Ryé

旅や語学のあれこれに関するエッセイを連載。たまに創作。(2024年10月 note絶筆)

Ryé

旅や語学のあれこれに関するエッセイを連載。たまに創作。(2024年10月 note絶筆)

マガジン

  • <ロダンの庭で>

    心に浮かんだあれこれを綴ったエッセイ集。 不定期投稿。

  • 原書のすゝめ

    語学は楽しい♪ +読書は楽しい♪ =原書は楽しい♪♪ をコンセプトに記事を書いてみました。Let’s enjoy reading in the original language, shall we? 投稿は不定期♪

  • 創作の小沼

    うっかり作ってしまった創作物たちを放り込んだ小さな沼。創作のインスピレーションは果たして沼からも生まれるのでしょうか?

  • 語学の散歩道

    語学と触れ合うことで出会った人、気づいたことや感じたことを綴ったエッセイ集。日々の生活にちょっとしたと彩りを与えられたら、という願いを込めてしたためました。毎月20日投稿予定。

  • Le jardin de l’écriture

    木曜日の夜のせいなのか、テーマのせいなのか、私たちの「文学で学ぶ表現力」のクラスは常に絶滅危惧種に指定されている。毎回さまざまな仏語圏の作家の作品を読みながら、課題の作文を通して表現力を身につける授業のまとめ。課題の仏文学の抜粋と作文を掲載しただけのシンプルな内容です。毎月20日掲載。(クラスが存続している限り掲載予定!) 全10話。 Bienvenue au monde de la littérature française!

最近の記事

  • 固定された記事

旅のはじめに

 人生は、ときに旅になぞらえられる。しかし、果たしてそうだろうか。私は、日常生活の中に旅を見出すことはない。むしろ、旅は平凡な日常から抜け出す手段だと思っている。むろん、中には毎日エキサイティングな生活を送っている人もいるだろうが。  旅は、さまざまなものを与えてくれる。トラブルでさえ良い経験になる。以前の自分よりもっと成長することができる。だから私は、ときどき旅に出たくなる。こんなわけで、旅の感慨を残すためにこれまでのエピソードをここに綴ろうと思う。普通なら時系列的に並べ

    • 書きたいことはまだまだあるけれど、 描きたいものもまだまだあるけれど、 昇った陽が沈むように、 いつかは消えてゆくのだと…… Thank you for everyone who has read a lot of my works… Say goodbye to you……✨

      • <ロダンの庭で> 自分の物は自分で守れ

        On protège ce qui est à soi. その映画を、私はたまたま知った。  『九人の翻訳家』 世界的ベストセラー、ミステリー三部作『デダリュス』の完結編が各国で同時発売されることになり、原稿の流出を恐れた出版社が九人の翻訳家をフランスのある館の地下に隔離して翻訳をさせる。 ダン・ブラウンの小説『インフェルノ』出版時の実話を下敷きにした映画だそうである。 翻訳家たちは事前に機密保持の契約に署名させられ、入館時に厳しい所持品チェックまで受ける。携帯を含

        • <ロダンの庭で> 文体の研究

           遠くで夏空が重い雲を従えている。  間近に迫った夕立の湿気が肌に纏わりついて気持ちが悪い。これだから夏は嫌いだ。  春樹は恨めしそうに水平線を睨みつける。春生まれだから、春樹と名付けられた。  春は、いい。  爽やかな風が頬を撫で、柔らかい緑が生命の気配の消えた冬の山に息吹を吹き込み、色とりどりの花々が庭中をマティスのキャンバスのように彩る。  まさにヴィーナスの誕生だ。そう思いながら春樹はキャンバスに向かった。いつのまにかヴィーナスがあの子の顔になっている。  まだ吹っ切

        • 固定された記事

        旅のはじめに

        • 書きたいことはまだまだあるけれど、 描きたいものもまだまだあるけれど、 昇った陽が沈むように、 いつかは消えてゆくのだと…… Thank you for everyone who has read a lot of my works… Say goodbye to you……✨

        • <ロダンの庭で> 自分の物は自分で守れ

        • <ロダンの庭で> 文体の研究

        マガジン

        • <ロダンの庭で>
          10本
        • 原書のすゝめ
          32本
        • 創作の小沼
          20本
        • 語学の散歩道
          28本
        • Le jardin de l’écriture
          21本
        • The Traveler’s Time vol.3
          24本
          ¥300

