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教育問題に関する私見と雑観

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私が書いた記事のうち、教育全般に関する個人的な意見などのものをまとめています。
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2024年4月の記事一覧

教育現場は教育実習で教職を諦めるという必然をいつまで放置するのか

教育現場は教育実習で教職を諦めるという必然をいつまで放置するのか


教員不足対策の現状昨今、全国的な教員不足が問題となっていますが、その対応が各自治体や教育委員会で行われています。その中でも最たる例が試験の日程の前倒しです。

民間企業の面接よりも先に試験を実施することで、民間の内定前に採用者を確保しようという目論見のようです。

しかし、この内定の日程はあくまでも公的なものであり、実際にはすでに内々定で就職先が決定しているというケースは少なくありません。

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5G時代においては、校内LANの整備よりもSIM契約を学割で運用すべき

5G時代においては、校内LANの整備よりもSIM契約を学割で運用すべき


学校内LANの速度問題GIGAスクール構想の中で一人一台の端末支給はコロナ禍というアクシデントの効果で爆発的に進みました。端末自体の故障なども徳島などでは問題化していますが、実はそれよりも深刻で、しかも全国的に問題となっているICT系の課題が校内LANの速度問題です。

この問題は端末の同時利用率が高まるとさらに大きな問題となっていくことが容易に想像できます。ではこの課題に関してどう対応するよて

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国立大の学費値上げを主張する上流階級の無神経さは、慶應義塾への反感を招くだけの愚行

国立大の学費値上げを主張する上流階級の無神経さは、慶應義塾への反感を招くだけの愚行


国公私立大学の学費格差問題国公立大学と私立大学の学費には大きな格差が存在します。年間の学費で言えば、国公立大学の場合は学部を問わず約60万円、私立大学の場合は文系学部で100万円強、理系学部や医療系の場合150万円程度、医学部の場合700万円程度(均等割りすると)と言われており、同じ学問を学ぶに際してのコストは大きく異なっています。

とはいえ、この50年で国公立大学の学費は値上がりが続いており

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「教職調整額」10%への増額が生むのは、志願者増加とさらなる質の低下

「教職調整額」10%への増額が生むのは、志願者増加とさらなる質の低下


教員不足と給与問題全国的に教員不足が深刻化しているのは多くのニュース、メディアで扱われていますし、私のnoteでも過去何回にもわたって記事化してきました。

この問題の解決の糸口はなかなかにつかめず、ここ数年はかつてよりもさらに深刻化しているにも関わらず、行政サイドが現状を静観するばかりで大きな進展がありませんでした。

ところが最近になって新たな動きが見えてきました。それが「教職調整額の増額」

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ベネッセは教育業界を支配していないし、学校現場と違法な癒着をしてもいない

ベネッセは教育業界を支配していないし、学校現場と違法な癒着をしてもいない


デイリー新潮の妄想記事?デイリー新潮がベネッセコーポレーションの闇を暴く、的なスタンスの記事をリリースしています。

教育現場に直接関わりのない人で、なおかつ一般的な公立高校を卒業した人が読むと高校時代に思い当たるような話がいくつも散りばめられており、納得感のある記事になっています。

確かに嘘がある記事であるとは言えません。少なくとも誤った事実が書いてあるわけではないようです。しかしどうにも解

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若手指導ポストを新設すれば若手教員の育成は上手くいくのか?

若手指導ポストを新設すれば若手教員の育成は上手くいくのか?


