ウミ

日常で思うこと。たまに旅の記録。鑑賞の記録(あくまで自分なり解釈)。

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最近の記事

「怒り」

「怒り」という映画を観た。 怒りと聞くとマイナスイメージが先行するが、怒りは時に自己表現であり、アイデンティティを守るものでもある。 中学生の頃、下校時はいつも友達と5人で帰っていた。ある日の下校時間、その中の2人が、私を含めた3人を待たせたまま少し離れた場所で何か話していた。 話の内容も分からないまま、あまりにその時間が長かったので「待ってるんだけど?」と怒った。すると、次の日からそのグループ全員と、他のクラスメイト数名が私を避け出したのだ。 私はその時、自分の主張を

    • 「関心領域」

      どんなに特殊な状況であっても、それが生まれながらの環境であったり、長期的に続くと、背景と化していく。人生の主軸となるのはあくまで自分が関心を持ったことだけ。関わらなくていいことはシャットアウトすればいい。 特殊なのはアウシュビッツ収容所の隣に住んでいるという環境だけで、登場人物が特別酷いことをしているようには思えなかった。なぜなら、現代でも似たようなことは日常的に起こっている。ただ、収容所の隣というだけで、「無関心」と「関心」の境目が残酷に炙り出されているだけ。 隣なのに無

      • 救世主

        6月23日、ランジャタイとマツモトクラブのツーマンライブを観てきた。 私にとってお笑いのライブは初めてだった。 2年前、8年付き合ってた人に裏切られ、負の感情に満ち満ちていた時、私を救ってくれたのがランジャタイだった。 二人の漫才はなんとなく町田康さんを思い出す。 不条理が漂っている。 やっぱり私はパンク精神のある人が好きだと実感。あと、2人の声の質や差も聞いていて心地良い。 ライブは、前半が2人の本からのエピソードを舞台化したもので、後半は「木綿のハンカチーフ」を題

        • 家族旅行〜島根・鳥取編〜

          家族旅行。随分と久しぶりに行った。 島根・鳥取の2泊3日。場所は私のリクエストだった。 父がみんなの行きたいところをまとめて行程表を作ってくれた。2年前に定年退職した父。今まで仕事で忙しかったということもあるだろうが、ここまできっちり行程を考えてくれるのは初めてだった。余程楽しみにしてくれていたのだろう。 大阪の千里丘駅で待ち合わせし、車で向かう。まずは島根の足立美術館へ。窓の向こうに雪を被った大山を臨みながら、約4時間半かけて走った。 天気は快晴。山並みが美しい。 一

          最近

          ここ2年。ある人、ある場面を思い出すと、声が震え、涙が溢れ、お腹の調子が悪くなるなど、これまでなかった体の異変が起こる。 最初は忘れられないぐらい好きだったのかと思った。けど、どうやら違う。 新しく出会いがあって、誰かを好きになりかけても、少し無言が続くと怒っていないか気にしている自分がいる。友達に話すと、なぜ「無言=怒ってる」の解釈になるのか不思議がった。 --- 2年前まで8年間付き合った人がいた。 彼は、怒鳴ったり暴言を吐く人だった。 遠距離恋愛だったため、常

          田中泯「Sの舟が空を逝く」

          2024.2.3、田中泯さんのソロ公演に行ってきた。 泯さんの公演はこれで2度目。 以前は、戦争をテーマとした詩の朗読と、踊りを組み合わせた作品だった。 今回は昨年亡くなった坂本龍一さんの最後のアルバム「12」から影響された作品のよう。 --- 冒頭から影と向き合う泯さん。 作品中ところどころに登場する影の人。 最初、影は泯さんに寄り添うようにいた。 共に船の中で踊り、彼らは一緒に時を過ごしていた。 けれど、彼は自由に境目を潜り抜けていく。 まるで音のよう。 空

          田中泯「Sの舟が空を逝く」

          詩のような写真

          先週、東京で東海林広太さんという方の展示を見た。 何年か前、表参道にあったPASS THE BATONで写真を見てから、いつか個展に行きたいと思っていた。 東京での展示が多いのでなかなかタイミングが合わなかったのだが、今回東京行きのタイミングと被ったので、これは絶対行こう!と。 行く前仕事でバタバタしてたということもあり、展示のテーマ等の前知識は全く無しだった。 けど、敢えてそのまま向き合うことにした。 平日の午前中ということもあり、中は貸切状態だった。 所々に細か

