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2023/10/18

2023/10/18  夜中、子どもがうまく眠れなかったようだ。眠れないのが悔しいのか、わあわあと騒いでいたから寝た気がしなかったが、子どもは泣くのが仕事。あるいは「魔の三カ月」がやってきたのかもしれない。  二度寝をしてから、近所の公園をランニング。毎回1周ずつ増やしている。今日は公園を5周した。そのまま公園を出て、近所の「かみかわ珈琲焙煎所」へ。前から気になっていたが、はじめて入ることができた。シングルオリジンのテイクアウトをおすすめされたので、グァテマラを注文。ランニ

    • 8/22〜8/28の振り返り

      転職してから1ヶ月。大型店に勤めていたときと売れ方がまったく違うが、少しずつ慣れてきた。 ビジネス書がとにかく売れない。世間で売れるものが当店では平積みにしてもほとんど反応がない。面陳が約20点、平積みも20点では少し多すぎるかもしれない。差しを多めにして、アイテム数の充実を図った方がいいのかもしれない。とりあえずPOPをいくつかつけて、その反応も見てみたい。 この日は、中村天風のハードカバーが2冊売れた。40代くらいのサラリーマン。こういう本もちゃんと売れるんだ、と少しホ

      • 読書随想【2022/5】

        『オスカー・ワイルド』 宮崎かすみ/中公新書 この本を買ったのは、石川県立美術館で開催されていた「ビアズリーと日本」という展覧会でのことだった。それが2016年だから、およそ6年もの間積読していたことになる。 なぜようやく読む気になったのかといえば、以前に読んだ『ダンディズム』(山田勝/NHKブックス)がとてもおもしろかったからだ。時は19世紀、「無教養な成り上がり者」としてブルジョワが社会的地位を高める一方で、没落してゆく貴族やジェントリーたちの一部はそうした社会の流れ

        • 『近代日本の文学史』伊藤整

           夏葉社の本は良い。良いからこそ、飛ぶように売れることはない。長い時間をかけて版を重ねていく。出版不況といわれるいま、出版点数だけが増えていく自転車操業の出版社が多いなかで稀有な存在だ。  文学史を勉強したいと思い、何か良い本はないかと探していたところ、編集者の友人に勧めていただいたのが本書だった。本書も例に漏れず、じわじわと版を重ねているようだ。2012年の刊行から約10年が経って3刷。書店員という身としては、こういう本を大事にしていきたいと切に思う。  全体を通して、

          『激動 日本左翼史』 池上彰/佐藤優

           今年は日本共産党が結党されてから100年、あさま山荘事件から50年という節目の年である。  イデオロギー(思想)はなぜ人間・組織を狂わせてしまうのか。戦後左翼の道のりをたどりながら、この普遍的とも言える問題について考えようというのが本書の目的だ。  池上さんのこれまでのイメージーーテレビ番組では私見をあまり交えずに、ニュースを解説している場面が多い。とくに私にとってはNHKの「こどもニュース」の印象が強いーーからすると、戦後左翼というある意味で危ういテーマについて語ろうとす

          『激動 日本左翼史』 池上彰/佐藤優

          『”深読み”の技法』小池陽慈

           「技法」とタイトルに銘打たれているが、本書で紹介されるそれはいわゆる「テクニック」ーーそれさえ身につければ誰でも同じような結果を得ることができるーーとはまったく違うものである。 近年、効率性や合理性を過度に重んじる風潮のなか、そうした影響は読書にも及び、なんというか、”情報処理”的な読みーーサッと目を通して、必要な情報だけを効率的に拾い集める、という読み方を推奨するような言説がより幅を利かせてきたという印象を受ける(「はじめに」より)  「文章の背後に広がる世界をデ

          『”深読み”の技法』小池陽慈

          『いつもの言葉を哲学する』古田徹也

           帯の文章だけを見ると、コロナ禍における言葉の氾濫や政治家の詭弁について書かれたものかと思われるかもしれない。それはもちろんそうなのだが、私が一番おもしろく読んだのは本書の第1章だった。この章では、著者と娘さんのエピソードが頻繁に紹介されている。  娘が五歳になった頃、唐突に、「お父さんは誰のお腹から生まれたの?」と尋ねられた。 「お父さんのお母さん。福岡のおばあちゃんだね」 「じゃあ、おばあちゃんは誰から?」 「おばあちゃんのお母さん。ひいおばあちゃん」 「じゃあ、ひ

          『いつもの言葉を哲学する』古田徹也

          『小林秀雄の「人生」論』 浜崎洋介

           小林秀雄との出会いは高校生の頃。現代文の教科書に載っていた「無常といふ事」を読んだのが初めてだった。当時は小林の魅力をよく理解できず気にも留めなかったが、大学生の頃に何を思ったのか『小林秀雄全作品』を少しずつ読み始め、今ではもっとも尊敬している批評家だ。迷ったときは、必ず小林の文章に立ち返ることにしている。  本書はまさに、小林を「生きる指針を与えてくれる最高の知性」として描いている。そして、小林自身もまた、批評活動を通してみずからの生きる指針を求めた。浮ついた観念ではな

          『小林秀雄の「人生」論』 浜崎洋介

          【読書感想】『ネガティブ・ケイパビリティ』

           2022年の1冊目は『ネガティブ・ケイパビリティ』(帚木蓬生/朝日新聞出版)でした。  著者の帚木蓬生さんは精神科医であり、作家としても活躍されています。山本周五郎賞など、数多くの文学賞を受賞されているようです。刊行されたのは2017年ですが、コロナ禍で注目を浴びてから14刷(2021年10月)まで部数を重ねています。帯には以下のような文言が。 コロナの災禍の時代に早急な結論、過激な意見に飛びつかず、「急がず、焦らず、耐えていく」力=ネガティブ・ケイパビリティが必要です

          【読書感想】『ネガティブ・ケイパビリティ』