若手指導ポストの新設文部科学省が公立小中学校に若手教員の指導にあたるポストを新設する方針であるというニュースが昨今話題になっていました。

世代の偏りが大きく退職者と初任者の割合がアンバランスになり、一般教諭の若手の率が増加する中で現場での指導者を増やしたいという思惑なのでしょう。

どこかで聞いた話そもそもこの話、どうにも違和感があります。これまでも「指導教諭」というポストがあったように記憶し

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福岡市立中学校の入学式当日クラス分けトラブルの最も大きな原因は教育委員会の規定

福岡市立中学校の入学式当日クラス分けトラブルの最も大きな原因は教育委員会の規定


福岡市立中学校での入学式におけるクラス分けのトラブル福岡市の市立中学校では4月10日に行われた入学式において、当日判明の生徒数の増減でクラス数が減少するというトラブルが発生しました。

どうやら式の直前に生徒がこう区外に転居していることが判明し、それを前提としてクラスの組み換えが行われたということのようです。

なぜこんなドタバタ劇となったかさて、こうしたトラブルはどうして発生したのでしょうか。

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千葉の新規採用教員の奨学金肩代わり政策を文科省が許せば、小規模県の衰退を加速させる

千葉の新規採用教員の奨学金肩代わり政策を文科省が許せば、小規模県の衰退を加速させる


全国的な教員不足教員不足が全国的に問題になるなか、各地の自治体、教育委員会は様々な方法を駆使して採用試験の受験生確保に躍起になっています。

例えば6月に試験を前倒しにしたり、大学3年時に受験を可能にするなどの手法が実際に行われているようです。また、いまだに教員の遣り甲斐アピールの広報活動を行っているところもあると聞きます。

正直な話、これらの手法は教員不足に対し本質的な解決をもたらすものでは

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サッカー部落雷事故の再発予防は基準の設定ではなく、文科省が責任を持つという後ろ盾になる覚悟

サッカー部落雷事故の再発予防は基準の設定ではなく、文科省が責任を持つという後ろ盾になる覚悟


宮崎県における落雷事故先日、宮崎県の鵬翔高校において同高校と熊本県の高校生がサッカーの練習試合中に落雷によって病院には運ばれるという事故がありました。

事故当日の天候や状況に関しては記事内に以下のようにあります。

どうやら雷注意報自体は午前、午後と継続して出されていたようです。

それに対して事故があった鵬翔高校の教頭は以下のように述べています。

雷の予兆に関しては難しく、確かに突然の雷雨

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数学教員を20年近く務めた教員が考える授業の「巧さ」と「上手さ」と教員の素養

数学教員を20年近く務めた教員が考える授業の「巧さ」と「上手さ」と教員の素養


授業の評価が高い教員授業が分かりやすいというのは教員の評価としては最も明確な指標の一つです。もちろんそれだけで出世栄達が業界で叶うわけではありませんが、人事評価においてある程度の意味があるのは間違いありません。

公立では「スーパーティーチャー」制度などによってそうした評価を行っています。私立の場合でも内部的にそうした評価を行っている学校は少なくないようです。

生徒の感想とのズレところがこうし

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大阪府はどうして私立高校を無償化するのか

大阪府はどうして私立高校を無償化するのか


注:本記事は私学教員である筆者のポジショントークが多分に含まれることをご理解の上、ご覧ください。

大阪府、私立高校無償化大阪府は令和6年度より私立高校を原則無償化していく方針を打ち出しています。

この新制度の目的は以下のようなものとされています。

自らの希望や能力に応じて自由選択の機会の保障

子育て世帯の教育費負担を軽減

国公私立の高等学校等の切磋琢磨による教育力向上

もちろんこう

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「GIGAスクール構想による教育効果を感じている親は約4割」という結果は妥当で事実として受験レベルの教育効果は低い、だがGIGAには賛成

「GIGAスクール構想による教育効果を感じている親は約4割」という結果は妥当で事実として受験レベルの教育効果は低い、だがGIGAには賛成


GIGAスクールの教育効果に関するアンケートコロナ禍によるGIGAスクール構想の前倒しから4年、中高では一回りしたこともあり、その教育効果に関して考察が方々でなされています。

その話題に関わるアンケートの結果がWEB上に上がっていました。

記事によると一人一台端末などGIGAスクール構想に関わる教育効果を感じている保護者は約4割である、ということです。

言い換えれば、保護者の半数以上は効果

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