こんなひといたよ 第8話「立ち食いそば屋で昼間からビール男」
私の読んだマンガに登場するキャラと印象的なシーンについて書くシリーズ「こんなひといたよ」。
今回は、2度目の登場「1日外出録ハンチョウ」の大槻太郎。今回は立ち食いそばに来たお話。そのシーンを紹介する(原作のセリフを引用しながらテキストで再現)
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平日のお昼、小さな立ち食いそば屋。
今時珍しくこの店は食券ではなく直接注文する形だ。座席に座っている坊主頭のスーツを着た大槻が「すいません」と言って店員を呼び止め注文をしている。その注文が立ち食いそば屋にしては、妙にややこしい。
「えっと、それぞれ単品で…コロッケとかきあげ、それと、えび天ももらおうかな…このほうれん草に温玉のせて小鉢でもらえる?それとあとは生ビールひとつ…!以上で!」店員はあっけにとられている。まるで居酒屋に来たようだ。ほうれん草とか温玉ってうどんのトッピングであって…小鉢でとかありえんだろう。
そして、そもそもそばを注文していない。店員は「お客さん、そばは…?」と聞いた。当たり前の反応だ。男性は「あぁ…そばは、シメでもらおうかな…」と言った。まわりの人たちもこの声が聞こえたのか…一瞬店の中が「ざわ…ざわ…」とした。
男性の元にはすぐに生ビールが運ばれてきた。男性は「フフ…では…」と周りにちょっと聞こえるような声でつぶやき、ジョッキを一気に傾けた「グイッグイッ」まさかの一気飲みだった。「かぁ~!沁みるぅ~!」今度はつぶやきではない、明らかに周りの目を気にしながら大きな声で感嘆の声を上げた。周りのサラリーマンたちが「ゴクッ」とつばを飲み込んだ音が聞こえた。今にも「俺も生ビール!」と言ってしまいそうだ。
あるサラリーマンが「悪魔的っ、あの男…肴にしているんだ。飲みたくても飲めないサラリーマンへの優越感をっ」と。なんなんだこの男の解説っぽいしゃべりは。なんだかこの店は変なやつばかりだ。
でもまちがいなくその通りではあった。周りに聞こえる声で感嘆をもらし、それをほかのサラリーマンたちは嫉妬のまなざしで見ている。この男性が、私服でいたらただの昼間っから酒飲んでいるどうしようもないやつだということで消化できたものの。なにせスーツ姿だ。まるで「昼間から酒を飲むことを許された重役」のようだ。
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