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掌編小説

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#小説

【小説】諾々

 4月も後半になってきたからか、あんなに寒くて嫌だった夜風が、むしろ気持ち良く感じてくる…

たま
2年前
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【小説】2ヶ月前のチケット

 会場に近づくと、『チケット譲ってください』と書かれたプレートを掲げる人たちが増えてきた…

たま
2年前
4

【小説】病室

「もう別にいいのに、お見舞いなんて」  千歳さんが、ベッドの横に吊るしてあるリモコンを操…

たま
2年前
2

【小説】ポリメリアン

「あ、ポリメリアンだ。かわいー」  見慣れた道を歩きながら、ちぎれんばかりに尻尾を振るポ…

たま
2年前
6

【小説】役作り

 ギュシューッと大袈裟な音を立てながら、電車が止まる。  こんなご時世もあってか、この駅…

たま
3年前
1

【小説】第六感

 それは火曜日の朝。  いつもより早く目覚めてしまい、頭を目覚めさせるためにコーヒーを胃…

たま
3年前
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【小説】最後の晩餐とカップラーメン

 「最後の晩餐に食べたいものは何か」と、学生時代そんな話題が上がるたびに、僕はカップラーメンを食べたいと答えていた。  とはいえ学生時代にカップラーメンを頻繁に食べていたわけではなく、栄養管理士の資格を持つ母親がカップラーメンを毛嫌いしていたのもあり、滅多に食べられないものであった。  そのため、中学生の頃に初めてカップラーメンを食べた時から、密かに食べた時の背徳感や普段味わうことのない濃い味付けに、僕は虜となっていた。  特に『カップキング』というカップラーメンが好きで、

【小説】10年後、約束の欅の木で

「この欅の木に、10年後の今日集合な」 6年3組のリーダー格であった片山君が、クラスの面々に…

たま
3年前
2

【小説】マトリョーシカ

数週間前までは使い慣れていたはずの鍵を取り出すと、たくさんの景色を思い出した。 引越し業…

たま
3年前
5

【小説】ひつまぶしのパラドックス

運ばれてきたひつまぶしのおひつを覗き込むと、うなぎの光沢に眩しささえ感じた。 創業100年を…

たま
3年前
2

【小説】最大音量の一つ下

ヘッドホン越しに鳴るギターの音圧に、肩がピクッと震えた。 手元のスマートフォンで音量を最…

たま
3年前
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【小説】超能力OL

昔、『超能力少年』と持て囃され、様々なテレビ番組に出演している少年がいた。 その少年は、…

たま
3年前
6

【小説】実はカップ焼きそば嫌いなんです

夏目漱石が「I love you」を「月がキレイですね」と訳したそうだけど、僕が訳すのだとしたら「…

たま
3年前
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【小説】あの夢をもう一度

大泉蒼子ーー。 その名前を忘れた事は、一度だってなかった。 それは葵が14歳の頃、夢で出会った女性の名前だ。 その頃の葵は周りの男子中学生たちと同様に、いやきっとそれ以上に、普通の“恋愛”というものに憧れを抱いていた。 その夢の中で、葵は大きなベッドの上で眠りから覚めた。 夢の中で夢から醒めるというのは手が込んでいて、その夢に現実味を感じたのはそんな要因もあったのかもしれない。 起き上がり部屋を見渡すと、それはいつも見慣れている葵の部屋ではなく、木目調の壁に囲まれた部屋に