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小説・シナリオ集

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脚本家・作家矢野堅太郎(凄乃剣太郎)の小説・脚本を掲載する。連載小説や連続ドラマのシナリオを隔週を予定して発表、購読していただければ。
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2024年12月の記事一覧

高等遊民のための映画鑑賞法

高等遊民のための映画鑑賞法

映画は誰のためのものか

映画とは何だったのか。かつてそれは大衆のための娯楽であり、芸術であり、社会を映す鏡だった。誰もが映画館に集い、笑い、泣き、怒り、感動を共有することができた。それは特別な体験であり、生活の中の大切な一部でもあった。

しかし、現代の映画を見渡すと、その役割が大きく変質しているように感じる。NetflixやAmazon Prime Videoなどの配信サービスが映画館の代替と

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負け犬の処方箋

負け犬の処方箋

 負け犬とは何か

負け犬。その響きには、敗北者や落伍者を指す冷たさがある。この言葉を浴びせられるとき、人は「失敗者」の烙印を押される。そしてその「臭い」は、どれほど努力しても消えないものとして扱われる。負け犬には牙がない。それどころか、噛みつくための犬歯さえどろどろに溶け、誰にも抵抗できない弱さを象徴する存在だ。

負け犬の臭いは強烈だ。社会の中で「勝ち組」と呼ばれる人々から見れば、その臭いは不

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なにもしない苦痛

なにもしない苦痛

突然の空白が生む苦痛

ある日、予期せぬイレギュラーが私たちの生活を襲う。それはアクシデントかもしれないし、職場の方針転換、あるいは個人的な事情によるものかもしれない。これまで描いていた仕事の展望が突然消え去り、実際にやっていた仕事さえもなくなったとき、人は深い無力感に包まれる。

「なにもしない時間」が突きつける現実は予想以上に苦しいものだ。忙しい日々に追われていた頃には、何もせずに休める時間を

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情報に呑まれる 流行には最後尾で追い付け!

情報に呑まれる 流行には最後尾で追い付け!

情報が溢れる時代に生きる私たち

私たちは情報の洪水の中で生きている。朝起きた瞬間からスマートフォンを手にし、SNSをスクロールしてニュースや友人の投稿を眺める。仕事や通勤の合間にはイヤホンを耳に入れ、音楽やポッドキャストを聞く。帰宅してからも、テレビや動画配信サービスで映像を楽しむ。これらすべてが、意識的であれ無意識的であれ、私たちの脳に膨大な情報を注ぎ込んでいる。

しかし、この情報量はもはや

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自転車操業から降りられない人たち

自転車操業から降りられない人たち

自転車操業に囚われる若者たち

仕事に追われ、毎日を自転車操業のように過ごしている若者は少なくない。生活費を稼ぐために長時間労働を続けながら、夢やキャリアを追いかける日々。そこには「今の仕事を辞めると次がない」「ここで踏ん張らないと夢を叶えられない」という強い思い込みがある。しかし、そのような先入観が、実は若者を搾取する構造の中に閉じ込めていることに気づく人は少ない。

年配者が若者を「小間使い」

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創作と肉体労働 書く時間がない!

創作と肉体労働 書く時間がない!

創作と肉体労働の現実「書く時間がない!」と叫びたくなる日々がある。朝から晩まで肉体労働に追われ、帰宅する頃には疲労困憊。頭の中では次々と物語のアイデアが浮かぶのに、それを形にする時間も体力も残っていない。そんな状況を経験したことがある人も多いのではないだろうか。

肉体労働は特に、創作に向き合う時間を奪う。長時間の労働で体力が削られるだけでなく、単調な作業の繰り返しによって、想像力や創作意欲も失わ

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創作と商売の食い合わせの悪さとそれでも生きていく方法

創作と商売の食い合わせの悪さとそれでも生きていく方法

創作と商売の矛盾

創作と商売。この2つはしばしば「水と油」のように例えられる。それもそのはず、創作は個人の感情や想像力から生まれる自由な行為であり、商売は顧客ニーズに応えることで成立する現実的な活動だからだ。この対立構造の中で、創作者は自分の作品を「売るための商品」に変えることを求められる。そこには喜びもあるが、しばしば葛藤や苦しみも伴う。

たとえば、小説家は自分が書きたいテーマだけでは食べて

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創作の敷居を下げよう

創作の敷居を下げよう

「創作は特別な才能を持つ人のものだ」という神話が、長い間、私たちの創作観を支配してきた。しかし、その「特別な才能」とは本当に何なのだろうか?それは生まれつきの能力だろうか、それとも特定の環境で育まれたものだろうか。

現実を見れば、創作の世界には明確な偏りが存在している。実家が裕福だったり、有名人の二世だったりする人々が、クリエイターとして台頭しやすい傾向がある。これは、創作に必要な資金や時間、環

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 脳の使い道 最近自分で文章考えてる?

脳の使い道 最近自分で文章考えてる?

最近、自分で文章を書いているだろうか?日記でも、メールでも、何かしらの形で自分の言葉を紡いでいるだろうか?スマートフォン一つで情報が手に入り、AIが文章を作る時代に、私たちは「自分で考える」という行為を忘れかけているのではないだろうか。

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継続は力なりとはいうけれど

「継続は力なり」。この言葉を初めて聞いたのは、いつだったのだろう。子どもの頃、学校の先生が何かを諭すように言ったのかもしれないし、家族が日常の中で口にしたのかもしれない。身近な言葉ではあるものの、実際に何かを続ける中で、この言葉の意味を深く理解することは案外難しい。

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寿命と天命といのちの線引き

「寿命」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。それは、一つのいのちが自然に終わるまでの時間であり、「人間がコントロールできないもの」の象徴と考えられることも多い。一方で、「天命」という言葉は、いのちの長さではなく、その質や目的、役割に焦点を当てて語られる。これらに加えて、「いのちの線引き」という問いが生じるのは、生と死、価値と無価値の境界をどう決めるのかという難しいテーマがあるからだ。

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シングルタスクの禍福

シングルタスクの禍福

「一度にいろんなことをやれるようになりたい」――その思いを抱いたことは何度もある。周囲を見渡せば、同時に複数のことを器用にこなしていく人がいる中で、自分はどうしても「一つずつ」しか進められない。それが私自身の特徴なのだと気づいたのは、比較的最近のことだ。

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