く幼児の話。同作品は、著者の息子が通う保育園の子どもたちをモデルとした園児たちを主役としたギャグ漫画だ。 *** まだまだ飲み始めるには少し早い午後5時過ぎ、スナック「まりこの部屋」はもう営業中だ。カランコロンという音と共に、ドアが開くと上司と部下と思われるサラリーマン2人が店に入ってきた。 このスナ

こんなひといたよ 第9話「勝ったらカツ丼ボクサー」

私の読んだマンガで出会った人たちの物語を紹介するシリーズ「こんなひといたよ」。 今回は、今回は「深夜食堂」から、カッちゃんというボクサーのお話。そのシーンを紹介する(原作のセリフを引用しながらテキストで再現) *** 今晩も深夜食堂は営業中。店の中では、サラリーマン2人が「これからはモチベーションをあげめ、イノベーションを起こさなきゃ」というわけのわからん会話をしている。マスターは眉をひそめて「なんだこいつらは」という顔をしている。 そこに暖簾をくぐってボコボコの顔の

こんなひといたよ 第8話「立ち食いそば屋で昼間からビール男」

私の読んだマンガに登場するキャラと印象的なシーンについて書くシリーズ「こんなひといたよ」。 今回は、2度目の登場「1日外出録ハンチョウ」の大槻太郎。今回は立ち食いそばに来たお話。そのシーンを紹介する(原作のセリフを引用しながらテキストで再現) *** 平日のお昼、小さな立ち食いそば屋。 今時珍しくこの店は食券ではなく直接注文する形だ。座席に座っている坊主頭のスーツを着た大槻が「すいません」と言って店員を呼び止め注文をしている。その注文が立ち食いそば屋にしては、妙にやや

こんなひといたよ 第7話 「人生変えたい冴えない大学生」

私の読んだマンガに登場するキャラと印象的なシーンについて書くシリーズ「こんなひといたよ」。 今回は「全員くたばれ大学生第2巻」から。冴えない大学生である主人公がウェイウェイやっている大学生を憎み嫉妬しながらもがく大学生活を描いたギャグ漫画。今回の登場人物は、その主人公の冴えない大学生哲太とその友人高野の2人。彼らがウェイウェイやっている同じ大学生を眺めながら交わす会話のシーンを取り上げる。 まずはそのシーンを紹介する(原作のセリフを引用しながらテキストで再現) ***

こんなひといたよ 第6話 「オロナミンミルクの女」

私の読んだマンガに登場するキャラと印象的なシーンについて書くシリーズ「こんなひといたよ」。 今回は「深夜食堂」だ。夜中だけ開店するちょっと変わった食堂に現れる人々を描いた名作だ。毎回現れる登場人物と食堂のメニューにまつわる話だが、今回取り上げるのは「オロナミンミルク」なる飲み物を注文した女性の話。 それではそのシーンを紹介する(原作のセリフを引用しながらテキストで再現) *** 今晩も深夜食堂は営業中。サッと店に一人の女が入ってきた。仕事帰りと思われる女が店に入るなり

こんなひといたよ 第5話「居酒屋にいた中年男性とその場で出会った3人」

私の読んだマンガに登場するキャラと印象的なシーンについて書くシリーズ「こんなひといたよ」。 今回は「 1日外出録ハンチョウ」の第70話「一会」から。カイジのスピンオフ作品で、現在ヤングマガジンで連載中。主人公は、大槻太郎。借金により地下労働を強いられている底辺の男たちの中の1人。大槻は、その中の1つの班の班長を任された地下労働者の中のベテラン。それだけに、ここでの生き方に長けている。本作は、労働の対価として与えられるペリカという通貨を貯めて購入することができる「1日外出券」