田中泯「Sの舟が空を逝く」
2024.2.3、田中泯さんのソロ公演に行ってきた。
泯さんの公演はこれで2度目。
以前は、戦争をテーマとした詩の朗読と、踊りを組み合わせた作品だった。
今回は昨年亡くなった坂本龍一さんの最後のアルバム「12」から影響された作品のよう。
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冒頭から影と向き合う泯さん。
作品中ところどころに登場する影の人。
最初、影は泯さんに寄り添うようにいた。
共に船の中で踊り、彼らは一緒に時を過ごしていた。
けれど、彼は自由に境目を潜り抜けていく。
まるで音のよう。
空を渡る船。泯さんは船に手を伸ばすも届かない。でも影は船と一体化していて、影の人は向こうに行ってしまう。それを追いかけて崖を登って行く泯さん。
崖の終わりに近づいた頃、指先に残っていた粒子の感覚。影の人が唯一残した物質。
けれど、ただの物質は何も意思を持たず、風に行動を奪われて舞っていく。
目で追う泯さん。
崖の端から追いかけて空に飛びあがろうとした瞬間、ハッという泯さんの息遣いと共に暗転。
次の瞬間、彼はそこに立ちすくんでいた。
影の人が乗った船と、とどまった泯さん。
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指先、足のつま先、膝、肘、腰、首、背中の角度。
どのシーンを切り取っても真っ直ぐではない。
その人間味が美しい。
泯さんの踊りは正直だと思う。だから心に直接入ってくる。
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