tam

ぽこ(芳紅)氏が開設しているVRchatの哲学インスタンス「ぽこ堂」での議論内容をまと…

tam

ぽこ(芳紅)氏が開設しているVRchatの哲学インスタンス「ぽこ堂」での議論内容をまとめています。

最近の記事

VRCぽこ堂議事メモ:そもそも「理解」ってなんだー他人を理解するとはどういうことか?

議題:他人を理解するとはどういうことか哲学堂のお題ギミックから、バカロレア試験(哲学)と思われる深淵な議題が出たため、簡易的に内容をまとめる。 議事メモのため、多少の内容の飛びがあることはご容赦されたい。 まとめると:他人を理解するとは、他人の言動や行動からその思考や意図を高精度で予測する能力を指す。 完全な理解には情報収集と分析が必要だが、自分であれ他人であれ、完全な予測は難しく、部分的な理解に留まる。 AIも一定の行動予測が可能だが、人間の「本当の理解」とは異なると

    • レビュー:『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』

      以下はVRCのぽこ堂で話題になった映画、  『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』 に関するレビューである。 視聴済みであることを前提としたネタバレ全開のレビューであるため、未見の方は注意されたい。 総論:メルヘンのふりしたハードボイルド映画公式サイトを見ればわかるように、すみっコぐらしのキャラクターはどれも可愛らしい。 しかしながら、その容姿と裏腹に、この映画の感想を一言でまとめるなら、メルヘンの皮を被ったハードボイルド映画である。 物語を大きく分けると

      • VRCぽこ堂議事録:好きなキッチンアイテム発表ドラゴン

        古代ギリシャにおける哲学あるいは学問とは日々の労働から開放された特権階級のものであった。しかしながら、哲学の語源である「フィロソフィア」とは、「知を愛する」という意味である以上、仮にそれが実践的なものであろうと、それは知と呼びうるし研究の対象となりうるであろう。 ようするに、哲学カフェでキッチン用品の話が行われていたとしても、それは決してワールドの趣旨に反するものではないのである。 ということで具体的な内容はこちら。今回はキッチン用品である。 ■状況設定とスタンス都市部

        • カップ麺と人生の違いはどこか?ー時間の観念についての考察

          議題:人生と時間について 「ところで、いま何時ですか?時計を見ないで答えてください」 誰かが貴方にこう尋ねたとしよう。 おそらく、貴方と他の人では、多少の時間のズレが生じることだろう。 これは少々極端な例だが、時間に対する感覚は人によってズレがある。では、このズレは何によって生まれるのだろうか? 人の時間感覚に影響を与えるものを考えたとき、思いつくものとして年齢がある。例えば、「年を取ると一年はあっという間だ」とはよく言われるが、年齢を重ねると同じ体験をしても実際より時

        VRCぽこ堂議事メモ:そもそも「理解」ってなんだー他人を理解するとはどういうことか?

        • レビュー:『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』

        • VRCぽこ堂議事録:好きなキッチンアイテム発表ドラゴン

        • カップ麺と人生の違いはどこか?ー時間の観念についての考察

          VRC議事録:苦手な人との会話をどう乗り越える?ー会話と感情コントロールについて

          議題:苦手な人との会話をどう乗り越える?最近、VRChatではNAGiSAというワールドが話題である。 NAGiSAはそのインスタンスに入っている人をランダムでマッチング、5分単位で1ON1会話をセットする、というユニークなワールドだ。5分経過すると、自動的に次の相手とマッチングされる。つまり、知らない人と5分単位でずっと話していくことになる。 しかし、これはNAGiSAに限った話ではないが、人と会話をするとき、ほとんどの人とは楽しく会話ができたとしても、自分と合わないユ

          VRC議事録:苦手な人との会話をどう乗り越える?ー会話と感情コントロールについて

          VRCぽこ堂議事録:「良い人」であるという高利貸しー責任とその構造について

          議題責任。実にいやな言葉である。 人には負ってもらいたいが、自分では負いたくないものランキングがあるとすれば、おそらく「税金」と覇権を争うことになるワードだ。 しかも、ただでさえ負いたくないのに、しばしば「え、そこまで俺が責任持つんスか?!」という謎の責任のおかわりをくらうことがある。つらい。 しかしーー、残念ながら責任と税金と死からは逃げられまい。 ということで責任について議論を行った。 議論の内容をまとめると責任の前提にはなんらかの「約束」がある。 ただの労働の約

