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COP29の裏側 アゼルバイジャンの「未来のための気候投資基金」について
今年の11月にアゼルバイジャンで開催されるCOP29。2年連続で産油国での開催となるため、進捗に懐疑的な人もいるかもしれません。私の知人の中には、少々諦めモードの人もいます。しかし、一方で、産油国であるが故に実現しそうな提案も見えてきています。COP期間中の発表を目指して、準備会合で話し合いが行われている発展途上国への脱炭素投資基金を例に取って、その息遣いをお伝えしてみようと思います。
この発展途上国への脱炭素投資基金は正式には「Climate Investment Fund for the Future(未来のための気候投資基金)」と言われます。議長国アゼルバイジャンが発表しました。これは、既に合意されて何度もCOPで議論されている先進国から発展途上国への温暖化対策基金とは別に、産油国や化石燃料を扱う企業から資金を貰い受けることを原資とした基金を設立する試みです。
近年、ロシアがウクライナに侵攻した後は特に、発展途上国は投資資金を受けることが難しくなっています。
気候変動による被害が温暖化に貢献をしていない国々の人に集中していること、また、脱炭素や気候変動に対する資金が発展途上国に行き渡っていないことは、みなさんもご存知かと思います。この事情を受けて、先進国が発展途上国に対して毎年〇〇兆円の貢献をすべき、との指摘がされ、基金設立が約束されたもののCOP28まででは未達に終わっています。この基金は、国際的な気候変動に対する取り組みとして一見すると前向きな提案に見えます。しかし、気候キャンペーン団体の350.orgは、この基金の正当性と効果に対して強い懸念を示しており、化石燃料企業の責任をより厳しく追及するべきだと主張しています。
基金は「煙幕」に過ぎない?
350.orgの政策・キャンペーン副ディレクターであるアンドレアス・ジーバー氏は、この基金を「煙幕」と表現し、化石燃料企業が自らの責任を回避しつつ、利益を得るための手段に過ぎないと指摘しています。彼は、「COP議長国の役割は、気候ファイナンスを通じて利益を得ることではなく、非常に低利な資金を提供し、気候危機の責任者が自らの行動に対して支払うように促すことにある」と述べています。
アゼルバイジャンが提案したこの基金は、5億ドル規模とされていますが、2023年に世界中で投資された1.8兆ドルのクリーンエネルギー投資に比べると、わずか0.025%に過ぎません。これだけでは、気候変動対策としては非常に不十分であり、真剣に取り組む姿勢が疑問視されるのも無理はありません。
商業目的と逸脱の手段
350.orgは、この基金が本来持つべき役割を果たしていないと批判しています。この基金が商業的な性質を持ち、利益を追求するためのものである点も問題視されています。気候変動への真摯な対応には、利益を優先するのではなく、最も脆弱な国々に対して低利での資金提供や助成金が必要です。
さらに、この基金が化石燃料の拡大を計画する国や企業によって、転換への不十分な姿勢を隠すための手段として利用される危険性も指摘されています。アゼルバイジャンの国営石油会社SOCARをはじめとする企業が、この基金を利用して自らの拡大計画から目を逸らすために利用している可能性があるというのです。
日本の化石燃料企業の役割と責任
このような国際的な動向は、日本の化石燃料企業にも当てはまります。日本はエネルギー需要の大部分を化石燃料に依存しており、大手企業が石油、天然ガス、石炭の分野で活動を続けています。しかし、こうした企業が持続可能なエネルギーへの転換を遅らせているのではないかという批判が国内外から寄せられています。
特に、日本のエネルギー大手は、気候変動対策として再生可能エネルギーへの投資を増やしつつも、依然として化石燃料の供給を続けています。これにより、気候変動に対する取り組みが中途半端であるとの批判が高まっており、企業が真の責任を果たしているかどうかが問われています。
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真の解決策とは
350.orgは、気候変動に対する取り組みが本質的で持続可能なものであるためには、化石燃料企業に対して厳しい責任追及が必要だと主張しています。象徴的な基金や寄付ではなく、税金を通じた課徴金や強制的な資金提供が求められるのです。気候危機の責任者が、自らが引き起こした問題に対して正当に支払うことが、持続可能な未来を築くための第一歩です。
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気候変動対策は、単なる表面的なアクションや企業の利益追求の手段として利用されるべきではないと思います。私たちが直面している気候危機は、すべての国や企業が真剣に取り組まなければならない喫緊の課題です。アゼルバイジャンの「未来のための気候投資基金」が、本当に地球の未来を守るためのものか、それとも一部企業の利益を保護するためのものか、その答えは今後の行動によって示されることでしょう。
日本の化石燃料企業もまた、エネルギー転換への真剣な取り組みを求められています。350.orgが提唱するように、気候正義を実現するためには、各企業のリーダーたちの決断と、公平で透明性のある取り組みが必要です。私たち一人ひとりが、この問題に対して関心を持ち、行動を起こすことができたら、大きな変化が起こりそうです。