実体験レポ! // 限りなく野生に近づいた”即興表現”ワークショップ
※多ジャンル即興セッションの面白さや可能性をシェアしたいと思い記事を書きました。必要とされる方に情報が届くことを願っています
2024年3月11日、『即興表現ワークショップ #297』に参加しました。
音楽だけの一般的な即興セッションとは違い、
アート作品を作るような感覚
がありました。
とても刺激的な時間を過ごすことができ、
たくさんの気づきがあった
ので、体験レポートで内容をシェアします。
会場
イベントはMagaYuraで開催されました。大阪JR野田駅や地下鉄千日前線玉川駅からすぐのアートと音楽のスペースです。
2FがCAFE/BAR、3Fがイベントスペースになっています。
JR野田駅前のたこやき屋さん向かって右にある細い階段をあがり、2F踊り場からさらに上へ
3F扉(画像右はし)から店内に入ると受付があります。
18:45会場へ到着。すでに3名ほどの参加者がいらっしゃいました。受付をすませ、機材セッティングの場所をスタッフの方に確認していると、主催者の向井千惠さんや他参加者の方が来られました。
実は15年くらい前にこのイベントに参加したことがあります。当時、地下鉄動物園前駅のそばにあった新世界フェスティバルゲート内のココルームでの開催でした。アップライトピアノを弾いた記憶があります。
即興表現について
向井千惠さんの公式サイトに"即興表現の可能性"について書かれていたので、引用させていただきます。
今回、実際に参加したことで
即興表現のおもしろさや魅力を体感
できました。そして日常の暮らしでは気がつかないたくさんの発見がありました。
機材セット
アンビエントな音を鳴らすために上記の機材をセレクトしました。microSAMPLERにはnord lead4やソフトウェア音源などからサンプリングした音色を入れています。
ミキサーからセンドでmicrocosmと接続。専用のステレオリターンに返さず、通常のステレオチャンネルに接続しました。こうすることで、キーボードの音をエフェクトするかどうか制御でき、かつmicrocosmの音を個別にEQしたり、音量調整しやすくなります。
上記写真には写っていないですが、セミモジュラーのplutoはミキサーのステレオチャンネルに接続しています。ミキサーからLRのMain Outを会場既設のDIを経由しPAにてスタッフの方がオペレーションされていました。
ちなみに、かごのような台を2つお借りして機材を置きました。
くじ引き
準備が整ったところで、参加者全員に片面が金色の正方形の厚紙がくばられ、名前を書きました。即興セッションをおこなうメンバーの組み合わせを決めるためです。
参加者とパート
自分をいれて参加者は合計8人(男性:5人 女性:3人)+見学者1名。
それぞれのパートは、
(もし間違ってたらごめんなさい)
主催者向井さんからあいさつとセッションについての説明の後、順番に参加者が自己紹介をしました。
セッションの流れ
各セッションの終わりは照明の暗転が合図
でした。
セッション開始
くじが引かれ、なんと最初の3人のグループに入ることになりました。
身体表現をされる男性2名と自分です。
初対面の方々で、どんなパフォーマンスをされるか分からないこともあり、ドキドキしながらUNA CORDAをサンプリングした柔らかなピアノ音でコードを弾いて、microcosmでアンビエントな雰囲気に音を加工していきました。
目の前で繰り広げられる身体表現のゆっくりとした動きをなんとなく意識しながら、無意識で探るように鍵盤を弾いては、エフェクトを調整したり、フレーズをループさせたりしました。
音楽のような音楽でないような、
消えてはまた響く音の連続。
時間の感覚が少しずつ薄れていっては
現実に引き戻され
を繰り返すような不思議な体験でした。
2度目は詩の朗読と身体表現をされる女性の方とDUOでのセッションでした。出番のない間に、セミモジュラーシンセplutoのパッチを組み、出音を確認しないままぶっつけ本番で鳴らしました。
即興でどんどん繰り出される言葉と呼応する体の動きに対して、plutoのパーカッシブな低音が鳴りはじめた時は、
偶然に詩の世界観とリンクしていた
ので驚きました。
8人全員での最後のセッションは、キーボードの音をループさせながらスパークシェイカーを叩いたり、ドローン的な音を変化させました。
さすがに、全員が入り乱れての表現はカオスの状態になっていたように思いますが、時々、
作品のような世界が形作られる瞬間があり、
とても興味深く、感動