        記事

          原書のすゝめ:#28 Going Solo

          私の読書のジャンルは、狭い。 これについてはすでに自分で確認済みである。 とはいえ、読書というのは基本的に自分の嗜好に基づいて発動されるものであるから、これは致し方ない。 そこで、重宝するのが友人たちである。なぜなら、自分が知らない本の存在を教えてくれるからだ。自分では到底見つけられなかったであろう本を目の前に差し出されると、思わず心が躍る。 そして、この本もそんな一冊だった。 Roald Dahl の『Going Solo』 (邦題:『単独飛行』)。 ロアルド・ダ

          原書のすゝめ:#28 Going Solo

          【小説】西海道中膝栗毛<其ノ五> 最終回

          十八 「小次郎さん、どげんしたとですか!」  小次郎のただならぬ様子に万次郎が驚く。 「正宗どのはおられるか?」  小次郎は、万次郎の案内で奥の間へ飛ぶように駆け込んだ。正宗は相変わらず、ぼんやりと仏壇の前に座っている。その姿を見て、小次郎は正宗にチヨの手紙を見せたものか束の間ためらった。  しかし、心配そうに覗き込む万次郎に気づくと、おもむろに懐からチヨの手紙を取り出した。  万次郎が手紙を受け取り、正宗に渡す。正宗は背を向けたまま仏壇の前から動かない。 「おチヨさんか

          【小説】西海道中膝栗毛<其ノ五> 最終回

          【小説】西海道中膝栗毛<其ノ四>

          十四  将軍の前に男が一人、後ろ手に縄をかけられて座っている。昨夜、長嵜から到着した廻船で運ばれてきた杉浦党の頭領である。 「お前の名は何と申す?」  男は黙したままである。  「まあよかろう」  将軍はそう言うと、手前の盆から訴状を取り上げ、男の前へ差し出した。両手を縛られた男の代わりに脇に控えていた誠之助が訴状を開く。  「それで足らねば、他にもあるぞ」  将軍はそう言うと、別の盆を持って来させた。 「見るか?」  と聞いたが、男は訴状を睨みつけたまま口を一文字に結んで

          【小説】西海道中膝栗毛<其ノ四>

          【小説】 西海道中膝栗毛<其ノ三>

          八  平次が机の脇に立っている。  報告を聞いた頭領の眼に鋭い光が過った。 「つまり、和寇襲撃の裏には蓋島横了がいるというのか?」 「どうやらそのようで……」  平次の偵察によると、出鱈目謂三を乗せた船はあれから五嶋列島へ潜航した。和寇がここを根城に活動しているという情報は既に握っていたが、問題はここからである。  この海域には支那からやってくる唐船の航路があり、五嶋は長嵜奉行の遠見番が発見するよりずっと早く船影を捉えることができる位置にある。従って、唐船を襲撃するのは本来

          【小説】 西海道中膝栗毛<其ノ三>

          【小説】 西海道中膝栗毛<其ノニ>

          三  蟬の声が、朝からにぎやかである。  障子越しに差し込む光で眼を覚ましたこぞうは、昨日の外国船のことを思い出し、自分は長嵜にいるのだということをようやく思い出した。  昨夜はさすがに疲れていたため、玄沢が軽い酒宴を開こうというのも断って寝床についた。どうやら朝まで熟睡したらしい。  どこからともなく朝餉の香りがする。こぞうは布団をたたんで部屋の隅に片付けると、襖を開けて土間へ出た。奥の厨房では栄之進の妻が朝餉の支度をしている。 「やあ、これは美味そうな朝餉ですな」  

          【小説】 西海道中膝栗毛<其ノニ>

          【小説】 西海道中膝栗毛<其ノ一>

          一 城に若くて賢い将軍がおりました。 そして、村には若くて花好きのこぞうが…… ……おりませんでした。 *  重たい夏の空が水平線に青く溶け落ちている。 その青く滲んだ境界線からせり上がってくる帆柱が一本、二本、そして三本と現れ、やがて大きな帆を風に膨らませた黒い船が青海に浮かんだ。  外国船である。  帆影を認めた遠見番から報せを受けると、すぐさま検使船が出航し、湾に蓋をするように海中から突き出た蒲鉾島で、来航船を停止させる。  その様子を大波戸から眺めていたこぞ

