【小説】あの夢をもう一度
大泉蒼子ーー。
その名前を忘れた事は、一度だってなかった。
それは葵が14歳の頃、夢で出会った女性の名前だ。
その頃の葵は周りの男子中学生たちと同様に、いやきっとそれ以上に、普通の“恋愛”というものに憧れを抱いていた。
その夢の中で、葵は大きなベッドの上で眠りから覚めた。
夢の中で夢から醒めるというのは手が込んでいて、その夢に現実味を感じたのはそんな要因もあったのかもしれない。
起き上がり部屋を見渡すと、それはいつも見慣れている葵の部屋ではなく、木目調の壁に囲まれた部屋に