掌編小説032(お題:押入れの宇宙)
子供の頃、僕は宇宙人だった。
きっかけは、入学式のあとにクラスでやった最初の自己紹介。名前の順に一人ずつみんなの前に立たされ、名前と、好きなものやことを言っていく。たったそれだけ。たったそれだけのことが僕にはできなかった。
真冬の早朝みたいな重たい静寂。無数の目。ようやく先生が訝しげに僕に声をかけ、刹那、波紋のようにひろがっていくざわめき。めまいがする。かろうじて出たのは「あ」だか「う」だかという心もとない声。誰かが笑っている。僕だって笑いたかった。だけど涙ばかりこぼれて