松田さと子

ロンドン在住。ゼロカーボン改革スペシャリスト、BPSチャータードサイコロジスト🇬🇧臨床心…

松田さと子

ロンドン在住。ゼロカーボン改革スペシャリスト、BPSチャータードサイコロジスト🇬🇧臨床心理士、(国)キャリアコンサルタント、 COP25〜COP28や、その他世界各地で開催された環境系サミットに出席。✨25ansのWebでも連載経験あり。25ansビューティメダリスト

最近の記事

Two years to save the world(世界を救う2年)

Chatham Houseで、今年の春、国連気候変動事務局長のサイモン・スティール氏の「世界を救う2年」'Two years to save the world’と題した講演会を聞きました。少しタイムラグがあるのですが、記録としてここに残しておきます。 気候変動対策に関して、世界は否定から先延ばしへと変わり、科学を否定することで擁護されるのではなく、行動に起こすために「コストがかかりすぎる」あるいは「達成不可能」であると主張されています。しかし、今世紀末までに地球温暖化を1

    • COP29の裏側 アゼルバイジャンの「未来のための気候投資基金」について

      今年の11月にアゼルバイジャンで開催されるCOP29。2年連続で産油国での開催となるため、進捗に懐疑的な人もいるかもしれません。私の知人の中には、少々諦めモードの人もいます。しかし、一方で、産油国であるが故に実現しそうな提案も見えてきています。COP期間中の発表を目指して、準備会合で話し合いが行われている発展途上国への脱炭素投資基金を例に取って、その息遣いをお伝えしてみようと思います。 この発展途上国への脱炭素投資基金は正式には「Climate Investment Fu

      • Frieze London 2024まで1ヶ月余り。サステイナブルな未来へ。進化するアートフェア

        Frieze Londonは、2003年に創設されて以来、コンテンポラリーアート界において世界的に重要な存在として成長を遂げてきました。当初はFrieze Magazineの延長として始まり、リージェント・パークでの小さなイベントだったものが、現在では国際的なギャラリーやアーティスト、コレクターが集う大規模なアートフェアに成長しました。さらに、姉妹イベントのFrieze Mastersも加わり、そこでは美術館で飾られているような著名なアーティストの作品も展示され、その多くは購

        • 風力発電施設から発生する低周波音という課題

          将来にわたり持続可能な社会をめざした再生可能エネルギーのビジネスが増えてきており、その一つが風力発電です。 音は、スペクトラム(連続体)を持っており、私たちの耳で感知できる範囲はその中のごく一部に過ぎません。現在、世界のいくつかの国では、音響スペクトラムの中でも特に低周波音、特に超低周波音が健康に与える影響について研究が進められています。これらは耳には聞こえませんが、身体に異常を引き起こす可能性がある音波です。 音響スペクトラム 音響スペクトラムは大まかに「超低周波音」

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          イェール大学、気候変動と生物多様性の危機に挑むサミットをNYで開催 — トム・ステイヤー氏とジョン・ケリー氏も参加

          来月、イェール大学はニューヨーク市で4日間にわたる重要なサミットを開催し、気候変動と生物多様性の喪失という現代社会が直面する最も深刻な課題に対する大学の取り組みを紹介します。このサミットは、「Climate Week NYC」と国連総会の年次会合に合わせて開催され、イェール大学の「Yale Planetary Solutions(YPS)」を通じて、地球規模の問題に対し解決策を模索します。 Yale Planetary Solutions(YPS)とは Yale Plan

          イェール大学、気候変動と生物多様性の危機に挑むサミットをNYで開催 — トム・ステイヤー氏とジョン・ケリー氏も参加

          ヨーロッパの繊維廃棄物問題:新たな法規制で持続可能性を目指す

          欧州連合(EU)は、繊維廃棄物の問題に対する革新的なアプローチを打ち出しつつあります。これは、ファッション業界の高い生産量と低品質な商品による膨大な廃棄物を削減しようとする取り組みです。毎年、EU内で約1,260万トン、つまり一人当たり約12キログラムの繊維廃棄物が発生していますが、これまではその処理の費用を企業が負担することはありませんでした。 繊維廃棄物に対する「拡大生産者責任(EPR)」導入へ 2024年3月13日と少し前のことですが、欧州議会は、ファッションブラン

          ヨーロッパの繊維廃棄物問題:新たな法規制で持続可能性を目指す

          サウジアラビアの未来都市Neom

          約1万年前から7千年前にかけて、サウジアラビアを含むアラビア半島の気候は、現在よりも湿潤で、サバンナや湖沼があったそうです。この時代は「緑のサウジアラビア」とも呼ばれ、当時のアラビア半島には豊かな動植物が生息していたと考えられています。古代の人々はこの地域で狩猟採集生活を営み、後には農耕や牧畜が行われるようになったそうです。アラビア半島が砂漠化し始めたのは約6千年前から4千年前の間で、気候変動による降水量の減少と、植物の減少が進行し、徐々に乾燥化が進みました。サハラ砂漠が北ア

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          地熱発電:世界の動向 (特にケニアとアメリカを中心に)

          地熱発電は、地球が発する熱を利用したエネルギー源です。地球が発する熱は、地球上に均等に存在しているわけではなく、地熱発電には適している地域とそうでない地域があるのです。地球中心部の熱源は、プレートの境目に付近に多く表出しており、ホットスポットと呼ばれています。 地熱資源量が多い国のうち、アメリカ、インドネシア、日本、フィリピン、メキシコは全て環太平洋火山帯(Ring of Fire)に属しています。アイスランドは大西洋上のホットプルームという特殊な地熱資源環境に位置しており

