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1〜3分で読める!〜1800字以内の創作小説
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#ホラー

【1話完結小説】県道◯号線

【1話完結小説】県道◯号線

夏の夕暮れ。ドライブ帰りの私は、真っ直ぐな田舎の県道を車でひた走る。前には5台ほどの車が等間隔で連なっていた。
…と、何もない場所で前の車たちが何かを避けるように右に大きく膨らんだ。そしてまた元の道に戻り何事もなかったかのように走り続ける。
え?何で?何で?何も見えない。皆が右に膨らんだあたりに差し掛かったがやはり私には何も見えないのだ。
そのまま直進する。
ドン!
突然車体前方に衝撃を感じ、驚い

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【1話完結小説】見えてるくせに

【1話完結小説】見えてるくせに

「ねぇ、私のこと見えてるんでしょ」

会社帰り、駅前の雑踏で血塗れの女が話しかけてきた。女の体は半分透けている。明らかにこの世の者ではない。
見てはいけない、答えてはいけない…。

目線をそらし無視を決め込む僕に、女はしつこく付き纏う。

「見えてるくせに!見えてるくせに!返事くらいしなさいよ!」

女の声は段々ヒステリックに大きくなっていった。僕は「早く消えてくれ」と祈りながらひたすら自分のつま

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【1話完結小説】恐竜博物館

【1話完結小説】恐竜博物館

恐竜博物館、夏休みの夜、少年達…こんなシチュエーション、ワクワクしないかい?

僕が小6の時、まさにそんな場面が訪れたんだ。昔はセキュリティが甘かったから、閉館後に僕と親友の宗介が取り残されても誰も気づかなかったんだろうね。
真っ暗な館内。月明かりで見るブラキオサウルスの骨格標本は、それはそれは巨大で美しい荘厳な影だった。
僕らは恐竜が大好きだったから、凄く興奮したよ。宗介なんて、その博物館のマス

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【1話完結小説】原因

【1話完結小説】原因

問題解決のために原因を探究することは面白い。知的好奇心というやつだ。
原因を見つければ自ずと対処法も考えつくだろう。

俺は自分の部屋のあちこちを探しまわる。
そしてついに。

「…みつけた」

叔父さんから入学祝いに貰った分厚い国語辞典。春から開きもせず秋までずっと放置していたそのページの間に、小さな呪符が一枚。

これが最近俺の周りで起こる不幸の原因に違いない。原因がはっきりすると途端に目の前

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【1話完結小説】アルコール噴霧器

【1話完結小説】アルコール噴霧器

会社の玄関に人感センサーのアルコール噴霧器がある。それが最近、誰も居なくてもプシュと音を響かせアルコールを吹き出す時があるのだ。

 同僚達は「外国製の安いヤツ買ったから誤作動だな」と笑って話していたが、私には一つ気になる事があった。誤作動するのは大体いつも火曜の昼頃。最近全く姿を見せなくなった移動販売のパン屋のおばさんが来ていた時間帯だ。

 火曜の昼頃、アルコール噴霧器は誰もいない空間に2回ア

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【1話完結小説】八朔

【1話完結小説】八朔

…ぽぽぽ。

2歳の息子は果物が大好き。最近は特に柑橘類にハマっている。

「はっしゃく!はっしゃく!」

その日も彼は朝からうるさかった。

「はいはい、八朔ね。またばぁばに送って貰おうね。今日はこれしかないよ。」

洗濯物を干そうとしていた私は、息子の前に膝をつきなだめすかした。八朔の代わりに買い置きのオレンジを持たせてみる。ぽぽぽ。

「はっしゃく!」

先日、田舎の母から送られてきた八朔を

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【1話完結小説】古井戸

【1話完結小説】古井戸

クスクス クスクス

「ホントに来ちゃった」
「怖いよ」
「やっぱりやめない?」
「今更だめだよ」
「やるって言ったじゃん」
「みんなで覗けば大丈夫だよ」
「怖くないように手ぇ繋ご」

クスクス クスクス

師走の夕方。7人の少女たちが神社裏手にある古井戸の前に立っていた。

7人は同じ小学校のクラスメイトで、噂話を確かめるためこの寂れた神社にやってきたのだった。

『神社の古井戸を7人同時に覗く

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【1話完結小説】訪問者

【1話完結小説】訪問者



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140字小説にしては少し長いから140字小説のカテゴリには入れられない…。
でも短いから一瞬で読めちゃいますね😅

