「投影」とは何か 【実践心理学】
「なんで怒ってるの?」
「どうしてそんなに不機嫌なの?」
不機嫌でもないし怒ってもいない私に、彼女は幾度も問いかけました。
怒ってないよ、不機嫌じゃないよ、と、その都度伝えながら受け流していましたが、どうにも様子がおかしくなっていきました。
私はルーチンワークを淡々とこなします。多方面に気を配りながら、必要な作業を終わらせていきます。
挨拶をしても返事のないことが増えました。
要求する意図はありませんでしたが、あらゆる場面で「ありがとう」という言葉が姿を隠しました。私は変わらず日常的に感謝や謝罪を伝えながら生活を続けましたが、どうやら彼女の世界からは私に対する人間らしい感情が霧散して、彼女の抱える様々なストレスが敵意という形に変わって私に向かってくるような、そういう気配が場を支配していました。
「そんな態度をとって、失礼じゃない?」
その朝、朝食の後片付けをしている私に対して、彼女は唐突な質問を投げかけました。
そんな態度と言われても、どういうことか分からないから教えて欲しい。むしろ君の方が不機嫌なようにみえるし、怒っているようにみえるから理由があるなら教えてほしい。
たしかそういう返事をしたと記憶しています。
すると彼女は声を荒げながら、
「私はわざとやってるからいいの。何の自覚もないようなら、あなたの方が失礼よ!」
と言いました。
もはや会話になっておりません。
失礼なのはどっちの方か…という言葉が思い浮かび、しかしそのまま飲み込みました。これ以上激昂させたら子どもに被害が及びかねません。私には子どもたちを護る使命があります。私が盾になれなければ、次はきっと子どもたちの番です。
…振り返ると、そのとき彼女の心理には『投影』が働いていたのだろうと考えます。
心理学における投影とは、無意識に発動する自己防衛システムの一種であり、認めたくない自分自身の感情や性質を否定し、代わりに他者にソレを押しつける心理反応です。
投影は極めて日常的に、誰の心理にも発動しうる防衛システムです。そして重要なことに、このシステムは無意識に機能しています。
(好ましい感情も投影されることはありますが、それは防衛とは異なる仕組みであり、問題になることが少ないため省略いたします。)
さて、すると実際に不機嫌だったのは私ではなくて彼女自身であり、怒っていたのも私ではなくて彼女自身だったということです。
例えば他者のことを失礼だと吹聴している人の中には、その人自身が他者に失礼な態度を取り続けている場合があります。これは自分の「失礼な態度」を他者に投影して、責任転嫁している実例といえましょう。
では、どうすれば良いのでしょうか。
これは極めて難しい問題です。
もし「それは投影だ、貴方自身のことだ」などと指摘しようものなら、争いを生むばかりで事態は悪化するばかりでしょう。何故なら投影は無自覚の防衛システムであり、まさか自分がそんなはずはないと考えている可能性が高いからです。
多くの場合、投影された相手と本人の二者間のみで問題を解決することは困難です。本人が奇跡的に自分の心理に気付けば別ですが、通常そういうことは起こりません。そもそも自分の中に否定したい感情や性質が存在することが始まりですから、それを見つめて認めることは強い心理的負担のかかる取り組みです。
有効な一手になりうる方法は、第三者の介入と考えます。理想的にはプロのカウンセラーが適任でしょう。科学的なカウンセリング技術は、本人の自己認識を促します。気付くこと、認識することは、変化のための第一歩になると考えます。
貴方の周りにも「投影」している人がいるかもしれません。貴方自身はどうでしょうか。
さぁ、こんな記事を公開して大丈夫でしょうか。大丈夫ではないかもしれません。数日悩みましたが、これも必要なステップと考え投稿に至りました。ヤバかったらそっと下書きに戻します。
私は再構築の道を進みます。
時間がかかっても、私は私の道を歩きます。
拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、貴方の心に平和が訪れますように。
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