20241205「灯火の夜」
振り向かないで
そう言ったのは
あなたの方
振り返らないで
そう言ったのも
あなたの方
届かないわたしには
聞こえているはずの
でも聞こえてこないのは
もうそこには居ないから
どれだけ叫んでも
涸らす涙と言葉を
否応にも隔てるものだとして
既にここに居て
そこには居ない
灯火の夜を過ごし
小さな明かりは
その影を壁際に落とす
落としたからには
拾ってあげて
手のひらにのせる
確かに在ったと思って
いつの間にか
もう無くなって
探しても見当たらない
無いのではなく
見えなくなっただけ
そう思っていれば
もう一度燐寸を擦って
鱗片の焦げを指で覆う
夜が明けるまでは
もうすぐで
白み始める時に
その思考は深まる
ただの思い違いだとしても
確かに存在しているのであれば
悲しみや喜びなんかも
手に入れることができるだろう
朝が来る頃には
もう別の感覚を纏い
昨日とは違う
自分になっている
浮き沈みの周波を並べ
今どこにいるのかを
そっと判断している
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