鮫島卓臣 / Takuomi Samejima

慶応義塾大学ラドヴィッチ研/イェール大学建築修士課程卒業/2019年度フルブライト奨学…

鮫島卓臣 / Takuomi Samejima

慶応義塾大学ラドヴィッチ研/イェール大学建築修士課程卒業/2019年度フルブライト奨学生/2022年よりニューヨークで建築デザイナーとして働いています。お仕事のご依頼はこちらまで: sametaro1995@gmail.com

マガジン

  • #建築 記事まとめ

    • 565本

    建築系の記事を収集してまとめるマガジン。主にハッシュタグ #建築 のついた記事などをチェックしています。

最近の記事

イタリア旅行記①:ルネサンス建築の本質

8月中旬からローマ、フィレンツェ、マントヴァ、ミラノを巡る約2週間のイタリア旅行に行ってきた。ヴェネチアには昔一度行ったことがあるが、これほど本格的にイタリアの各都市を巡る旅は初めてだ。 僕が通っていたイェール大学大学院のカリキュラムには、2年次の夏に1ヶ月間ローマに滞在する「ローマ研修」なるものがあるのだが、僕の代はコロナのためあいにく中止になってしまった。その苦い思い出を抱えたまま卒業して2年半、なぜか今年に入って古代ローマの浴場空間やルネサンス以降のドーム建築などを働

    • キンベル美術館に見るルイスカーン建築の魅力

      0. 建築の宝庫、ダラス-フォートワースを訪れる 5月の初めに休みをいただいたので、4日間だけテキサス州にあるダラスに行ってきた。ニューヨークから飛行機で4時間ほどの旅だったが、州を越えるとまるで違う国に来たような印象を受ける。共和党支持者が多いだけあって、東海岸ではなかなか見ない「Make America Great Again」のバナーをよく見るし、テキサス州自体完全な車社会なので、ダラスのダウンタウンと言えども歩行者はほとんどおらずとにかく閑散としている。人で溢れて賑わ

      • 形態分析④:ラファエロの〈手法〉とマニエリスムの夜明け

        0. 後期ルネサンスとマニエリスムまた長らくこの形態分析シリーズから遠ざかってしまったが、いよいよ今回から後期ルネサンスにおける「マニエリスム」という現代建築を考える上でもとても重要な様式の分析に入っていく。今回は盛期ルネサンスから後期ルネサンスへの移行を考える上でとても重要な画家・建築家、ラファエロに焦点を当てるが、その前にマニエリスムという様式の簡単な概説と、その土台となるこれまでの分析の総括をしておきたい。 マニエリスムとはイタリア語で「手法」を意味する「マニエラ」を

        • 形態分析②:アルベルティによる概念としての〈建築〉の自律

          0. レオン・バティスタ・アルベルティ新年最初の記事は、ルネサンス期の建築を語る上で最も重要な人物の一人と言っても過言では無い、レオン・バティスタ・アルベルティ(1404-1472)について書いてみようと思う。建築に限らず数学・法律・絵画・彫刻・詩、さらには運動にも長けていたという、いわゆる「なんでもできちゃう人」だったアルベルティは、後述する「建築十書(De re aedificatoria)」という著作において、ルネサンス期の包括的な建築理論を確立した人物として知られてい

        イタリア旅行記①:ルネサンス建築の本質

        マガジン

        • #建築 記事まとめ
          565本

        記事

          形態分析③:ブラマンテの有機体とレトリック

          0.ドナト・ブラマンテ久しぶりにnoteを更新する今回は、ルネサンスの建築家ドナト・ブラマンテ(1444-1514)について書いてみようと思う。メニカンでのトークが決まったおかげで、形態分析の授業を一通りおさらいする口実ができ、ようやく止まっていたシリーズが書けそうというわけである。当初ブラマンテはトークに入れていたのだが、残念ながら時間と内容の関係で外さなければいけなくなったので、当日紹介するアルベルティに先んじてnoteで更新しておこうと思った次第である。個人的にブラマン

          形態分析③:ブラマンテの有機体とレトリック

          生き物のための建築

          1. Every Living Beings最近長らく遠ざかっていた「生き物のための建築」というテーマについて自然と考える時間が増えてきた。きっかけは、2学期のスタジオが始まって最初の課題で、マークフォスターゲージ(MFG)に課せられた「建築をやるモチベーション、どういうものを作りたいのかウケ狙いの嘘なく正直に答えろ」というエクササイズの時だ。その時に僕はポロッと "I want to make an Architecture that has room for every

          生き物のための建築

          虫を探したくなるような建築

          1. マークフォスターゲージの建築最近マークフォスターゲージの建築と彼が言っていることにすごく興味があり、色々考えさせられている。マークフォスターゲージとは、僕の通うイェール大学建築学科の卒業生でニューヨークを拠点に活動する若手建築家の一人だ。現在は准教授としてイェールで教壇にも立っており、生徒の間では親しみを込めてMFGなどとも呼ばれている(なので以下MFGとする)。 彼の作品は基本的にオブジェクト指向存在論(Object Oriented Ontology:以下OOO)

          虫を探したくなるような建築

          形態分析①:ブルネレスキに見る主体と客体の分裂

          0. 建築とアーキテクチャ長らくnoteを放置してしまったが、セメスターも終わり、一ヶ月以上も在宅してるとそろそろやる事も無くなってきたので、今日から復習の意味も込めてピーターアイゼンマンの形態分析(Formal Analysis)の授業で学んだ事や、そこから僕が考えた事などについて少しずつ紹介していきたいと思う。まずは世界最初の建築家とも言われているブルネレスキの建物の分析を紹介しようと思うのだが、その前にこの授業で僕が最も痛感したと言うか、目から鱗だった気づき「建築とアー

          形態分析①:ブルネレスキに見る主体と客体の分裂

          イェール大学建築学科(YSoA)について

          0. はじめに昨年9月からアメリカの建築修士課程での留学を始めて、早いもので半年近くが経った。英語のみの環境に身を置いて、常々どこかで日本語をせめて「書かなきゃ」まずいと思いnoteのアカウントを作ってはみたものの、なかなか重い腰が上がらず、箇条書きの下書きを貯め続ける日々を送ってきた。いよいよ一稿投稿できそうなわけだが、noteを始めようと思ったもう一つの大きな理由として、アメリカの建築教育、もっと正確に言えば私の通うイェール大学建築学科(通称:YSoA)の教育やカリキュラ

          イェール大学建築学科(YSoA)について