          【小説】 西海道中膝栗毛<其ノ一>

          原書のすゝめ:#27 Syv M2 Med Lås

          そういえば…… かなり前につぶやいて以来、ずっと手付かずになっていたものがある。 そう、デンマークのミステリ、特捜部Qの最新刊である。 記事の日付を見ると、昨年の12月。 ずいぶん長いことほったらかしていた。 ということで、今回の作品は、 『SYV M2 MED LÅS』(邦訳は未刊)。 * 先に『鍵付きの7㎡』という直訳から『収監』とでも訳すべきか?と書いたが、実はこのあと英語版のタイトルが『Locked In』(2024年12月発売予定)と発表された。ということ

          原書のすゝめ:#27 Syv M2 Med Lås

          <ロダンの庭で> 言葉の滴

          十歳になった頃、文章を書くことに挫折した。 それから二十年以上、私の挫折は続いた。 ところが、フランス語を学びだした頃から、私は少しずつ自分の文章を、自分の欠片を取り戻し始めた、という話は、以前記事に書いた。(語学の散歩道#8 記憶の欠片、自分の欠片) 最近、少し書くのに疲れたので、小休止を入れながら書き続けようと思っていのだが、実は自分が感じている以上にエネルギーが消耗していたのに気づいた。 私は筆が、遅い。 それは、自分の内側にあるものを、少しずつ絞り出し、少しずつ

          <ロダンの庭で> 言葉の滴

          原書のすゝめ:#26 L’homme aux cercles bleus

          珍味というのは好みが分かれる。 それと同じで、独特の読み味にも好みが分かれる、と思う。 フレッド・ヴァルガスの作品を読んだことがある人は、ミステリファンでもそれほど多くはないだろう。フランス人でも好き嫌いが分かれるようだが、TVシリーズにもなっているぐらいだから、それなりに人気を博しているようである。 日本では、ヴァルガスの作品は在庫がなくなると書店の棚から消え、再版されることなく、やがて中古品以外は入手不可となる。 彼女の作品は、なかんずく三聖人シリーズとアダムスベ

          原書のすゝめ:#26 L’homme aux cercles bleus

          語学の散歩道#22 本物はどいつだ?

          映画において「ホンモノ」かどうかを問うのは難しい。そもそも映画は「ニセモノ」だからだ。 初夏の太陽が街路樹からこぼれ落ちるさわやかな朝、『ブラック・スワン』を見た。怖いものが苦手な私はレイトショーでなくて本当に良かったと映画館を出てからホッとした。 それにしても、ナタリー・ポートマンの鬼気迫る演技と踊りは素晴らしかった。そこで、後日知人にこの話をしたところ、バレエ経験のある彼女の友人に言わせればナタリー・ポートマンの踊りはイケてない、あんなのは全然バレエじゃないと酷評して

          語学の散歩道#22 本物はどいつだ?

          <ロダンの庭で> 虚飾のカサノバ

          卵が先か、鶏が先か。 人がイメージを作るのか、イメージが人を作るのか。セルフイメージ* というのはどこからくるのだろう。 自分から見た自分と他人から見た自分のイメージが違うとき、なりたい自分と今の自分が違うとき、その狭間で苦しんだことはないだろうか。 あるいは、良くも悪くも周囲から、 「そんな人だとは思わなかった」 と言われたとき、本当はどんなふうに思われたいと思っていたのか、と自問しない人はいるのだろうか。 私は有名人にはほとんど興味がない。 とはいえ、好きな芸能人

          <ロダンの庭で> 虚飾のカサノバ

          Le jardin de l’écriture :#<付録> 海を越えて

            ここ数年、さまざまな事情により、海外へ出かけるのは大変である。 そこで今回は、シリーズ完結編の付録版として、旅をテーマにした作品を取り上げ、旅へのノスタルジーに浸りたいと思う。 Ella Maillard エラ・マイヤールは女性冒険家である。1903年にジュネーブに生まれ、1997年にスイスのシャンドランで死去した。若い頃からスポーツが好きで、19歳でホッケークラブを創設し、オリンピック代表選手になるほど運動神経が優れていた。20代で新生ソビエト連邦のモスクワを訪問した

          Le jardin de l’écriture :#<付録> 海を越えて