こんなひといたよ 第5話「居酒屋にいた中年男性とその場で出会った3人」
私の読んだマンガに登場するキャラと印象的なシーンについて書くシリーズ「こんなひといたよ」。
今回は「 1日外出録ハンチョウ」の第70話「一会」から。カイジのスピンオフ作品で、現在ヤングマガジンで連載中。主人公は、大槻太郎。借金により地下労働を強いられている底辺の男たちの中の1人。大槻は、その中の1つの班の班長を任された地下労働者の中のベテラン。それだけに、ここでの生き方に長けている。本作は、労働の対価として与えられるペリカという通貨を貯めて購入することができる「1日外出券」を使って、地下から出た大槻の1日のお話。
今回のシーンは、1日外出をした大槻が居酒屋でそこに居合わせた人たちと交流をする話。
まずはそのシーンを紹介する(原作のセリフを引用しながらテキストで再現)
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都内某所の「くしかつBAR」のカウンターにいた大槻。彼は、ジーパン、襟付きシャツのラフな姿。串カツの盛り合わせと生ビールという晩酌セットを楽しんでいる。あっという間に、生ビールと串カツを消化し、次は生ビールともつ煮を注文している。
そこに、隣で座っている若い男性がこの中年男に話しかけた。「いぃスね~!うまいっスよね…ここのもつ煮」フランクに見ず知らずの中年男に話しかける若者。大槻とこの若者はすぐに意気投合。若者は「オレ美容師になる前は小説家を目指してて」と話す。大槻は「ワシみじんもキミに文学性感じないんだけど」、若者は「ちょっ…言うよね~!」爆笑…みたいな本当にたわいのない会話で盛り上がっている。
そうすると後ろで1人で飲んでいる20歳くらいの若い女性も会話に参加してきた。「(お酒をブッってふいて)面白くてさっきから…お二人の話が…。読んでみたいですけどねお兄さんの小説」笑みたいな。彼女は美大生。
若い男性が今から小説家を目指すかどうかという話をしていると、「遅すぎるということはないヨ…!人生に…!」とカウンターの端で一人で飲んでいた金髪に髭をたくわえたアウトドアスタイルの外国人男性まで会話に乱入。「私は30歳からアルピニスト目指して…今度アタック エベレスト…!」「え~すごい!」と実にスムーズに会話に入っていく。そこから4人は、お互いのことを話しながら実にどうでもいいといえばどうでもいい、まさに不要不急な会話を楽しんでいる。
盛り上がった4人は、ついに同じテーブルに移動し、数時間なんだかんだ話をしている。生ビールもどんどん進む。4人ともよく飲む。若い女が「不老不死になるか 今死ぬかて言われたら…どっち選びます?」と投げかける。その若い女性のどうでもいいテーマのなげかけにまたワイワイやっている。中年男性が言った「だからあれでしょ?ここで言う不老不死って…人類が滅んでも…地球がなくなっても…孤独に宇宙空間を…何億年何兆年とさまよい続けなきゃいけないと…」、それ「火の鳥」ですね。
なんだかんだもう店が閉店になるようだ。4人はようやく立ち上がり会計を済ませ、外に出た。私も、遅れて外に出た。4人は特に連絡先を交換したりすることなく「またね」と言って、それぞれの方向に帰っていった。
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連絡先なんて交換しなくていいのだ、この場限りの一期一会の楽しい夜。それがいい。