          詩のような写真

          23.12.21木曜日の花

          14年。 22才だった人間が36才になるまで。 笑って泣いて、見ないふりして、踏み出して、悟ったり、怒りに震えたり、信用したり、裏切られたり、本当の優しさを知ったり、好きになったり、嫌いになったり、新しい自分を知ったり、見送ったり、迎えたり。 色んなことを経験したが、家に帰るといつも癒してくれた。フワフワで愛嬌のある子。 --- 愛護センターから子犬を迎えようと、HPの写真を見ていた。 写真から滲み出ていた。どこか抜けてる感じが。 子犬を引き取る時、飼い主は講習を受

          23.12.21木曜日の花

          菓子の蔵しんたに様へ

          人生の中で、忘れられない味があるとすれば、私は迷わずに「菓子の蔵しんたに」さんのモンブランを挙げる。 --- 私は学生時代、引きこもり生活を送っていたことがある。 その頃の私の楽しみは唯一食べることだけだったが、ろくに買い物に出かけることもできなかったので、いつも仕事帰りの母に自分が食べたい物を伝え、買ってきてもらっていた。 菓子の蔵しんたにさんは母の職場の近くにあり、ケーキが食べたいと言った私に、母が周辺のケーキ屋を探して買ってきてくれたのが最初だったと思う。 プ

          菓子の蔵しんたに様へ

          いつの間にか繋がる場所

          「近くに美味しい店ないですか?」 3年ぐらい前、信号待ちしてる後ろからいきなり声をかけて来た20代前半ぐらいの女性。 その頃、引越して来たばかりだった私は、最近越して来たばかりなのでこの辺にあまり詳しくないことを答えた。 すると彼女が、 「私も最近来たんです。」と。 「どこから来られたんですか?」 「広島です。」 それから20分ほど2人で歩きながら話をした。 お互いが働いてる職場のこと、 京都に引越してきた理由、 どの辺に住んでいるか、、 最後に彼女が「今度ご飯

          いつの間にか繋がる場所

          五感で旅する〜尾道編〜

          去年の冬、広島へ旅行したのだが、その時に半日だけ尾道に寄った。 軽く歩いただけで、街の味わい深さを感じ 「また来よう。そしてその時はちゃんと回ろう」 と思い続け、今回その時が来た。 LOG 昨年はインドの建築家集団「スタジオ・ムンバイ」によってリノベーションされたらしい建物を見るのが目当てだった。 エントランス、イベントスペースだけ見て帰ったのだが、今回はカフェへ。 平日の午前中ということもあってか、空いていたのでスピーカーに一番近いテーブルへ。 流れていたのはhar

          五感で旅する〜尾道編〜

          おばあちゃんの野菜

          おばあちゃんは野菜作りが上手だった。 農家だったおばあちゃんは、農業を引退してからも趣味として野菜を育てていた。 四季折々、旬な野菜を10畳ほどの畑でせっせと作っていた。 そんなわけで、スーパーの野菜を買わずとも家には野菜がたくさんあった。 子供の頃からそれがデフォルトだった私は、当たり前にその時一番旬な野菜を、浴びるように食べることができる家庭だった。 大人になってから、、 野菜は自分で買うものになった。 京都の街中で、できるだけ新鮮な野菜がある八百屋を探す。

          おばあちゃんの野菜

          小学生の頃、秋特有の澄んだ空気を肌に感じて半袖から長袖に衣替えする日はわくわくした。 学校の誰よりも先取りして長袖を着ていきたかった。 通学途中のキンモクセイ、稲刈り後の田んぼのにおい、、、 そんな「秋」がなくなるとか、最近ニュースで言われている。 そうなると、あの頃のわくわくした思い出を、毎年思い出せなくなるのだろうか。 春、夏、冬は私にはキラキラし過ぎている。 秋の地味さがいい。 キンモクセイ、ひんやりした空気 稲の切り株、彼岸花 栗、秋刀魚、梨、新米、焼き芋