学級係 (1分ショートショート)
「新しい学年、小学3年生が始まったばかりですが、このクラスの青木先生が、急きょ、入院されることになりました」
ざわつく児童たち。
「退院されるまで、私が担任を引き継ぎます。原西小百合と言います。よろしくお願いします」
私が頭を下げると、まばらな拍手が飛んだ。
「慣れないうちは、学級係のみんなに、助けてもらいたいと思っています」
すると、目の前に座っていた女子児童がメモをくれた。
「あたし、書き物係です」
ありがとう、可愛らしい字を書くのね。
メモを読み上げる。
「学級委員長の吉田正一くん、よろしくね」
後ろの席から声がした。
「吉田瑛太です」
私は、正一に、打ち消し線を引き、その上に瑛太と書いた。
「間違えてごめんなさい。風紀係の野沢一くんは、どこに座ってる?」
窓際席の男子児童が、手をあげた。
「野沢拓海です」
「のざわはじめ、ではなくて?」
「のざわたくみ、です」
再び、打ち消し線を引く。
「ごめんなさい。では、生き物係の大村正くん」
「大村結菜だよ」
クスクスと、笑い声が聞こえてきた。
私は、書き物係にメモを見せた。
「投票数を書いてるの?」