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小説

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明青高校シリーズ以外の小説
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#私の作品紹介

私立諸越学園芸能科 特別編(前編)

私立諸越学園芸能科 特別編(前編)

※この作品は2012年に執筆されたものです。

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特別編(前編) 谷村さんの憂鬱

 谷村さんは、人気お笑い芸人である。
 しかし、残念なことに鬱を患ってしまったので、現在は自宅療養中なのである。

「しかし、仕事はやりたくないけど、ごっつ暇やな~。誰か来えへんやろか。全然、誰も来えへん! 薄情なヤツらばっかりやわ~」

 谷村さんに、友達はいなかった。
 テレビの中ではいつもハイ

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創作小説・君は素敵だ 1

創作小説・君は素敵だ 1

 2024年、約10年ぶりに創作活動を再開し、最初に書かれた作品です。現在、未完で後半部は落ち着いたら執筆したいですね。やってみたら意外にも、昔のテンションのまま文章が書けたのには自分でも驚きでした。

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 君は素敵だ。
 いつの日か、こんな台詞を誰かに送りたいと思っていた。しかし、その願いは叶うことなく、年月だけが過ぎ去り、僕は腹の出た中年のおっさんになっていた。絶望的

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創作小説・鳥の唄ー歌えない歌姫ー第2話

創作小説・鳥の唄ー歌えない歌姫ー第2話

※2012年に執筆された作品です

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 俺が初めて森野美鳥と出会ったのは、今から2年前の9月1日のことだった。東京駅地下、銀の鈴広場の前でただひとり呆けた顔で例の巨大な鈴を見上げていた少女。それが、森野美鳥だった。

「よう。東京に来るのは初めてか? そんなに、その鈴が面白いか?」

 俺は、動物園のパンダでも見るかのようにオブジェの鈴を見る美鳥の姿が面白くて、自己紹介するのも忘れ

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創作小説・CHIKUWA IS DEAD !?ーのぐそドリルと人間失格ー

創作小説・CHIKUWA IS DEAD !?ーのぐそドリルと人間失格ー

#私の作品紹介

0 風に吹かれても

「くるりんぱ!」

 放り投げられた帽子は、彼の頭の上でくるくると回り、まるで魔法のように、元あった場所へと収まるのだった。
 そのとき彼が見せてくれた、はにかむような笑顔を、わたしはけして忘れることはないだろう。
 あの、優しくて、温かくて、少し悲しそうな笑顔は、わたしに何を伝えたかったのだろうか。

 彼がこの世界からいなくなった今も、わたしはときどき思

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初投稿 即興小説・9月1日、アイスクリーム、彼女は転校した

初投稿 即興小説・9月1日、アイスクリーム、彼女は転校した

9月1日、アイスクリーム、彼女は転校した

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 夏休みが終わり、久々に学校に行くために乗りたくも無い電車に乗る。取り立てて、たいした思い出もない夏休みだったが、これからまた学校が始まると思うと憂鬱になる。友人の彰彦は、休みがずっと続くと不安になるから学校早く始まんねーかなと言っていたが、僕にはまったく理解できない理由であった。休みが続くなら、それに越したことはない。勉強は面倒臭いし、体育の時間

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即興小説・晴野雨音はこもりがち1

即興小説・晴野雨音はこもりがち1

 晴野雨音[はるの あまね]は雨女である。
 遠足、運動会、修学旅行、その他もろもろのイベントごとが行われるたび、雨が降るのである。小学生の頃、運動会のたびになぜか毎回雨が降るのを疑問に思った雨音は、5年生の運動会の朝、「おなかが痛い、とにかく痛い、めっぽう痛い」と母親に訴え、学校を休んだのである。いつもおとなしい娘が、気のふれたように腹の痛みを訴えるので、母親は驚いた。盲腸だろうか、はっ、もしや

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即興小説 晴野雨音はこもりがち 第2話 暈原真守は呼び出され

即興小説 晴野雨音はこもりがち 第2話 暈原真守は呼び出され

 暈原真守[かさはら まもる]は傘屋の息子である。いや、正確には傘屋というよりかは雨具全般を扱っているのだが。彼の父、暈原太蔵[たいぞう]は大学卒業後に大手アパレルメーカーに新卒で入社、トップ営業マンとして活躍し、26歳でやはり大手デパートの受付嬢であった麻由理[まゆり]と結婚。息子の真守の誕生を機に独立。「俺の名前、暈原[かさはら]っていうから、やっぱ傘をメインにしたメーカー立ち上げたかったんす

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即興小説 晴野雨音はこもりがち 第3話 神凪律子は企てる(前)

即興小説 晴野雨音はこもりがち 第3話 神凪律子は企てる(前)

 神凪律子[かみなぎ りつこ]は中学教師である。昨年度まで夜職だったのだが、大学で教員免許を取得していた事もあり、今年度から教師となった。律子の家は裕福ではなかったが、赤子の頃から出会った誰もが褒め称えるような美貌を持ち、さらに優れた頭脳と運動神経を備えた彼女は短大に合格後、なぜか銀座の高級クラブで働き始めた。学生時代、その人並外れた容姿は学区外にまで噂になり、その噂を聞き付けたいくつかの芸能事務

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創作小説・私立諸越学園芸能科 第0話

創作小説・私立諸越学園芸能科 第0話

2012年に執筆された作品で未完のまま更新停止した作品ですが、実験的にnoteにあげてみます。落ち着いたら、続きを執筆したい気持ちはあります。

第0話  わたしは見てる。あなたを見てる。

 僕は今まで、自分の人生を親の敷いたレールに従って進んでいると思っていた。

 だけど、それは違う。

 僕は、君に呼ばれたんだ。

 いつの頃だか、はっきりと思い出せない昔の記憶。

 携帯ゲーム機の小さな

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創作小説・私立諸越学園芸能科 第1話

創作小説・私立諸越学園芸能科 第1話

第1話 タレント名鑑に名前がないタレント、それが僕だ

 インターネット時代の今、「あるある」なことは? と、質問されたらあなたはどんな答えを想像するだろうか?

 検索サイト、ないしは検索窓を初めて利用したときのことを考えてほしい。最初の目的である単語を検索し終え、次にいくつかの気になる単語も調べ、さて次は何を調べようかと思ったあなたは、ふとこんな事を思いついたのではないか。

 「私自身の名前

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創作小説・鳥の唄ー歌えない歌姫ー

創作小説・鳥の唄ー歌えない歌姫ー

 2012年執筆の未完作品です。実験的にnoteでも掲載してみます。文体のテンションのバランスなどは、自分の作品の中でも安定しているので、好きな作品です。いずれ完結まで執筆できたらとかんがえています。

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 「なんだ、ありゃ」

 その男は、自分の見た物が信じられないといった様子で目を擦った。

 男は、春先になるといつも自宅のベランダに双眼鏡を持って立つ。ここからは、渡

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