          VRCぽこ堂議事録:「良い人」であるという高利貸しー責任とその構造について

          VRCぽこ堂議事録:言葉にすると失われるものがあるー愛とその分類について

          議題: 愛とはなにか/それはカテゴライズできるか?哲学カフェのランダムトークテーマから、 「愛(隣人愛・家族愛など)について議論してみてはいかが?」 というお題が提示された。 なるほど、古来より愛は人にとって大きなテーマであり、様々な言い方で分類されている。では早速議論をーーと思ったとき、とある参加者から 「そもそも愛とは区別できるものなのか?しっくりこない」 という疑問が提示された。 ということで、  ・愛情とはなにか?  ・それはカテゴライズしうるか? について議論

          VRCぽこ堂議事録:言葉にすると失われるものがあるー愛とその分類について

          VRCぽこ堂議事録:偏っているのは誰かーソーシャルメディアと望ましい情報接触の形

          議題知らない街にあなたが降り立ったと仮定しよう。 お腹が空いたのでランチを食べようとおもった貴方は食べログを開き、口コミを見て良さそうな店に入るーーー何も変わった行動ではない。ただ、この行動様式は、新聞やTVしかない時代には考えられなかったことだ。 ソーシャルメディアの発達に従って、情報発信は確実に増えた。地方紙にさえ乗らないような飲食店の情報・口コミから、各種専門メディアでも報じきれない最新技術の専門的論文まで、あらゆる情報がそこにあふれる。 このように、ソーシャルメデ

          VRCぽこ堂議事録:偏っているのは誰かーソーシャルメディアと望ましい情報接触の形

          VRCぽこ堂議事録:恐怖とは欲求の形であるー恐怖について

          議題Wikipediaで「恐怖症の一覧」の項目を見たことがあるだろうか? ここにあるのは名称がついた特定の「恐怖症」だけだが、それでもあまりに多くの種類があることに驚かされる。 https://ja.wikipedia.org/wiki/恐怖症の一覧 このように、我々はそれぞれ恐怖を抱え、またホラー映画などでは同時に恐怖を楽しんでもいる。 ということで、恐怖とは何なのか?について議論を行った。 結論を一言でいうと恐怖とは我々の欲求(=何が望ましいと考えるか?)に根ざし、

          VRCぽこ堂議事録:恐怖とは欲求の形であるー恐怖について

          VRCぽこ堂議事録:まず質問の意味がわからないー確実性と真理の関係について

          議題「あなたには哲学的議論をしてもらいます」 といきなり言われたとしよう。 だいたいにおいて 「え?何話せばいいの?」 という状態になること必至である。普通の雑談だってトークサイコロを使うのに、哲学で、となれば無茶振りにもほどがある。 しかし心配は御無用。哲学議論インスタンスであるぽこ堂においては、きちんとお題箱的なものが設定されている。テーブルの上にあるサボテンを押すとトークテーマの案をランダムに表示してくれるのだ。 ということで出てきた案がこちらである 「あらゆる確

          VRCぽこ堂議事録:まず質問の意味がわからないー確実性と真理の関係について

          VRCぽこ堂議事録:市民、道徳は義務ですー個人は社会に対して自由か?我々は科学的か?

          議題: 個人は社会に対して自由か?我々は科学的か? 「市民、幸福は義務です」 これは、テーブルゲーム「パラノイア」における都市制御コンピューターの口癖だ。完璧なコンピューター様に支配された完璧な都市において、不幸な市民や完璧でない市民は「存在しようはずがない」 「万が一そんな不完全な市民がいたらどうするか」ですって? そんな疑問を覚えるあなたはもちろん反逆者です。おわかりですね? 大丈夫、次のあなた(クローン)はきっとうまくやるでしょう。 さて、もちろん、現実の世界に

          VRCぽこ堂議事録:市民、道徳は義務ですー個人は社会に対して自由か?我々は科学的か?

