【書評】2022年に東大・京大で一番読まれた本『暇と退屈の倫理学』を読む
ロッシーです。
『暇と退屈の倫理学』(國分功一郎 著)を読みました。
いや~面白かったです!
本書では、暇と退屈について、原理論、系譜学、経済史、疎外論、哲学、人間学、倫理学と幅広いテーマから思索をしています。
これだけのテーマがてんこ盛りで非常に「贅沢な」内容です。ぜひ一読をおすすめします!
これからの時代、暇と退屈は誰にとってもより一層重要なテーマになるでしょう。
なぜなら、労働に割く時間が今後減っていくことはあっても増えることはないからです。そういう時代の流れなのです。
とくに事務系の仕事はデジタル技術の活用により、さらに効率化がすすむでしょうから、それらに割く時間は減少していきます。また、「ブルシット・ジョブ」という言葉があるように、そもそも消滅しても問題ない仕事も多いわけです。
ただ、労働に割く時間が減少したとしても、その空いた時間を別の(どうでもよい)仕事で埋めようとするのが人間の性質です。パーキンソンの法則というやつですね。つまり、どうも私たちは一日8時間という「枠」に縛られてしまっているようです。
ただ、この一日8時間労働にしても、100年以上前にILOで決められたものなのです(古っ)。
当時と今とでは、テクノロジーによる業務効率レベルが全く異なるのにもかかわらず、私たちはなぜか思考停止状態で8時間(人によってはそれ以上)働いているわけです。だから、本来はこの8時間という「枠」自体のありかた問うことが必要ではないでしょうか。
世代交代とともに、そのような問いは増えていくでしょう。
「9時5時の仕事はおかしい!」
という声がZ世代から出ているのはまさにその好例ではないでしょうか。
一日8時間労働も、週休2日制も、職場への通勤も、労働時間の減少という流れに従って今後変わっていくでしょう。
さて、労働時間が減少した社会において必要になってくるのは何でしょうか?
それは、「暇と退屈に関する自分なりの哲学を持つこと」だと思います。
本書を読むことで、自分なりの哲学を構築するための材料を集めることができると思います。
まずはそこから始めないと、いざそのような社会が到来したときに、
「はい、暇で退屈な人には、こんなサービスやレジャーがおすすめですよ。」
という風に、画一的に商業化された消費をするだけの人間になりかねません(もちろんそれを否定するわけではありませんが)。
なお、本書は「2022年に、東大・京大で一番読まれた本」ということです。(2021年以前はどうだったのか、他大学ではどうだったのか、気になるところですが)
それが売り文句なのかどうかはともかく、若い世代ほど時代の変化の気配を敏感に察知するものです。
だから本書のようなテーマの本が読まれているのではないでしょうか。今の中高年にとっては、長時間働くことが当たり前だったわけですから、彼らに時代を変えることは期待できません。やはり社会を変えるのは世代交代なのでしょう。
ちなみに、本の帯にお笑い芸人の若林正恭さんの言葉がありました。
個人的には、本書は感動して涙を流すような内容ではないと思いますが、彼の中で本書の何かが琴線に触れたのでしょう。そのあたりを若林さんに解説してもらえたら面白い企画になりそうな気がします(それも嘘で、単なるマーケティング戦略なのだとしたら、よくできた戦略だと思いますが)。
さて、本書を読了しましたが、まだきちんと消化しきれていないのが正直なところです。
ただ、これまで自分がnoteに書いてきた記事を見返すと、暇と退屈、働き方などに関して色々と書いてきたことが良くわかります。
それらと本書の内容を踏まえて、今後自分なりの哲学を構築したいなと思っていますが、まずは「暇と退屈について考え続けること」が大事なのだと思います。
少なくとも、そうしているときには暇と退屈からは逃れられそうですし(笑)。
皆さんも是非本書を読んでみて下さい。暇と退屈とは無縁の楽しい読書体験ができること間違いなしです。
あと、ことあるごとに周囲の人にこう言いましょう。
「もう一日8時間労働ってオワコンだよね。」
そういう草の根活動が、きっと社会を変えていくはずです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
Thank you for reading!