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【1000本ノック】西洋美術史入門【4冊目】

筑摩書房で「ちくま1000本ノック」企画として紹介された本を、
図書館にある本限定で読んでみる。

4冊目はこちら。

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池上英洋 西洋美術史入門

マスクをしなくても自由に出歩けていた頃、母と一緒に美術館へ行くことが好きだった。ポスターを見て、「あ、見てみたい」と思った美術展に足を運んだり、母から誘われて少し遠くの美術館へ行ったり。
ただ「絵画を見るのが好き」なだけで、美術史というものを意識したことはこれまでそんなになかったように思う。

目から鱗の西洋美術史入門書

芸術は良く分からない、と思っているも、趣味は美術館巡りという人も、とりあえずこの本を読んでみて欲しい。

西洋美術は決して難しい物ではない。込められたメッセージを読み解くヒントとしてこの本を手元に置いておけば、きっと今以上に西洋美術を楽しめるようになる。

美術史っていつ習ったんだっけ?そもそも美術史なんて学んだっけ?日本人の多くは、西洋の美術史を知らないのではないだろうか。

もっと早くこの本に出会っていたかった。著者が大学の西洋美術史1の導入講義のダイジェスト版がベースになっていると言っている通り、大学講義を受けているような本だった。

人生が楽しくなる「教養」としての美術史

美術に興味がある人も興味がない人も、教養としてこの本を読んでおけば今後の人生がちょっと楽しくなるような気がする。

そもそも美術はお高く留まったものではなく、大衆に何かを伝えるためのものであった。つまり、崇高なものではなく文字が普及していない時代のメディア媒体であったということである。

そのメディア媒体がどのように変化して行ったのか、思想や集団ごとにどのような特色があったのか、時代によって人々は絵画をどのように取り扱うようになったのかーー
これ以上のことは是非本を読んで学んでほしい。

現代は西洋文化が生活の一部であり、幸いなことに世界中のあらゆるものを見る機会に溢れている。わざわざルーブル美術館へいかなくても、インターネットで調べれば有名な絵画をデータとして見ることができる。少し調べれば何年ごろ、どの地域で描かれたものなのかが分かる。

描かれたものの美しさを「綺麗だ」「素敵だ」「何となく好きだ」と思うだけではなく、描かれた時代背景や当時の思想について考えることによって一歩踏み込んで絵画を楽しめるようになる。

美術史とは、その時代に生きた人々を知ることにつながっている。

文化を衰退させないために

著者のあとがきが素晴らしかった。著者の持論には大いにうなづいた。私たちが「文化」と呼んでいるものの中で、100年後にも存続しているものは一体どれだけあるだろう。美術というカテゴリーに限らず、文化を存続するためには、保護状態にならないようにするしかないーーその文化が生きている状態を保たなくてはならない。そのために必要なこととは何なのだろうか。

西洋では時々、先生と学生たちが美術館内で絵画について議論を交わす様子が見られるそうだ。西洋で生まれた絵画が、描かれた当時と同じように扱われているように感じる。まさに、その文化が生きている、ということだろう。日本における西洋美術とは、あくまで輸入した文化を鑑賞している、という具合なのかも知れない。

鑑賞から一歩踏み込み、さらに楽しむために。
美術史とは「考え味わう」手助けをしてくれる道具である。

遠い国の美術館にある絵画も、あらゆる媒体を使って「見られる」時代に生まれたのだ。その絵画に隠された真実を知るために、是非この本を読んで「西洋美術史」という道具を手に入れてみてはどうだろうか。


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