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#エッセイ
はなびらのかたちの耳はその猫のそばのやさしい誰かのしるし
最初に耳の先が欠けている猫を見たのは、いつ頃だっただろうか。
どこかの公園で見かけた黒猫だったような記憶がある。その頃はまだ何も知らなくて「猫同士のケンカで耳が切れてしまったのだろうか?」なんて思っていた。「それにしてはきれいに欠けているな」とは思わなかったし、その公園にいる他の猫も同じように耳の先が欠けていることにも気づいていなかった。
「不幸な猫が増えないように、のら猫に去勢避妊手術を施し
猫といて増えていくもの
猫と暮らすと、あきらめることも多い。
ソファーも、花瓶も、家の匂いも、綿ぼこりも、腕の引っかき傷も、壁紙も、長い旅行も、だいたいあきらめることになる。
「あきらめる」というとネガティブな感じだけど、全然そんなことはない。むしろ、おおらかになる感じ。
だから、苦笑いしながらいっぱいあきらめてほしい。
あきらめるって案外すてきなことなのだ。
猫といて増えていくのは笑い声、キズ、綿ぼこり、あと
死のないところに立たない煙
※2010年の年末に書いた文章です。
よく皿が割れた年だった。
年の前半からバタバタと忙しかった。
家を離れて、単身で大阪や広島に長期出張していた時期も多かった。
8月のお盆辺りだっただろうか。
妻に「今年は仕事しかしてない年だな……。年末に今年の10大ニュースを振り返ったら、『僕おも※』の公開収録が間違いなく1位だよ」と話すと、妻は「いいじゃん、公開収録は大ニュースだよ!」と笑いながら答え
比喩でなく捨てられていた猫のこと
見てみないふりをしてたら死んでいた猫じゃなければ見なかったかな
2001年3月16日。
その夜は、パソコンに向かって書き物をしていた。
(よし、今日はこれでおしまい)
ディスプレイから目を離し、周りの情報を取り入れ始めたとき、外から断続的な音が聞こえた。
「びぃ、びぃ、びぃ、びぃ」
「び」とも「み」とも「に」ともつかない音は、かすかだけれども、こびりつくようだった。
気になって、窓を開け、