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2024年5月の記事一覧
バンドたちはなぜメシを食うアーティスト写真やMVを撮るのか
MONO NO AWAREの新曲「同釜」、そのミュージックビデオは“メシを食うこと”を中心に据えた作品だった。和中洋と次元を移ろいながらメシを食う。最後に演奏シーンがあり、そして高笑いする玉置周啓(Vo/Gt)もいる。異様なビデオだ。
このようにメシを食うミュージックビデオや、もしくはメシを食うジャケットのアートワーク、そしてメシを食うアーティスト写真などはバンドにおいては思いつく限りでもかなり
ケアも寄り添いも無いとして/『私のトナカイちゃん』【ドラマの感想】
イギリス・スコットランドのコメディアン/劇作家であるリチャード・ガッドが主演・脚本・製作総指揮を担ったNetflixドラマ『私のトナカイちゃん』が凄まじかった。売れないお笑い芸人ドニー・ダン(リチャード・ガッド)がバイト先の酒場で、金が無くて泣き出しそうになっていた女性マーサ(ジェシカ・ガニング)に紅茶を奢る。その日を境にマーサはドニーのストーカーになり、次第にエスカレートしていく、というのが本作
もっとみるアニメ『ボボボーボ・ボーボボ』をちゃんと考えてみる③(52話-76話)
3月に①、4月の②に続き、ラスト。アニメ『ボボボーボ・ボーボボ』を論考する記事のシリーズ。初期の癖のあるシュールな作風から、中ボス戦を重ねて徐々に明解な笑いへと変貌していく流れについてをここまで書いてきた。
これは有名な話だが放送最後の半年はノンスポンサーで放送された。テレビ朝日と東映アニメーションが共同出資で存続させただの、スタッフキャストが身銭を切って存続させただの、真偽不明の都市伝説が出回
異化される現世/Tempalay『((ika))』【ディスクレビュー】
Tempalay、3年ぶり5枚目のオリジナルアルバム『((ika))』に取り憑かれている。19曲72分という大巨編でありながら、その多彩で奇異な楽曲たちに身を委ねているうちにいつの間にか時が過ぎる。幽玄で、猥雑で、耽美で、乱暴で、果てしのない幻想譚。紛れもなく最高傑作だろう。
本作最古のシングル「あびばのんのん」のインタビューで前作『ゴーストアルバム』についてフロントマンの小原綾斗はこう語ってい
罪の在る結末/濱口竜介『悪は存在しない』【映画感想】
濱口竜介監督による『ドライブ・マイ・カー』以来の長編映画『悪は存在しない』。その重厚な映画体験を今も反芻している。というより、あのように切断的に現実へと投げ出される結末を受け取っておきながらそうしないわけにはいかない。
緊張と緩和、長回しとぶつ切り、相反する要素を織り交ぜながら得体の知れない感情を炙り出してくる本作。全編に渡って人間の心が持つ柔らかさと不気味さの両方が喉元に突きつけられる。私なり
境界で踊る〜橋本絵莉子『街よ街よ』【ディスクレビュー】
橋本絵莉子の2ndアルバム『街よ街よ』に感動しきっている。前作『日記を燃やして』では柔らかなアレンジはアコースティックギターの音色も印象的だったが、本作はずっしりとしたグルーヴを活かしたロックバンドらしさ溢れる1作。ライブでの経験値が制作にも反映された好例だろう。
40歳を迎えた橋本が自身の年齢を「若くもないけど老いてもいない、この感じがちょうど踊り場っぽいなって。(中略)ただスッと過ぎていくだ