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COP28でのカーボンクレジットに関する発表とタンザニアの取り組み
カーボンクレジットとは何か?
カーボンクレジットとは、二酸化炭素(CO2)や他の温室効果ガス(GHG)の排出を削減、除去、または吸収する活動に対して与えられる証書であり、企業や国が排出する温室効果ガスのオフセット(相殺)を行うために使用されます。1単位のカーボンクレジットは、1トンのCO2e(CO2換算)の削減を表し、その価値は市場で取引されます。また、削減分として利用されると、カーボンクレジットは相殺され、消滅します。この仕組みは、特に企業や政府が排出削減目標を達成するための重要なツールとして、気候変動対策の中核を成しています。個人・消費者にも販売されることもあります。飛行機のチケットを購入する際、「オフセットしませんか?」と聞かれたことがある方もいらっしゃるかと思います。
近年、カーボンクレジット市場は大きな成長を遂げており、特に開発途上国においては、経済的利益と環境保護を両立させる手段として重要視されています。タンザニアでの取り組みはこの一例です。自然保護と経済発展を同時に促進するために、この市場を積極的に活用しています。
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COP28で話題となったカーボンクレジットのお話し
タンザニアの例をお話しする前に、少しだけ、2024年に開催された第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)での話し合いをご紹介します。
COP28では、まさにこのカーボンクレジット市場の強化と、強化に向けた信頼性向上が主要なテーマの一つとして議論されました。特に、クレジットの信頼性については、今までに発行されたカーボンクレジットのほとんどが、実際にはCO2を全く削減していなかった、とのニュースが発表になり、ご覧になられた方もいるかと思います。
COP28等での問題意識の高まりにより、カーボンクレジット市場の透明性が向上し、市場参加者が安心して取引を行える環境が整えられることが期待されています。例えば、「Core Carbon Principles(CCPs:カーボンクレジットが重視すべき原則)」の合意と導入によって、カーボンクレジット市場の透明性が向上し、市場参加者が安心して取引を行える環境が整えられることが期待されています。
そもそも、カーボンクレジットの取り組みは、各国や会社が自らの排出削減目標を達成するための手段を提供するものです。市場の透明性と信頼性が向上することで、より多くの企業や政府がこの市場に参加し、世界的な排出削減の取り組みが加速することが期待されています。
このような急成長に伴う課題を克服しながら、良質のカーボンクレジットを発行できる取り組みの加速が期待されています。ご紹介するタンザニアの事例は、まさに好事例になります。
タンザニアの大規模カーボンクレジットプロジェクトの発表
このプロジェクトは、タンザニア国内の6つの国立公園にまたがる180万ヘクタールの広大な土地を対象にしており、これらの地域での自然保護とカーボンクレジットの生成を目的としています。対象となる国立公園には、ブリギ・チャト、カタヴィ平原、ウガラ川、ムコマジ、ゴンベ・ストリーム、マハレ山国立公園が含まれます。
COP28でも、このタンザニア政府による発表が大きな注目を集めました。
このプロジェクトは、国際市場で取引されるカーボンクレジットの生成を通じて、自然保護と経済的利益を両立させることを目指しており、持続可能な開発を推進するものです。特に、プロジェクトのカーボンクレジットから得られる売却益は、地域社会に再投資され、教育、医療、インフラの改善などに活用されます。
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取引額と経済的インパクト
このタンザニアのプロジェクトは、2023年5月に政府と外国投資家が締結した覚書(MoU)に基づいて進められており、おおよそ20億ドルの投資が見込まれています。このプロジェクトを通じて生成されるカーボンクレジットは、国際的なボランタリーカーボンマーケット(VCM)で市場価格より割高な価格で取引されることが予測されています。これにより、タンザニアは国際市場での収益を増大させ、持続可能な経済成長を実現することを目指しています。
さらに、2022年には、タンザニアのカタヴィ地域にある8つの村が、カーボンクレジットの販売によって約172万ドルの収益を得ることに成功しました。この収益は、村々のインフラ整備や生活水準の向上に直接的な影響を与えており、カーボンクレジット市場の経済的インパクトを具体的に示す例となっています。
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プロジェクトの支援と第三者機関の役割
タンザニアのカーボンクレジットは、国際的な第三者機関によって厳格に認証され、発行されます。これにより、プロジェクトの透明性と信頼性が保証され、国際市場での取引が可能となる仕組みです。現在、複数の認証機関がありますが、主要なものをご紹介します。
VERRA: カーボンクレジットの認証を行う世界的な機関で、「Verified Carbon Standard (VCS)」を運営しています。VERRAによる認証は、プロジェクトが環境に与える影響を客観的に評価し、国際的に信頼されるカーボンクレジットを発行するための基準となっており、事実上の最大手、もっとも利用されている認証機関です。同時に、近年のカーボンクレジットの信頼性に関する問題について、もっとも矢面に立たされているとも言えます。
Gold Standard: 環境保護と持続可能な開発を支援することに力点を置いた非営利団体で、プロジェクトが社会的・環境的に持続可能であることを保証する認証を提供しています。Gold Standardは、社会的インパクトをより考慮した高品質なカーボンクレジットを提供することを目指しています。
Climate, Community & Biodiversity Standards (CCB Standards): CCB Standardsは、森林保護プロジェクトに焦点を当てており、生物多様性の保護や地域社会への貢献を確保するための評価基準を提供します。
さらに、幾つもの認定機関が存在し、新しいものもあります。それぞれ、上記の大手、VERRAやGold Standardに対して、特徴を出そうとしています。
国際社会におけるカーボンクレジットの可能性
カーボンクレジット市場は、国際社会の健全な発展のみならず、開発途上国の温暖化対策の適応においても、今後さらに重要な役割を果たすことが予想されます。特に、開発途上国においては、このタンザニアの例のように、カーボンクレジットを発行し、この売り上げを通じて自然保護と経済発展を同時に推進する道がひらけます。このタンザニアの取り組みは、他の開発途上国にとっても良いモデルケースとなっています。
COP28で導入された新しい基準や規制によって、カーボンクレジット市場の透明性と信頼性が一層と強化され、より多くの企業や政府がこの市場に参加し、これにより、さらに多くの資金が気候変動対策に向けられ、持続可能な未来に向けた取り組みが加速することが期待されています。