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読書記録

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ジャンル問わず。読んだ本の記録、紹介。
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2024年8月の記事一覧

奇跡の脳~読書記録444~

奇跡の脳~読書記録444~

奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき 
ジル・ボルト テイラー (著) 竹内 薫 (翻訳)

脳科学者である「わたし」の脳が壊れてしまった──。ハーバード大学で脳神経科学の専門家として活躍していた彼女は37歳のある日、脳卒中に襲われる。幸い一命は取りとめたが脳の機能は著しく損傷、言語中枢や運動感覚にも大きな影響が……。以後8年に及ぶリハビリを経て復活を遂げた彼女は科学者として脳に何を発見し、どんな新

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パンデミックを終わりにするための 新しい自由論~読書記録443~

パンデミックを終わりにするための 新しい自由論~読書記録443~

パンデミックを終わりにするための 新しい自由論 村中璃子 2023年

この5月で新型コロナは2類から5類に移行し、日本のパンデミックもやっと終わりを告げることになった。
世界でパンデミックが発生した当初こそ、欧米での死者のあまりの多さに比べ、日本ではそこまでの被害が出ていなかったことから、ファクターXなどと、日本の特殊性を強調する声もあがった。
しかし、それは幻想だった。欧米ではいち早くパンデミ

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『ねじまき鳥クロニクル』を読み解く~読書記録442~

『ねじまき鳥クロニクル』を読み解く~読書記録442~

同志社大学講義録 『ねじまき鳥クロニクル』を読み解く 2023年 佐藤優

悪に無自覚であってはならない――。
人と人との関係の中から悪は生まれ、自らの悪に気づかないことが、さらなる恨みや憎しみを生む。
人々の悪が社会の中で増幅すれば、やがて戦争や虐殺事件のような惨劇につながることもある。
村上春樹氏の長編小説『ねじまき鳥クロニクル』をテキストとして、資本主義、能力主義、軍国主義など社会システムが

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勝ち抜く力~読書記録441~

勝ち抜く力~読書記録441~

勝ち抜く力 猪瀬直樹 2013年

副題 なぜ「チームニッポン」は五輪を招致できたのか

当時、東京都知事であった猪瀬直樹氏によるオリンピック誘致までの著。

2012年12月東京都知事に就任した猪瀬氏は翌年1月オリンピック立候補ファイル申請。ロンドンで記者会見。
知事になった当初からマラソンレースの如く、頭の中でイメージしながら招致活動をしていた元知事。
東京には世界有数のインフラがある。大会会

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放課後はミステリーとともに 東川 篤哉~読書記録440~

放課後はミステリーとともに 東川 篤哉~読書記録440~

放課後はミステリーとともに 東川 篤哉

霧ヶ峰涼はエアコンみたいな名前だが、カープファンにして鯉ヶ窪学園高校探偵部の立派な副部長である。
探偵部とはもちろん、探偵小説愛好のみならず、実地に探偵活動を行うのを旨としているのは言うまでもない。
ところで、鯉ヶ窪学園とその周辺にはなぜか事件が多い。それらを紹介しよう。

■霧ヶ峰涼の屈辱
鯉ヶ窪学園高等部のE館で発生した盗難事件。
涼が先輩や警備員と犯

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赤とんぼ: 1945年、桂子の日記~読書記録439~

赤とんぼ: 1945年、桂子の日記~読書記録439~

赤とんぼ: 1945年、桂子の日記 レイコ・クルック

私がこの本を知ったのは、尊敬する立花隆先生の著書からだ。先生のお勧め本の1冊にあげられていた。
作者自身、あとがきで立花隆先生への感謝も書かれている。
立花隆先生も長崎の出身である。

2013年に書かれた作品。挿絵も著者が描かれている。実体験を交えながらの小説である。

戦時中の日本の空軍戦闘機と言えば、零戦を思い浮かべるが、赤とんぼは、乗

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仏教の来た道~読書記録438~

仏教の来た道~読書記録438~

仏教の来た道 鎌田茂雄

インドから西域に伝わった仏教は、中国、朝鮮、日本へと東漸し、それぞれの地にしっかりと根をおろした。仏教伝播の道筋には、敦煌や雲岡の石窟をはじめ仏教文化の遺産が数多く見られる。また仏教伝播の立役者は、仏図澄(ぶっとちょう)、法顕(ほっけん)、玄奘三蔵ら布教・求法(ぐほう)に燃える僧たちであった。今なお残る史跡や文物、伝道僧の事績に光を当て、仏の来た道をたどり返す。

鎌田茂

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新型コロナから見えた日本の弱点~読書記録437~

新型コロナから見えた日本の弱点~読書記録437~

新型コロナから見えた日本の弱点 村中璃子

世界は、新型ウイルスとの闘いに最初から負けていた――

世界の多くの国にとって、新興・再興感染症対策は国防の要である。
それは危険な感染症から国民を守るという意味だけでなく、
生物兵器によるテロへの備え、ワクチンや新薬の開発とそれを用いた外交、諜報や情報防衛も含む。
翻って日本は、国防の観点からの感染症対策は明らかに後れをとっている。
新型コロナウイルス

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六の宮の姫君~読書記録436~

六の宮の姫君~読書記録436~

六の宮の姫君 北村薫

北村薫の円紫さんと私シリーズの一作だ。

最終学年を迎えた〈私〉は、卒論のテーマ「芥川龍之介」を掘り下げていくかたわら、出版社で初めてのアルバイトを経験する。その縁あって、図らずも文壇の長老から芥川の謎めいた言葉を聞くことに。王朝物の短編「六の宮の姫君」に寄せられた言辞を巡って、円紫師匠の教えを乞いつつ、浩瀚な書物を旅する〈私〉なりの探偵行が始まった。

こんなミステリーも

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災厄の町~読書記録435~

災厄の町~読書記録435~

災厄の町 エラリイ・クイーン 翻訳 越前敏弥

結婚式直前に失踪したジムが、突如ライツヴィルの町に戻ってきた。三年間彼の帰りをじっと待っていた婚約者のノーラと式を挙げ、幸福な日々が始まったかに見える。ところがある日、ノーラは夫の持ち物から奇妙な手紙を見つけてしまった。そこには妻の死を知らせる文面が……旧家に起こった奇怪な毒殺事件の真相に、名探偵エラリイが見出した苦い結末とは? 
本格ミステリの巨匠

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