しました。
窓越しにみる現実世界
自分が座っている位置から店内の窓越しに同じ高さでJR野田駅のホームが見え、セッション中、何度か電車が停車したり、通過したり、ホームにたくさんの人が降りる光景が目に入りました。
それは
セッションで展開される表現とあわさり、
とてもシュールな世界
に思いました。
即興表現のセッションは抽象的なアートの色あいが強く、非日常的であり、どちらかというと無意識に引っぱられながら進んでいくように思います。
しかし、一枚の窓を隔てた向こう側にあるのは、定刻通りに発着する電車であり、せわしなく人が行き交う駅の見慣れたホームであり、いつもと変わらない日常の光景です。
それらを考えた時、演奏をしている自分は
今どこに存在しているのだろうかと、
あやふやな感覚
になりました。それはまるで
異世界にいる自分が
映画のスクリーンごしに
現実世界を見ているような感覚
です。
人間だけが持つ野生
その場で生み出される詩の朗読は、言葉から本来の意味を抜き取られ、その響きを聞いた自分の中で別の感覚になったり、連続する身体表現の動きは自分の内側に何らかの意味をもたらそうとするも、
モヤモヤだけを残したり、
理屈や論理性を飛び越えて、
人の本能に直接届く
ような気がしました。
あくまで個人的な考えですが、
本質的に人は動物であるのなら、その野生の感覚は
常識や理屈とは対極にあり、
それを呼び覚ます方法が
無意識の領域にある自己表現、
つまり芸術をとおして
自分を表現すること
ではないか。そしてそれこそが
人が他の動物と決定的に違う
人間独自の野生
であるかもしれない。
音楽だけのセッションはたいていの場合、参加者間で曲のキーやリズムをあわせたり、展開を作ったり、論理的に考える部分が少なからずあります。
ですが、このセッションでは、調和を意識するにしても、時間やリズムなど論理的な要素を取り払い、
音楽を作ることから離れ、
音そのものや響きといった原始的なもの、
つまりできるだけピュアなものに
向かっていくこと
が、目的地のような気がしました。
先ほど述べた
人間独自の野性の感覚
は、無意識下にあり、人が制御できないものです。演奏中に顕在意識の感覚がうすれていき、無意識の野性の感覚に近づいていく中で、"これ以上先に進むと理性の領域に戻れなくなる"と感じるところで引き返して、また近づいてを繰り返していたように思います。
日常では知ることができない
顕在意識の果てと、
自分の中の野性の感覚に触れる
ことができたような気がしました。
休憩・雑談
休憩時に受付の際にもらったドリンクチケットで烏龍茶をオーダーしました。
機材がマニアックなこと、演奏する音が宇宙的な音だったこともあり、「この機材はどうやって音を出しているの?」や「不思議な音ですね〜」など他参加者から興味を持ってもらい話をしました。
久しぶりのセッションでしたので、楽しかったのと、
表現ジャンルの違う方々と
交流ができてうれしかった
です。
また、参加者にトイレの場所を聞いたら親切に教えてくれたこと(こういうささいなことがうれしい! ちなみにトイレは2F踊り場)、自然とお互いの表現を認めあう暖かい雰囲気を感じることができたことも、すごくよかったです。
おわりに
自分は人見知りな性格ですので、ひとりでイベントへの参加はとても勇気がいりました。当日、お店へメールで参加可能かどうかの問いあわせの後、丁寧な返信をいただき、安心感がうまれました。
今回、思い切って参加し、
たくさんの気づきを得たのと、
個性的な表現をされる方々と
セッションをさせていただけて
本当によかった
です。
貴重な経験は何事にも変えがたいですし、今後の創作活動にきっといい影響をするだろうなと思います。
共演させていただいた皆様とMagaYuraのスタッフの方に心から感謝します。ありがとうございました。
もし「即興表現ワークショップ」に興味がある方は、見学も可能ですので、参加されてみてはいかがでしょうか。
自然体で自分のあるがままを
表現することで、
新たな発見があるかも
しれません。
補足
シンセやエフェクターを使ったアンビエント曲の制作のコツについて、別記事で紹介する予定です。
▼Elektron Model:Cyclesを使ったTipsはこちら
追記
2024年3月30日(金)谷四TONE8.0にて開催された[SESSION 45]に参加しました。
▼様々なジャンルのパフォーマーの方々と即興セッションさせて頂きました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?