出棺 (1分ショートショート)
出棺の時、自分だったら、棺桶に何を入れてほしいか。
大往生だった親父が、荼毘に伏している間、食事をしながら、親族でそんな会話になった。
「オレは、タバコを敷き詰めてほしい」
長男が言った。
「1000本ぐらい入れてやるよ」「さすが、ヘビースモーカー」
皆が突っ込んだ。
「俺は、さつま芋」
次男が言った。
焼き芋か、のどかだな。
「お前は?」
長男と次男が、三男に聞いた。
「花がいい。普通に見送ってもらいたい」
面白くも、なんともない奴だ。
その時、職員が部屋に入ってきた。
「おまたせ致しました。お骨拾いの準備をお願いします」
火葬場に着くと、親父は骨と灰になっていた。
「足元にあるの、あれ、なんだ?」
長男が、隅の方を指さした。
「親父が、土から作ったんだ。内緒で、お棺の中に入れといてくれって。陶芸が趣味だったでしょ」
三男は、焼き上がったばかりの骨壺を見つめた。
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