質問042:思いどおりに体を動かすには?
回答
▶思いどおりの「思い」を消す
思いどおりの「思い」というのが、「思考」そのものなのですから、体を思いどおりに動かそうとする試みが、そもそも上手くいかない原因になっています。
自分の「思い」というのは完全に消し去って、ボールに集中するのです。
もちろん私たち人間は感情の生き物ですから、「ああしたい」という欲や、「ああしたくない」という怒りがあって、それらの思いが現実どおりいかないために、苦しむハメになります。
現実の流れにあらがおうとすると溺れます。
現実の流れに身を任せるのです。
▶流れに身を任せると「どうにかなる」
災害が起きたら大変です。
だからといって「起きなければよかったのに」とあらがうと、余計につらくなります。
現実的に災害が起きてしまったら、流れに身を任せるしかないのです。
流れに身を任せていると、案外「どうにかなる」ものです。
自分の「思いどおり」ではなく、テニスでは、「ボールどおり」でなければなりません。
▶「ボールどおり」に動く
自分は右へ行きたくても、ボールが左に飛んで来たら、自分も左へ行くのです。
自分はフォアで打ちたくても、ボールがバック側に来たら、バックで打つのです。
たとえ自分の「思いどおり」ではなくても、「ボールどおり」に動けば、上手くいきます。
ボールの動きにあらがうのではなく、ボールにすっかり身を委ねるのです。
とはいえ「自分の思いどおりには動けない」と言ってしまえば身も蓋もありませんので、動きを作るヒントをお渡しします。
▶思いどおりに体を動かすための「原動力」
例えば「寄り目」です。
寄り目を作ろうとする時、眼球の動きを司る外眼筋を内側に寄せようと意識してみても、なかなか上手くいきません。
そう、体の使い方を意識しても、体は思いどおりに動かないのでしたね。
では、どうすればいいでしょうか?
「鼻を見よ」でイッパツです。
鼻という「目標を定める」だけ。
これが、思いどおりに体を動かすための原動力になります。
体の内側の筋肉ではなくて、外側の対象物に目標を定める。
運動能力の差は「外向的or内向的」に影響を受けます。
▶ボールに身を委ねると自然に動く!
つまりあたかも自然界の動物が、「獲物」を狙うかのようなイメージです。
チーターは、「ヒザを曲げよう!」とか、「もっと太ももを高く上げなきゃ!」とか、走るときに意識していません。
ただ、外側の対象物であるところの「獲物」に集中しています。
「受け身に秘められた真価」です。
テニスで言えば、ヒジの曲げ伸ばしや腰の回転を意識するのではなく、「ボール」という目標を定めます。
そうすると、ボールに身を委ねた体が、自然に動くのです。
▶「やり方」「ハウツー」では、体は動かない
明確な目標があると、体が自然に動く。
これは何も、テニスに限った話ではありません。
それが証拠に、ビジネスでも人生設計でもよく、「目標を持つことが大事」と言われます。
これは、目標を持つことで行動(動き)が伴ってくるからです。
ところが多くの人は、目標というよりも「やり方」「ハウツー」に目がいくから、いつまでたっても「行動」できません。
「手段が目的化」するのです。
テニスで言えば、「ヒジを曲げ伸ばす」「腰を回す」といった「やり方」「ハウツー」を意識してしまうと、体は動かないということです。
寄り目は、眼球の動きを司る外眼筋を意識しても、作れませんでしたよね。
▶意識できる筋肉だけ意識してみても……
ところでこういうと、「テニスでヒジを曲げ伸ばすのと、寄り目とは違うだろう!」「ヒジを曲げ伸ばすのは、意識して筋肉を動かすことでもできる!」と言い張る人もいます。
もちろんそのとおりです。
ヒジを曲げ伸ばすくらいの動作なら、わざわざ目標を定めなくても、筋肉の動かし方を意識することでも可能です。
とはいえテニスは、フォアハンドをひと振りする動作ひとつとってみても、インナーマッスルのような分かりにくい深層筋も複雑に関与しており、分かりやすいアウターの筋肉だけを意識的に動かすアンバランスが、インナーとの動きの不調和を生み出す原因になっています。
これが、「フォームを意識すると動きがギクシャクする」理由です。
▶「自然界」に答えがある
そればかりではありません。
フォアハンドをひと振りするなかでは、「足の裏の筋肉」や、「首の後ろの筋肉」なども、関わっています。
両方とも、動きを制限されたらフォアハンドがとても打ちにくくなりますが(寝違えたら途端にプレーしにくくなるはずです)、いちいちそれらの動きを意識しないでしょう。
意識して動かす筋肉と、意識せずに動く筋肉との間に、不調和が生じます。
体を思いどおりに動かしたければ、自然界の動物が備えている運動メカニズムにならう(私たち人間も、その一部なのですから)。
外側のターゲットに目標を定めると、体は目標に応じて、ナチュラルに動きます。
それが「自然体」です。
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