医師の共感的理解は,慢性腰痛のアウトカムに影響
📖 文献情報 と 抄録和訳
医師の共感と慢性疼痛の転帰
[背景・目的] 共感は患者-医師関係の一側面であり、慢性疼痛患者において特に重要であると考えられる。目的:慢性腰痛患者において、医師の共感と疼痛、機能、および健康関連QOL(HRQOL)との関連を測定すること。
[方法] デザイン、設定、参加者 このコホート研究は、Pain Registry for Epidemiological, Clinical, and Interventional StudiesおよびInnovation national pain research registryの成人登録者を対象とした。研究期間は2016年4月1日から2023年7月25日までで、追跡期間は12ヵ月までとした。曝露:医師の共感性は、相談・関係的共感性尺度を用いて評価し、非常に共感的な医師群とやや共感的な医師群に二分した。
主な転帰と測定法:主な転帰は、患者報告による疼痛、機能、およびHRQOLであり、腰痛の強さについては数値評価尺度で、腰に関連した障害についてはローランド・モリス障害質問票(Roland-Morris Disability Questionnaire)で、不安、抑うつ、疲労、睡眠障害、疼痛干渉に関連したHRQOL障害については患者報告転帰測定情報システム(Patient-Reported Outcomes Measurement Information System)で測定した。データは登録から12ヵ月後まで四半期ごとに5回収集され、時間的傾向を測定し、ベースラインおよび経時的共変量を調整するための多変量モデルを含む一般化推定方程式を用いて解析された。
[結果] 1470例の患者の平均(SD)年齢は53.1(13.2)歳で、1093例(74.4%)が女性であった。多変量解析により、医師の共感度が高いほど、疼痛強度(β = -0.014; 95%CI、-0.022~-0.006; P < 0.001)、腰背部に関連した障害(β = -0.062; 95%CI、-0.085~-0.040; P < 0.001)、および各測定におけるHRQOL障害(例えば、疼痛干渉:β = -0.080; 95%CI、-0.111~-0.049; P < 0.001)と逆相関することが示された。
これに対応して、わずかに共感的な医師群と比較して、非常に共感的な医師群は、平均疼痛強度が低い(6.3;95%CI、6.1-6.5 vs 6.7;95%CI、6.5-6.9;P < . 001)、背中に関連した障害の平均がより少なく(14.9;95%CI、14.2-15.6 vs 16.8;95%CI、16.0-17.6;P<0.001)、各測定におけるHRQOLの欠損がより少なかった(例えば、疲労:57.3;95%CI、56.1-58.5 vs 60.4;95%CI、59.0-61.7;P<0.001)。
すべての医師による共感群間差は臨床的に適切であり、Cohen d統計量は疼痛強度で0.21、背部関連障害、疲労、疼痛干渉で0.30であった。医師による共感は、非薬物療法、オピオイド療法、および腰椎手術よりも良好な転帰と関連していた。
[結論] 慢性疼痛を有する成人患者を対象としたこのコホート研究において、医師による共感は12ヵ月間の転帰の改善と関連していた。医師の共感性を育成し改善するための一層の努力が正当化されるようである。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
以前に、ラポール(治療同盟)を形成するためには『共感的配慮』が重要であることを学んだ。
これは、あくまでも治療における協力関係、心の結びつきが得られるという結論だった。
だが、今回の研究は違う。
共感的理解、共感的配慮が、治療アウトカム自体に影響する!、というより強い結論が得られた。
しかも、その効力は『医師による共感は、非薬物療法、オピオイド療法、および腰椎手術よりも良好な転帰と関連』というほど。
共感的理解は、もはやそれ単独で治療とさえ言えるほどに、重要なものかもしれない。
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