          VRCぽこ堂議事録:俺の右側に立つな―エスカレーターのマナーについての論考

          議題: エスカレーターのマナーはなぜ定着しないか?「俺の後ろに立つな」 これはさいとうたかを「ゴルゴ13」におけるデューク東郷(ゴルゴ13)の台詞である。世界的な殺し屋であるゴルゴは、高い技術と同時にその臆病なまでの慎重さで知られ、背後に誰かが立った場合、それがたとえ依頼人でもぶちのめす。 これはいささか特殊な事例が過ぎるとしても、立ち位置に関する話題として、エスカレーターに関するマナーが議題に上った。 エスカレーターでは、関東では左側(関西では右側だが、本稿では便宜上

          VRCぽこ堂議事録:俺の右側に立つな―エスカレーターのマナーについての論考

          ■VRCぽこ堂議事録:科学に罪はあるか?ー科学の中立性に関する議論

          議題:科学は本当に中立か?映画オッペンハイマーが話題だ。 劇中、原爆開発に携わったオッペンハイマーは、科学と倫理の間で葛藤し、水爆開発に反対する。このように、先端科学、特に生命科学や遺伝子科学などの領域では、  「科学にも踏み込んではいけない領域がある」  「科学は中立であり不可侵である」 といった意見対立が起きる。 では、科学とは善悪に対して中立・独立した存在なのか?それとも何らかの制約下におかれる存在なのか?この点について議論を行った。 結論を一言でいうと?科学は中立

          ■VRCぽこ堂議事録:科学に罪はあるか?ー科学の中立性に関する議論

          VRCぽこ堂議論メモ:科学は「地図のない道」をどう歩く?ー米ソ・ロケットエンジンの形状差から考える科学の発展

          議論の背景米ソのロケット開発競争が行われていた際、  ・米国型のエンジンは集約型(大型エンジンを少数積む)  ・ソ連型のエンジンはクラスター式(小さなエンジンを複数積む) と、異なる形式を採用していた。 現在、ロケットエンジンの主流は米国式の集約型である。 では、なぜソ連はクラスター型を採用したのか? この疑問には、技術的側面と科学の発展過程という2つの側面から回答が考えられる。当時の技術的背景については、別途コスモリアのLTで発表される予定であるが、本稿では、後者の科学

          VRCぽこ堂議論メモ:科学は「地図のない道」をどう歩く?ー米ソ・ロケットエンジンの形状差から考える科学の発展

          VRCぽこ堂議事録:ガチャは悪い文明か?-ソシャゲと推しビジネスの考察

          議題と背景悪い文明と名指しされるソーシャルゲームの課金(=ガチャ)について、 実際問題そんなに悪いのか検討した。 後半では、ソシャゲのビジネスモデルの特徴について発展的議論を行った。 結論を一言でいうと?・ソシャゲとはギャンブルではなく「ホストクラブ」である。 ・ガチャはソシャゲのスキームの走狗にすぎない。 議論詳細は以下。 ガチャは悪い文明か?:ソシャゲ課金の是非あまり好意的な文脈で語られないソーシャルゲームへの課金であるが、 そもそも課金行為は、通常の趣味への出費と

          VRCぽこ堂議事録:ガチャは悪い文明か?-ソシャゲと推しビジネスの考察

          VR Chatぽこ堂議論まとめ:対立する2つの議論スタイルについての論考(分解か?/拡散か?)

          背景人との会話をしていると話が噛み合っていないと感じるときがあると思う。お互いが真面目に相手の話を聞くつもりがある議論の場でも、しばしばそういったことが起きる。 ぽこ(芳紅)氏が開設しているVR chat内の哲学インスタンス「芳紅堂(ぽこどう)」では、日々様々な議論が行われているが、そちらでもこの点が話題に登り、話が噛み合わないことの背景として、  議論そのもののスタイル・方向性について違いがあるのでは? ということが議題にのぼった。 議論のスタイルは、個々人が無意識に選び

          VR Chatぽこ堂議論まとめ:対立する2つの議論スタイルについての論考(分解か?/拡散か?)