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教育問題に関する私見と雑観

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私が書いた記事のうち、教育全般に関する個人的な意見などのものをまとめています。
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#大学

国立大の学費値上げを主張する上流階級の無神経さは、慶應義塾への反感を招くだけの愚行

国立大の学費値上げを主張する上流階級の無神経さは、慶應義塾への反感を招くだけの愚行


国公私立大学の学費格差問題国公立大学と私立大学の学費には大きな格差が存在します。年間の学費で言えば、国公立大学の場合は学部を問わず約60万円、私立大学の場合は文系学部で100万円強、理系学部や医療系の場合150万円程度、医学部の場合700万円程度(均等割りすると)と言われており、同じ学問を学ぶに際してのコストは大きく異なっています。

とはいえ、この50年で国公立大学の学費は値上がりが続いており

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20年前の「大学像」をもとに大学教育を批判する中高年の滑稽さ

20年前の「大学像」をもとに大学教育を批判する中高年の滑稽さ


20年前の「大学像」現在42歳の私が大学に入学したのは1999年、今から24年前です。

その当時は私が通っていた地方国立大学でも教養などは300人収容できる大講義室で行われる講義も多く、出席も単位認定もがばがばというものが当然にありました。

特に文系の学部の場合はそうした講義が必履修のかなりの割合で存在し、大学に行かなくても卒業できる、大学は勉強する場所じゃないというイメージを持つ人が多かっ

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高校生の文理選択という制度の課題と選択指針

高校生の文理選択という制度の課題と選択指針


文理選択という制度の問題点日本中の多くの普通高校において高校1年生から2年生に進級する際に文理選択を行います。

このページを見ている人ならばおそらく当然知っていることであり、同時に選択で悩んだ、という人も結構な数いるのではないでしょう。

そもそも論ではありますが、私個人としては文理選択という制度そのものの存在意義に関して疑問に感じています。

なぜならば、高等学校で学ぶ内容の多くは大学進学を

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高校教員である私が浪人を勧めない理由

高校教員である私が浪人を勧めない理由


大学全入時代、到来せず大学受験の変化について調べると大学全入時代を迎えた、と方々で耳にします。しかし、実際のところはそれほどあまい状況ではありません。

確かに入学難度の低い大学が全入になっていたり、総合型や推薦型と呼ばれる年内入試によって受験勉強をそこまでしっかりせずに合格を勝ち取る生徒がいるのも事実です。

しかし、一方で総合型や推薦型の準備が生半可な受験勉強よりも大変であったり、難関大学に

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国立大学への補助金に選択と集中を批判する人たちが地方私立大学を排除したがる矛盾

国立大学への補助金に選択と集中を批判する人たちが地方私立大学を排除したがる矛盾


研究費の減少、選択と集中地方国公立大学は研究費の減少に苦しんでいます。

この20年で教育研究費が3分の1になったという話もあるようです。

運営交付金を減らしただけでなく、選択と集中という名のもとに一部の研究重点大学に予算を集中し、多くの大学への予算は減り続けています。

その上、法人化したことに伴い書類申請などの業務が増加し、予算が少ない上に研究時間も取られるという状況が常態化している大学も

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改革前年共通テストに「むしろチャンス」と挑戦を煽るのは明らかなポジショントーク

改革前年共通テストに「むしろチャンス」と挑戦を煽るのは明らかなポジショントーク


共通テスト改革前年2025年度の大学入学共通テストより、情報Ⅰが受験教科に追加されます。またそれと並行するように国語や数学の試験が一部変更になります。

こうした科目の増加は2006年度のリスニング科目増加以来、約20年ぶりになる大改変でしょう。

今回のような科目の増加が行われると、既卒者は受験が難しくなります。

多くの場合は新しい科目を予備校で浪人中に一から学習し直すことになるため、その負

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ゆがんだ「偏差値信仰」で大学教育を語る恐怖

ゆがんだ「偏差値信仰」で大学教育を語る恐怖

文部科学省は政府の基金3000億円を活用し理工農系学部を拡充する支援事業について、大学や高専など111校を選出したと発表しました。

これはデジタルなどの成長分野に対応した学部再編や、人材確保を目指す計画1件につき最大約20億円を支援するもので、これによって学部増設などを行う大学があるようです。

広く浅い支援と狭く深い支援今回の支援は理系学部への支援を広く浅く行う施策です。

一方で、特定の大学

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私立大学設置基準の見直しは新たな既得権益を生む仕組みとなる可能性

私立大学設置基準の見直しは新たな既得権益を生む仕組みとなる可能性

先日、私立大学の設置基準が見直され、大学全体の規模を抑制する方針に変更するというニュースが上がっていました。

少子化が進む中で定員を充足しない大学が増加しており、その対策として考えると妥当な政策のようにも見えます。

大学の設置は原則認可の方針だった文科省はこれまで大学設置・学校法人審議会において、設置基準を人的、設備、教育内容や課程がクリアしていれば新設を認可してきました。

その結果、この3

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むしろ「学歴社会」は加速させるべき

むしろ「学歴社会」は加速させるべき

「日本は学歴社会である」と世間一般で言われています。

実際、大学の進学率はすでに50%を超えていて、現役世代の2人に1人は学士の時代になるのもそう遠い未来ではないため、確かに「学歴社会」化しているように見えます。

そんな中、「学歴社会」に対する批判は根強いものがあります。

学歴では人間の能力は測れない、偏差値のような数字で輪切りをすることは非人道的だ、などの批判はリアル、ネットを問わず目にす

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なぜ進学校の教員は浪人を勧めないのか

なぜ進学校の教員は浪人を勧めないのか

私は私立高校の教員をしています。私の勤務校でもそうですし、いわゆる「自称進学校」と呼ばれる学校の先生の多くは生徒が現役で進学することを勧める傾向があります。

こうした傾向に対し、YouTubeやSNSなどで「生徒の気持ちを分かっていない」、「視野が狭い教員だから地元の国立しか知らない」、「予備校に手柄を取られたくないのだろう」といった批判が多いようです。

しかし、浪人を勧めないという理由はそう

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