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短編小説・ショートショート

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ショートショートは2000字前後まで、短編小説はそれより長めの読み切りです。
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#子どもに教えられたこと

【ショートショート】虹色野球

【ショートショート】虹色野球

先輩調査員「この国では子ども達に対する軍事教育がないようだから、近い将来われわれが攻め落とすのに恰好のターゲットだな」

後輩調査員「僕もそう思っていたのですが、色々と調べてみたら、面白いことが分かりましたよ」

先輩「ほう、何だね?」

後輩「この国では野球が人気です。幅広い世代に受け入れられています。この野球が軍隊的教育と通底しているのです」

先輩「と言うと?」

後輩「野球はこの国の開国黎

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【ショートショート】音楽的生活

男「俺は一日中、好きな音楽に触れていたいYO! でも、嫁も子どももいるから無理な話だYO! YEAH!」

老人「君は音楽を勘違いしているね」

男「えっ? どういうことだYO?」

老「子どもがいると言ったね。子どもほど音楽的な存在はいないのだよ」

男「分からないYO! 説明してくれYO!」

老「4つの『KYO』を教えてあげよう。子どもは何度も同じことを繰り返すね。そして、それを受け入れてく

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【ショートショート】3兄弟と3姉妹

【ショートショート】3兄弟と3姉妹

 4月最後の日曜日のうららかな昼下がり、花子、桃子、桜子の3姉妹は、それぞれ友達との約束に間に合わせるため、バタバタとせわしなく準備をしていた。3人が靴を履いているときに、玄関の上がり框の手前で仁王立ちした花子ママが言った。

「ちょっと、あなたたち、ママとパパは今日ディナーだから、夕ご飯は適当に食べてね」

「分かってるよ、行ってきまーす!」

 長女の花子が履き慣れないパンプスを気にしながら出

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【ショートショート】分身夫

【ショートショート】分身夫

「こんにちはー!」

「いらっしゃい、勇輝くん、真知子さん」

 真知子は幼稚園に通う息子の友達・尊の家に呼ばれて、初めて家にお邪魔した。

「今日はいっぱい遊んでね。真知子さん、お茶入れるから座って」

「友香里さん、お気遣いなくね」

 子供達はリビングに入るなりおもちゃ置き場へ直進し、きゃっきゃと遊びはじめた。
 真知子がテーブルの椅子を引いて座ろうとしたとき、背後に気配を感じ、振り返ると恰

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【ショートショート】車がない

【ショートショート】車がない

「ママー、車がなくなってるよ!」

 なぜ? パパがコンビニに停めたのを忘れて歩いて帰ってきちゃったのかしら……

「太郎、次郎、コンビニを見てきましょう」

「うん」

 道を歩いていると音楽が聞こえてきた。何かのエンジン音、金属音、口笛、男性の歌声などが程よいハーモニーを奏でている。
 先に走って様子を見てきた太郎と次郎がぜいぜい息を切らせながら、

「ママ、コンビニの駐車場で、工事のおじさん

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