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『”深読み”の技法』小池陽慈

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 「技法」とタイトルに銘打たれているが、本書で紹介されるそれはいわゆる「テクニック」ーーそれさえ身につければ誰でも同じような結果を得ることができるーーとはまったく違うものである。

近年、効率性や合理性を過度に重んじる風潮のなか、そうした影響は読書にも及び、なんというか、”情報処理”的な読みーーサッと目を通して、必要な情報だけを効率的に拾い集める、という読み方を推奨するような言説がより幅を利かせてきたという印象を受ける(「はじめに」より)

 「文章の背後に広がる世界をディープに味わう」と帯にもあるとおり、背景となる知識を押さえておけば、読むという行為はこんなにも楽しくなるということをとても丁寧に説いた一冊だ。この点だけでもかなり価値があるとおもう。評論だけでなく小説を読む場合においても、予備知識の有無が読書体験を左右するのだが、これに気づいている人は意外と少ないのではないだろうか。
 ちなみに記号論、テクスト論、脱構築批評なども紹介されているが、噛み砕いて説明してくれるのでとても読みやすい。さすが塾講師。中高生におすすめしたい本があるかと聞かれたら、まっさきに本書を推薦したい。

 そして、本書を刊行している笠間書院という出版社がおもしろいので、他の出版物もぜひチェックしてほしい。ここ最近、個人的に気になっている出版社の一つだ。

#4冊目

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