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紳士協定 (1分ショートショート)
ミッキーとミニーは、念願の有給休暇を取った。
「今日は仕事を忘れて遊ぼう」
二人は、絶叫コースターにできた列の、最後尾に並んだ。
観光客は気づかっているのか、話し掛けてこない。
二人はイチャつき、笑い合い、デートを楽しんだ。
しかし、コースターに乗りこみ、二人の身体が宙吊りになった瞬間、甘い空気は一変した。
「頭が!」
ミッキーが、上体のバランスを崩し、頭部を地面に落としてしまったのだ。
コースターが発着地で止まると、ミニーは、震えるミッキーの手を取り、落下地点まで走った。
「こちらですよ」
待ち構えていたスタッフが、ミッキーの胴体に頭部を差し込んだ。
「お願いします。どうか、このことは秘密にしてもらえませんか」
ミッキーとミニーは、スタッフに懇願した。
「私は何も見ていませんよ。本日、私たちは、誰ひとり、お二人にはお会いしておりません」
観光客が、二人の身体をすり抜けてゆく。
「また、どのカメラや携帯電話にも、お二人は映りませんのでご安心ください」
ミッキーとミニーは安堵し、ひしと抱き合った。
「では、ごゆっくりお過ごしください。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンへ、ようこそ」