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ポップカルチャーが教養の時代だねって話
10年通いの馴染みのBARには音声無しで映画を流している。今日は「マトリックス」だった。私の隣では、大企業のお偉いさん1人を数名で接待している。商売の邪魔をしてはいけない、映画を肴にシングルモルトをストレートでチビチビと呑む。
この映画は地上波でも何度も放送していたこともありご存知の読者様も多いだろう。ダサくもなく、抽象的で、精神的な世界のテーマだ。見るたびに新しい気付きと普遍性を与えてくれる商業的だが大衆に迎合した映画では珍しい存在のSF映画のド真ん中と言っていい。
言葉を悪くすると理解が追い付かない人はスタイリッシュ映像で楽しんでね的な、老若男女楽しめるそんな映画。だから何度も地上波のテレビで流せて視聴率もいいのだろう。航空会社が流す映画にもよく採用されている。
本当にSF映画の偏差値50のど真ん中。だからこそ映画好きと自称するのであれば、「制作側が映画で伝えたったこと」とそれを踏まえて「自分なりの見解」を語れてこそ一丁前と言っていい。マトリックスは必ず通らないといけない教養として、観ていないといけない映画の一つだ。
しかしある意味マトリックスをBARで流すのは、店としての個性や思想がないと思い提案をした。私が所有する「ブレードランナー」「2001年宇宙の旅」の寄与するのでこれを流して欲しい、2代巨頭のSFだ、きっと映画かじった酔客同士が一瞬で討論出来る繋がりが可能になるからだと。
その私の提案に食いついた客が会話に入ってきた、先ほどの大企業のお偉いさんだ。私とは二回りぐらい年が違うだろうが、お構いなしに握手を求めその二つのSF映画をどちら側を支持する側の表明と、その根拠と自らの考察を述べてきた。
接待する側のサラリーマン2人は映画を観ていないのだろう、置いてきぼりの様子。なので私がお偉いさんの主張を忖度なしに、私なりの見解をお披露目してみた。
大喜びでお酒をご馳走され、サラリーマン2名に対しては二つの映画は男子としては備えておくべき一般教養だ、小説好きが好きか嫌いかじゃなく人間失格を読んでいないこと自体が罪深いと言うニュアンスで私も一緒に煽ってしまった。
ますますお偉いさんは喜びボトルを一本丸ごとプレゼントしてくれた、あんまり好きじゃないお酒だが。。
知識人なのだろうか、爆煙の電子タバコから私の吐き出す煙をボブマーリーを例え、暗に私も昔は大麻をやっていましたよ的な顔をしてくる。サラリーマンはそれには食い付いた。ボブマーリーなら知っていますよと。
ここから地獄の時間が始まった。
お偉いさんが出した問題
「ボブマーリーの代表曲 No woman、No cry のタイトルを訳してみろ。」
私もお偉いさん側に立って煽ってみた「まさか君たちは直訳する気ですか?それでもいいけど日本語で言ってみな」
サラリーマンとして、教養レベルの強度として、男として、英語力として
あらゆる角度で自分という人間力を晒される嫌なお題だ。学歴や社名の看板など通じない。しかも接待する側なので、恥ずかしい面はしたくないだろう、お里が知れる。
結局サラリーマン二人は直訳することも避け、スマホを覗いて和訳でも見ているのだろうか、、降参のようだ。まだ直訳の方が可愛げがあって良かったのに恥を恐れて、結果的に自分を守る恥を選んでしまった。仕事から逃げたのだ。利害関係のない私は模範解答ではないではないが、代わりに詩的に恋愛観を交えた和訳をした。ごめんだけど、恥ずかしくてここでは書けないw。
3人から私の出自や学歴、携わってる仕事の質問が来た。
店主「こいつは、無職のキチガイ系です、無駄に賢いので相手すると火傷します」
サラリーマン2名は私を蔑み、お偉いさんは私を心底羨ましがっていた。
その2名は逃げるようにお会計をしガールズバーへお偉いさんを誘導しした。
お偉いさんはもっと私と話したかったと言い残し寂しそうに店を後にする。
一見客にしてはお金は落とさせたほうなので、店主には売上げには貢献したのでいいだろうと言うと、映画の話は却下された。「ブレードランナー」と「2001年宇宙の旅」を説明出来ないのは彼の恥になるかららしい。まぁごもっともだ。
そこそこいい大学や名の知れた会社に入ってもさ、人として通っておきたい道を知らないのは勿体無くて、スペックマウントされても全然羨ましくなかったよぉって話でした。男としてダサかったなぁって私が思っちゃったぐらい。
最低限のポップカルチャーのど真ん中ぐらいはやっぱり共通言語として抑えた方がいいかもね。一瞬で仲良くなるよ。
それでは!!
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