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満員電車 (1分ショートショート)
ホームで、午前8時発の電車を待っていたオレは、真後ろに、スーツを着た、外国人の男性が並んでいることに気がついた。
「日本の満員電車は、大変でしょ?」
「大丈夫ですよ」
「そうですか。背が高いから、息はできるでしょうね」
そこへ電車が到着し、勢いよくドアが開いた。我先にと、会社員や学生たちが乗り込む。
車内に入ると、座席は既に埋まっていた。オレは、もみくちゃになりながら窓に張り付いた。
プシュー!
ドアが閉まり、ほどなくして発車。
先ほどの外国人を探してみるが、どこにも見当たらない。
うまく乗れただろうか。
ふと窓の外を見ると、さきほどの外国人が、電車の外にいるのが見えた。
嘘だろ。
電車の側面にしがみついて、全身、強風に吹かれている。
オレを見つけた彼は、口をパクパクしながら言った。
「大丈夫ですよ、母国に比べたら」
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