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戦略プロフェッショナル⑤:経営者に必要なのは「〇〇系と〇〇系のバランス」

読書ノート(170日目)
昨日に続き三枝匡さんの四部作の一冊目「戦略プロフェッショナル」
紹介したいと思います。

最後は「戦略プロフェッショナル(戦略経営者)とは?」についてです。

(本書の内容の振り返り)

本書は三枝匡さんが実際に事業再生をされた実話に基づいた物語で、主人公の名前は「黒岩莞太」となっており、三枝さんが32歳に経験された話です。

(ここまでのストーリーの概要)
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黒岩莞太は病院の検査薬などを販売するプロテック社の事業責任者で、業界トップにはドイツ化学という強力なライバル会社がいる。今回、プロテック社は病院側が従来の検査方法より短時間かつ低コストで検査が可能となる、画期的な検査機械の新製品をドイツ化学よりも早いタイミングで手にしたという、千載一遇のチャンスのなか、シェア逆転を目指している。

検査薬ビジネスは、一つの病院の検査ごとに1社だけと取引するという特徴があり、勝者総取りのオール・オア・ナッシングの世界。
つまり、一度契約を結ぶことができれば数年間は他社への乗り換えはない。
(複数社の検査薬を使うと、検査結果がブレてしまうため)

そして、黒岩たちが手にした画期的な新製品は、数カ月後にはライバルのドイツ化学も手に入れる可能性が高く、この数カ月間が勝負時である。

黒岩たちは日本全国に1000カ所以上ある病院に対し、営業部隊が最優先で攻めるべき病院をセグメンテーション戦略によって導き出した。
病院のベッド数が500床以上と多く、現在ドイツ化学のユーザーを最優先として、営業部隊は一斉に動き出した。
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事業の詳細や、黒岩莞太の戦略プロフェッショナルとしての考えや背景は、こちらのnoteにもう少し詳しく整理しましたので、もしお時間があればこちらもどうぞ。


それでは今回は著者の三枝匡さんが考える
「戦略プロフェッショナル(戦略経営者)とは?」についてです。

…と、その前にセグメンテーション戦略のその後の結果について紹介です。

・シェア逆転に向けて

・セグメンテーション戦略で導き出した優先度にもとづき、
 営業部隊が一斉に売り込みを図った
・結果として、画期的な検査機械である新製品ジュピターの販売台数は
 前年の9台に対し、148台の販売と大幅に増えた

・短時間で正確な検査を可能とする新製品ジュピターを導入した病院は、
 検査回数が3割増になるという現象も起きていた
 これは高性能のコピー機を納入したら、以前よりもコピー用紙の消費量が
 増えるのと似た現象であった

・今回対象としている検査薬の販売シェアは、
 黒岩が率いるプロテック社が53%、ドイツ化学は42%とシェアを逆転
 かつてのプロテック社は20%しかシェアがなかったなか、
 まぎれもない大躍進であった

ここまでは非常に鮮やかな勝利を飾っていますが、
その後日談が本書の最終章にかけて書かれています。

・黒岩莞太の経営者としての初挑戦を振り返る

・黒岩は約5年間在籍した会社を去ることを決める
・後に黒岩自身が反省することになるのは、戦略系と人間系のバランス
・黒岩は「戦略偏重」「戦略先行」の経営をやりすぎていたことに気付く
・「戦略系」は決定的に重要だが、「人間系」も同じくらいに重要
・黒岩は強気に改革を進めすぎるあまり、気遣いが十分ではなく
 社内で次第に孤立をしていく

・黒岩が学んだ三つの教訓

・改革の時間軸
 改革が過度に短期決戦にならないように気を配り、
 皆の精神的緊張や労働負担が、許される上限を超えないようにする。
 もし過度な緊張状態が生じている様相が出てきたら、
 改革のペースを落とすこと。それは経営者にしかできない意思決定。

・平行改革のバランス制御
 社内で改革プロジェクトを一度に何本も並行して行わないこと。
 まず、組織の中で従来モードで安定して動かす部分をはっきりさせ、
 その部分には手をつけない。言い換えると、重要テーマで頑張らなければ
 ならない人々が不安定な心理に見舞われる組織範囲をその時々で限定。
 そして、同じ人たちに立て続けに改革の負担を負わせない。

・個人の適性
 社員はそれぞれ適性や志向の違いがある。
 だから全員に一律に高い目標や役割を課すことは避ける。
 個人に対し、個人能力と適性に見合った役回りを設定することに
 もっと配慮すること。

・この三つは当たり前すぎるくらいであるが、絶対に後が無い改革で、
 これら三つの原則をどの程度押したり引いたりするかの判断は難しい
・戦略プロフェッショナルとして「人間論」ばかりを優先する訳にはいかず
 明快な「戦略論」と抱き合わせて、ギリギリの判断に毎日迫られる

・抜本改革の時間軸は二年

・社員が改革の死の谷を越えていく気力と緊張感を保つには限りがある
 社員が過度に疲れてしまうと、社内の政治性が増幅を始めてしまう
・一人の社員が緊張感を持って頑張れる改革は、どんなに長くても二年。
 テーマごとに、その時間軸でケリをつけなければならない

・実戦的「戦略プロフェッショナル」の条件

(1)トップとして、強いリーダーシップを発揮する「覚悟」があること。
 その目標がなぜ達成されなければならないかを部下に説明し、士気を鼓舞
 し、創意工夫を促し「共に考え、共に戦う気概」を見せなければならない
(2)新しい戦略を考え出す「作業手順をマスター」していること。
 作業のステップごとに、どんな選択肢があるのかきちんとチェックし、
 責任者として、その都度、意思決定をしていく。それを詰めていく
 「緻密さ」を持っていること
(3)誰もやったことのない新しい戦略を実行に移そうというのだから、
 多少のリスクは気にせず、また何があっても
 「夜はグーグーとよく眠れる」性格であること

本書の中では、さまざまな視点から「戦略プロフェッショナルとは何か?」
と紹介されていますが、改めて整理すると上記の内容と言えそうです。

三枝匡さんはその後も戦略プロフェッショナルとして活躍されるのですが、四部作のうちの二冊目「V字回復の経営」では、今回の気付きであった、
戦略系と人間系のバランスを兼ね備えた経営者として、長期にわたって赤字だった子会社を、たった二年で黒字化させる改革を成功させるという、一層の大活躍を果たしています。

「V字回復の経営」は本書と同じくらい、
(いや、それ以上にも)さらに読み応えがありますので
気になった方はぜひ読んでいただけると嬉しいです!

次回の読書ノートは、この三年間、年末年始休暇の課題図書としている
「BCGが読む経営の論点2025」「大前研一 日本の論点2025-26」
紹介していく予定です。

ということで、ここまで読んでくださった方々、
全5回にわたって読んでくださった方々、本当にありがとうございました!

皆さんも良い週末をお過ごしください~!✨
それではまたー!😉✨


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