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【蒸留日記 vol.118】コモンラベンダー 'Maillette'の蒸留。

本記事で解説するコモンラベンダー 'Maillette'の蒸留日は7/23です。

2024年L. angustifolia ’Maillette'の蒸留実施日

■Introduction -about cv. 'Maillette'

日本で入手できるあらゆるコモンラベンダー品種のなかでは遅咲き部類となる品種'Maillette'
だいたい中咲'2号はなもいわ'や遅咲'4号おかむらさき'と同期する
長い花茎と細身なつぼみの花姿から見慣れた人だとすぐに’Maillette’と見分けられる外見特徴

この品種名が発音正しくは「メイエ」なのか「マイエト」なのかはわかりませんが、品種'Maillette'は北海道ラベンダーと故郷を同じくした南フランスの野生ラベンダー種から選抜された、紛れもない南フランス生まれのラベンダー品種になります。
その生まれは定かではありませんが、フランス語のラベンダーに関する古い論文を読み解いていくと、少なくとも1950年代にはメジャーなL. angustifolia (コモンラベンダー)の香料用栽培品種となっていたことが判明しています。
また書籍「ラベンダーとラバンジン」(クリスティアヌ・ムニエ著)によると、イタリア系に一族ルーツを持つ農家によりこの品種が作出・命名されているようです。


未開花状態を含めた'Maillette'の花穂詳細
英国品種のように蕾が繊毛でモコモコしていないのでスラっとした見た目
花色は淡い青紫色

日本で多く出回っているコモンラベンダー品種…もっぱら園芸品種として作出されているいわゆるの英国品種(イングリッシュラベンダー)は曇りの多く多湿な英国・ブリテン島での気候に比較的順応しているとされ、同じく多雨気候である東アジアの日本列島でも英国品種のラベンダーがよく育つとされています。
そのような中、産業用品種としてラベンダーの原産地:地中海沿岸および南フランス地域で作出された南仏産品種は、日本やほか多湿な気候条件下での栽培となると難が生じると言われています。(英国品種に比べて)

それゆえか、ここ近年の日本の園芸苗木市場においてこのMailletteの親株が近年の高温多湿により枯れてしまったために市場への苗木供給が止まってしまい、現在簡単に入手できない品種となっているようです。
あるいは見た目が見栄えの出ない姿のためか苗木生産するナーサリーが減ってしまったという見方もされています。

そういった情勢を汲んで品種の存続のために平成林業。では特に力を入れての栽培・繁殖を行なっています。
日本の気候下で栽培がやや難しい品種を栽培できるノウハウを養う、といった武者修行的ノウハウ培養目的であったりもします。

加えて、次なるラベンダー精油産業の振興を見越してという理由でも。

■Materials&Methods

24年度のMaillette蒸留では満開となったところを収穫蒸留した

さて、収穫・蒸留当日の’Maillette’花壇のようす。7月23日です。
’Maillette'は2列分の花壇があります。
ほかの品種だと早咲き傾向の品種が多く花の色がすでに褪せているものばかりですが、’Maillette'は絶賛開花中!といったところ。

手前にぼやけて写る濃い紫色の品種は’Maillette’と同じ南フランスうまれのラバンジン’Gros Bleu'ですね。
北海道の3号濃紫早咲ラベンダーがそのままラバンジンになったような花色をしています。ラバンジン系統種の開花期は7月後半になり最近咲き始めた、くらいの感覚です。

L'espieurメソッドで収穫処理する
フランスでは機械でこれを行なっている

’Maillette'の収穫・蒸留方法は「花穂のみ」のL'espieur収穫法とします。
品種の花の香りを特に生かした精油づくりをしたいので茎(Stem)および葉(Leaf)は切り分けます。

仮に葉っぱ&茎を含めると、精油に若干シネオールと樟脳とカリオフィレン が溶け込んでシャープかつ甘みのコクが増した風味に変容するとされます。
香水のようなアロマからハーブのようなベクトルの香りになっちゃうんですね。

ラベンダーを育てていて1番の感動が味わえる光景(香りについて)

収穫バケツの中のようす。控えめに言って、芳香天国となっています。
もし天国がこのような香りと花畑に包まれているのなら死後の世界も悪くないと思えてしまうような凄まじい美しい香り。

いやぁ〜蒸留して精油を採ってもこの生花の香りがそのまま変わらず精油になってくれたらいいんだけどなぁ〜とか思ったりしますが、世の中そううまくは回らないもんです。

1時間少々で収穫は完了。
次は晩秋の挿し芽収穫のために多湿の8月を耐え抜いてくれよーうといったところ。

’Maillette'花穂のみの収穫重量は容器重量を差し引いて515gでした!
今までこなしてきた各品種の蒸留に比べてかなり多い収穫高です。

まぁ考えてみると花壇2列=14株分もあるのでそりゃ多くなるかといったところで納得してしまった。

さて蒸留に供される前に’Maillette’の最後の勇姿を。
美しい淡い青紫の花々です。採油用としてはもったいないくらい。
そして甘くうっとりするこの香り。北海道品種でも当たり前に出せるような芳香ではありません。

蒸留時間は香りの品質を保ちたいので50分としました!

■Results

1.収油率 - EO Yield

本種'Maillette'の蒸留では、茎と葉っぱを切り落として花穂のみの蒸留とするL' Espeur法を利用していることに注意です。

抽出量[ 7.5mL ]÷ 素材重量[ 515g]x 100 = 1.456%

2024/07/23開花期のMaillette蒸留の収油率

すんごい収油率で出ました!コモンラベンダー品種としては遅咲き性の、旬を射抜いた蒸留実施日のおかげで1.5%に差し迫る収油率を記録できたのでしょうか!?

…とはいいつつ、Mailletteは背丈の大きい品種なので花穂と茎を切り分けるエスピール収穫法で蒸留している(=精油保持部位の割合上がる)ことに気づいたのでした。
全草蒸留にて算出しなければ、全草蒸留した他の品種と比較しようがないんですよね…w

2.香りとか - EO Scent

相変わらず、蒸留中と蒸留後の精油の香りは格別に感じる美しい芳香を感じます。
さすがは香水香料用に採用されている栽培品種'Maillette'なだけありますね。
フランスのファイトプラズマ枯れ病被害が克服された暁には、古典品種'Maillette'を超える素晴らしい香りの精油をうみ出せる品種が生まれるんでしょうかね…!
ラベンダー産業の未来に夢と期待が膨らみます!

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エフゲニーマエダ(平成林業。)
若い人がどんどん減る地元【三笠市】もついに人口7000人台目前。 朝カフェやイベントスペースを兼ねたラベンダー園で今いる住民を楽しませ、雇用も生み出したい。そして「住みよい」を発信し移住者を増やして賑やかさを。そんな支援を募っています。 畑の取得、オイル蒸留器などに充てます。