【1話完結小説】財団メンバー松任谷

【1話完結小説】財団メンバー松任谷

こちら、以前Twitterに載せた140字小説×4話をひとつにまとめたものです。実際に私に届くしつこい迷惑メールに着想を得て書きました。

____あなたにもこんな名前の人から迷惑メールが届くこと、ありませんか?
どうぞお読み下さい。

****************

数年前から迷惑メールが届き始めた。その中にたまに混ざる“財団メンバー 松任谷”の名前。数年間、いつも忘れた頃に届くその名に私は

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【1話完結小説】空飛ぶストレート(407文字)

【1話完結小説】空飛ぶストレート(407文字)

舞の学校に伝わる七不思議のひとつ、“空飛ぶストレート”。
放課後、誰もいない5年2組の窓の外をストレートヘアの生首が横切るらしい。

そんな訳で舞たちは5年2組になった時、「こわーい!」などと大騒ぎした。
しかし2学期も終わりに近づいたこの時期まで、誰ひとり生首の目撃者は現れなかった為、その話題も自然と忘れ去られていった。

ある放課後。
舞は友達との交換日記を机に忘れた事に気付き、取りに戻る。

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【1話完結小説】記憶に無いおつかい

【1話完結小説】記憶に無いおつかい

「あんたは小さい頃“は◯めてのおつかい”に出たことあるのよ。」

 そう言いながら一度もその時の映像を見せてくれたことのない両親は、俺が20になった年に交通事故で死んだ。
 葬式も終わり、両親の部屋の片付けをしていると“は◯めてのおつかい”と書かれたDVDが出てきた。

「ああこれか。言ってたことは本当だったんだな。」

 特に興味もなかったが、何の気無しに再生してみる。例の音楽と共にVTRが始ま

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【1話完結小説】ブルーレット奇譚

【1話完結小説】ブルーレット奇譚

「お姉さん泥棒なの?お金ないの?…可哀想…じゃあ宝石あげるね。」
空き巣に入った私は、1人で留守番していた幼女に鉢合わせた。

幼女は私の手を引きトイレに向かう。
そこには透明でピンク色に光るブルーレットがあった。
「綺麗でしょう?」
自慢げに私を見上げる幼女の純粋な瞳。

(おめでたいオツムね)
空き巣に成り下がらざるを得なかった幼い自分を思うと、目の前ののほほんとした幼女が途端に憎らしく感じ、

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【1話完結小説】母の愛

【1話完結小説】母の愛

 前を走る白い軽自動車が蛇行運転している。警ら中の俺は停車を指示した。

 パトカーを降り、路肩に停まった車に近づくと運転席には誰もいない。髪の長い女が運転していたように見えたが…。

 後部座席に目をやると、ガリガリの幼児がぽつんと座ってこちらを見ていた。保護者の行方を問うと
「ママはね、オバケだけど僕を助けてくれたの。」

 調べると幼児の母は1年前に病死しており、幼児は父と父の恋人から日常的

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【1話完結小説】見知らぬ町の見知らぬ小道で

 時間が有り余る土曜の午後。私は徒歩で、5歳の息子は小さな自転車で、散歩に出た。

 いつもと違うコースを辿ってみると、町外れの河原沿いに廃屋を見つけた。周りはぐるりと春光を照り返しキラキラ光る田んぼ。蝶々。色とりどりの道端の花。のどかな空気の中、平屋の廃屋は伸びきった草木に囲まれ、そこだけ暗い影が色濃く満ちていた。屋根瓦にまで雑草が蔓延っている。朽ちたエアコンの室外機が物哀しい。

 廃屋をじっ

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