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サウジアラビアの未来都市Neom

約1万年前から7千年前にかけて、サウジアラビアを含むアラビア半島の気候は、現在よりも湿潤で、サバンナや湖沼があったそうです。この時代は「緑のサウジアラビア」とも呼ばれ、当時のアラビア半島には豊かな動植物が生息していたと考えられています。古代の人々はこの地域で狩猟採集生活を営み、後には農耕や牧畜が行われるようになったそうです。アラビア半島が砂漠化し始めたのは約6千年前から4千年前の間で、気候変動による降水量の減少と、植物の減少が進行し、徐々に乾燥化が進みました。サハラ砂漠が北アフリカで拡大するのと同じ時期に、アラビア半島も乾燥化し、現在のような砂漠になったのです。この砂漠化は自然的なプロセスであり、数千年にわたって進行してきたもので、現代の気候変動のように急速なものではありません。現在、サウジアラビアは再び緑化を目指して様々な取り組みを行っています。特に「グリーン・ミドルイースト・イニシアティブ(GMEI)」や「グリーン・サウジ・イニシアティブ」といった計画が進められており、砂漠化を逆転させるために数十億本の木を植樹する植林活動や水資源管理が行われています。これらの取り組みで、古代の緑豊かなサウジアラビアを部分的にでも再現できると良いなと思います。

リヤド市では、世界最大規模の植林プロジェクト「グリーン・リヤド・プロジェクト」により、750万本の木が植えられる計画が進行中です。このプロジェクトは、リヤドの気温を平均8~15度下げ、空気の質を改善し、都市の景観を向上させることを目指しています。

Neomプロジェクト 持続可能な未来都市への道

サウジアラビアの未来都市プロジェクト「Neom」は、サウジアラビアの北西部に位置し、未来的な都市計画と革新的な技術を取り入れたプロジェクトとして注目されています。サウジアラビアのビジョン2030の一環として、再生可能エネルギーと先進技術を駆使した環境にやさしい未来志向の都市開発を目指しています。

都市計画においても、自然と共存する「ネイチャー・ポジティブ」なソリューションをセレクトしています。これは、COP28で推進された「マングローブ・ブレイクスルー」などのグローバルな自然保護活動と一致し、気候レジリエンスを高めるための重要な取り組みです。広大な緑地や公園の開発が計画されており、砂漠に植林を行うことで、地域の温度を下げ、多様な生態系にすることを目指しているそうです。

革新的な交通インフラの導入

Neomは、持続可能な交通手段として、2025年から2026年にかけてスウェーデンのCandela社からP-12電動水上タクシーを導入する計画を発表しました。これらの電動タクシーは、Neom内外の移動が迅速かつ効率的になるよう、紅海でのシャトルサービスに使用され、カーボンフットプリントの削減と持続可能な移動手段の提供を目指しています。この取り組みは、Neomの都市交通を未来的かつ環境に優しいものにするステップの一つです。

Candela P-12の特徴

Candela P-12の最大の特徴は、水中翼技術を採用している点です。水中翼は、ボートの船体を水面から持ち上げる翼のような構造で、ボートがほぼ飛行するように移動するため、水の抵抗を大幅に削減し、高速での航行が可能になります。また、水中翼が波を切ることで、従来のボートに比べて波による揺れが少なくなります。また、先進的なデジタル制御システムが搭載されていて、毎秒100回以上の頻度でボートのバランスを調整し、安定した航行を可能にします。これにより、風や波の影響を最小限に抑え、安全で快適な乗り心地を実現します。

水中翼技術と電動推進システムの組み合わせにより、P-12は非常に高いエネルギー効率を誇り、従来の船に比べて電力消費を大幅に削減できるため、航続距離が伸び、運行コストも低く抑えることができます。また、P-12の電動モーターは、静音性に優れ、排出ガスが一切発生しません。

Candela P-12は、さまざまな用途に対応できる柔軟な設計を持っています。標準モデルは最大30名の乗客を収容でき、ビジネス用途向けにはより豪華な内装にすることもできます。また、オンデマンドの水上タクシーとしての運行にも対応可能で、固定ルート以外のニーズにも応えられるそうです。

Neomプロジェクトの未来

Neomは、170キロメートルにわたるリボンシティ「ザ・ライン」や産業都市Oxagonなど、数々の壮大な計画を掲げています。これまでにもeVTOL(電動垂直離着陸機)を導入するなど、最先端の交通手段を取り入れる努力を続けてきましたが、CandelaのP-12導入もその一環です。

Neomの未来

様々な課題を抱えながらも巨額の投資が行われている背景には、Neomがサウジアラビアの経済を多様化し、石油依存から脱却するための中心的なプロジェクトという政府の強い意志が反映されています。これらのプロジェクトのリーダーシップを取っているのが、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子(MBS)。彼は、「ビジョン2030」の立案者でありサウジアラビアの経済改革および環境保護に積極的に取り組み、再生可能エネルギーの推進や環境保護プロジェクトを主導しています。現在はサウジアラビアの国土の多くが砂漠でありながら、生物多様性の保全・回復に力を入れ、国土全体をより持続可能な未来へと変える取り組みが進んでいます。Neomは、未来の都市設計におけるモデルとなれるのでしょうか。


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