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          COP28でのカーボンクレジットに関する発表とタンザニアの取り組み

          カーボンクレジットとは何か? カーボンクレジットとは、二酸化炭素(CO2)や他の温室効果ガス(GHG)の排出を削減、除去、または吸収する活動に対して与えられる証書であり、企業や国が排出する温室効果ガスのオフセット(相殺)を行うために使用されます。1単位のカーボンクレジットは、1トンのCO2e(CO2換算)の削減を表し、その価値は市場で取引されます。また、削減分として利用されると、カーボンクレジットは相殺され、消滅します。この仕組みは、特に企業や政府が排出削減目標を達成するた

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          気候変動対策:次期🇺🇸大統領候補ハリス氏とトランプ氏の違い

          気候変動対策の観点から、次期アメリカ合衆国大統領としてカマラ・ハリス(Kamala Devi Harris)氏がドナルド・トランプ氏よりも好ましいと多くの人が考えているようです。その違いはどれほど大きいのでしょうか。そして、その違いは何に起因するのでしょうか? 今回は5つの重要な領域について、ハリス氏とバイデン大統領との比較も含めてご紹介します。 1.ハリス氏、トランプ氏、それぞれの気候目標 ハリス氏はバイデン大統領の気候目標である2030年までに2005年比で50-52

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          英国の気候変動対策:前政権とスターマー政権のアプローチの違い

          はじめに 労働党への政権交代に伴い、英国の気候変動対策にはいくつかの変化が見られました。今回は、リシ・スナク前首相の気候変動対策に対する消極姿勢と、キア・スターマー新首相の積極的なアプローチを比較し、それぞれの政策の違いをご紹介いたします。また、過去の英国の気候変動対策の取り組みにも触れたいと思います。 リシ・スナク前首相の気候変動対策に対する消極姿勢 リシ・スナク前首相は、経済的な負担を軽減し、有権者の支持を得るために気候変動対策に消極的でした。🇬🇧高いインフレ率と

          英国の気候変動対策:前政権とスターマー政権のアプローチの違い

          チャールズ国王のスピーチ

          日本でも話題になり、きっとみなさんもよくご存知の気候変動の国際会議COP。私は縁あって2019年にマドリードで開催されたCOP25から参加をしています。参加されたことがある方にはわかるかもしれませんが、会場でまず初めに話題になるのは、いつから参加をしているかです。パリ協定のCOP21から参加をしている方も多くお目にかかりましたし、古い方だと、COP3、これは日本で開催された会で、京都議定書が有名な会です。 COPに参加する各国のリーダーたち 長い間参加をしている方ほど、実

          チャールズ国王のスピーチ

          COP28関連トピックス〜ファッション業界が取り組もうとしていること〜

          COP28では、ファッション業界の関係者からいくつかの重要な発表があり、主に持続可能性の向上、温室効果ガス排出量の削減、環境への影響の軽減を目指す取り組みに焦点を当てていました。 それをお話しする前に、現在、ファッション業界が環境にどのような影響を及ぼしているのかを以下にまとめます。 ファッション業界が環境に与える影響 温室効果ガス排出量 ファッション産業は全世界のCO2排出量の約2-10%を占めると推定されています。(評価する研究や使用される計算方法によって異なりま

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          キャサリン妃とRHS チェルシーフラワーショー

          花とガーデンの祭典、王立園芸協会(RHS)主催のチェルシーフラワーショー。2024年度は、5月21日から25日まで開催されます。100年以上の歴史をもつ、英国最古の世界的な園芸の祭典で、英国王室の皆様も初日に参加されたり、過去には、チャールズ国王やキャサリン妃も出展し特に人気が高まったと言われています。そして、会場となるロンドンのスローンスクエア駅近くにある、チェルシー王立病院・ロイアルホスピタルは1692年にチャールズ2世が設立した退役軍人のための病院兼養老施設で、現在も赤

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          “BBC Earth Experience” 7大陸の生物多様性を没入体験

          ロンドンのDaikin Centreで開催されているBBC Earth Experienceは、2024年8月までの期間延長が決定しました。また、オーストラリアのメルボルン・コンベンション・アンド・エキシビション・センターででも2023年10月27日から開催されています。 BBC Earth Experienceの特徴壮大なスケールの映像 BBC Earth Experienceは、BBCによる「Seven Worlds, One Planet」の映像と、デイビッド・アッ

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          🇬🇧 キュー王立植物園(Royal Botanic Gardens, Kew):持続可能な未来への緑の拠点

          ロンドンのキューガーデンは、テムズ河に沿って広がる緑豊かな場所にあります。その歴史は王室から始まり、植物学研究、生態学、環境保護において国際的な重要性を持っています。今回は、キューガーデンについて、サステイナビリティへの取り組みにも焦点を当ててご紹介いたします。 キューガーデンの歴史キュー・ガーデンのあたりは、中世初期キュー・ガーデンの南側にあるリッチモンドとともに狩りの場所として王侯貴族たちのお気に入りの場所でした。そのエリアに貴族の方が住み庭園として手入れされるようにな

          🇬🇧 キュー王立植物園(Royal Botanic Gardens, Kew):持続可能な未来への緑の拠点