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『七十二候』蚯蚓出‥みみずいずる
『蚯蚓出‥みみずいずる』
5月11日から15日頃
立夏の次候となり、夏の気配を感じる頃となりました。
啓蟄の頃、生き物たちは冬眠から目覚め徐々に外に出てきますがミミズはお寝坊さんなのか少し遅れて、今この時から動き始めるようです。
毎朝お布団から出れず、目覚まし時計のスヌーズ機能を何度も何度も繰り返したのち、ようやく起きることのできるわたしを虫に例えるとしたならばミミズなのかもしれません。
しかしながら、虫が得意ではないのでミミズを見かけても逃げ出してしまうのですが‥。
ミミズには、土壌改良に好影響をもたらすという研究結果もあり、畑の状態を判断する材料となる役割もあるようです。
ミミズが少なすぎるのはいい畑とはいえませんが、逆に多すぎるとそれだけ未分解の有機物が多く、それを好むカビの菌などが発生しやすいため野菜にはあまり良い環境とはいえません。
そんなこともミミズを通し分かることのひとつです。
小さな小さなミミズも古くから自然の鍬(くわ)と呼ばれ、わたしたちの生活になくてはならない役割を担い生きている。
小さな身体にそんな力が備わっているのだと思うと、今度見かけた時はそっと見守り応援してあげたくなりますね。
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七十二候は「東風解凍」から始まり
「蚯蚓出」は第二十候目に当たるわけですが
七十二候を知ることで花や鳥、生き物などに対しこれまで以上に思いが芽生え、懸命に生きている姿に心が動かされる思いがします。
同じような毎日も七十二候と共に過ごすことで、季節の移ろいに敏感にもなれるのでわたしにとって、とても意味のある時間となっているのです。
毎日の空の色や風の香りなど、意識して過ごしているとそうした小さな小さな変化に気づける自分にも嬉しくなります。
そうすることで、日々の暮らしにも彩りが生まれ、かけがえのないこの一日一日を丁寧に過ごしたいと思うのです。
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同じように、「季語」に触れることも季節を感じる上で心をより豊かにしてくれるものだとわたしは思います。
ご存知のように季語とは俳句を書く上で必要な言葉。時候の挨拶などにも使いますよね。
でも、それだけではなく俳句に馴染みがない方にも是非知って触れて欲しい美しい言葉がたくさんあります。
先日、北海道釧路市でエゾヤマザクラが開花したと発表されました。
全国の桜観測地点で最も遅い開花となるようです。沖縄の那覇市で1月11日にヒカンザクラが
開花し約4ヶ月かけ、最後の観測地点に到達したわけです。
このように5月に見られる遅咲きの桜を表す季語に「余花」という言葉があります。
夏になり若葉の中にそっと咲く桜の姿を
西に住むわたしは目にしたことがないのですが、きっと春に逢える桜とはまたひと味違うのでしょう。
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「余花」といえば
「余花の雨」という季語もあり
山の高いところで夏になっても咲いている桜に降る雨という意味があるのですが
緑の中に咲く桜の花を濡らし、優しく注ぐ雨の様子が浮かんでくるようで詩情を刺激されます。
季語は短い中に意味が込められ凝縮された情緒豊かな言葉です。
5・7・5で形成された俳句という17文字の世界に、長い年月をかけ磨かかれた季語を使うことにより喜怒哀楽といった感情や様々な想いを
伝えることができるのです。
季語が成立したのは平安時代の後半と言われています。そこから増え続け歳時記には
5000以上の季語が収められているそうです。
そして現在も見直され追加され
新たな季語が加えられたり‥と
俳句を書かずとも知っているだけで心が動く
そんな言葉たちが多くあるのです。
わたしの好きな季語を七十二候の記事を通し、折に触れ、今後も紹介していきたいと思います。
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GWも終わり静かな毎日が過ぎていきます。
わたしの住む鳥取にも連日多くの方が訪れ
鳥取砂丘や水木しげるロードなど賑わっていたようです。
県外からの車も多く少々心配になったりもしましたが、これからはイベントなど中止したり外出を制限するのではなく、徹底した対策をし感染を抑制しながら社会を回していく‥そんな生活へとシフトチェンジされていくのでしょう。
今ここにあるものは変えられない。
それならば次はどうするか。
そんな転換地点へと動き出しているのだと
感じます。
わたし自身も少しずつ外へ、少しずつ遠くへと変わっていく時なのかもしれません。
時の流れから得るもの。経験から得るもの。
上手く共存し、この今を楽しく過ごしたいですね。
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七十二候の記事に使用している写真はすべて
photoACからのものとなります。